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タイトル*め


『召使』 The Servant (1963)

監督:Joseph Losey
脚本:Harold Pinter
原作:Robin Maugham(小説)
コピー:「召使いによって破滅させられるイギリス貴族!」

■Story

長い外国暮らしから戻った貴族の青年トニーはロンドンに屋敷を買い、バレットという男を召使いに雇う。彼は料理から室内装飾まで何をやらせても完璧な召使いで、トニーは信頼して家や身の回りの一切を任せるが、トニーの婚約者のスーザンは彼を本能的に嫌っていた。

やがてバレットは"妹"ヴェラを田舎(ボルトン)から呼び寄せ、メイドとして同居させる。魅力的な彼女にトニーは溺れていくが、実はそれもバレットの計略のひとつ。麻薬を教え堕落させ、ついには主人と召使いの立場さえも逆転するように。

ホモセクシュアルやイギリス貴族の悲劇的な末路などを描いてセンセーションを巻き起こした衝撃的な作品。

■Check!

□完璧な召使

トニーの元に来るまで13年間の召使いの経験があるので、すべての方面において完璧な働きぶりをする。スフレを作るのが得意で、クラレット(赤ワイン)の銘柄選びも完璧。

寒いところを帰ってきた主人のためにさっと足湯を用意する。(陶器のボールに塩入りのお湯を入れてある)

トニーが買った中古の家にはまだ壁紙も貼られていず、家具もないガランとした状態だったが、バレットがひとつひとつ自分の審美眼でカラースキームを決定し、壁紙やしつらえを調えていった。トニーの屋敷のあちこちにかけられている鏡が印象的。トニーの書斎は、本棚のように見える隠し扉もある。

□食事の風景

バレットは大きな銀のお盆に美しく磨かれた銀食器を載せて、トニーのベッドまで運ぶ。

□スーザン・スチュワート嬢

トニーの婚約者のスーザンが住んでいるのはBerkley Square周辺らしい。ハイドパークとグリーン・パークに挟まれたメイフェアの一等地。

□ビールの種類

トニーは普段はラガーを飲んでいるので買い置きがあるが、ある日バレットを外へ出す口実にブラウン・エール(字幕では"黒ビール")が飲みたいと言い出す。(エールの方が炭酸が少なくアルコール度も高い。色は茶色)バレットは素敵な籐の籠(ボトルが6本入るように仕切がついている)で酒屋に出かける。

□キャストとスタッフについて

ジョセフ・ロージー(監督)×ハロルド・ピンター(脚本)×ダーク・ボガード(主演)の組合わせは、『できごと』(Accident, 1967年)へとつながってゆく。貴族の青年トニーを演じたのは、後に『パフォーマンス』でミック・ジャガーに魅入られていく青年も演じている。

■ロケ地

ロンドン: Royal Avenue(off King's Road, Chelsea

 

■Awards

1964年ニューヨーク映画批評家協会賞・脚本賞(ハロルド・ピンター)

(その他)1999年度英国映画協会によるベスト100作品:22位にランクイン

■キャスト

Dirk Bogarde .... Hugo Barrett (Tonyの召使)
James Fox .... Tony (Barrettの主人)
Sarah Miles .... Vera (Barrettの妹・・・?)
Wendy Craig .... Susan Stewert(Tonyの婚約者)

■参考資料とソフト

国内版DVD(PIBF-1231)

『追放された魂の物語―映画監督ジョセフ・ロージー』
ミシェル シマン (著)日本テレビ放送網(1996/05/01)

(1963年 イギリス 110分 B&W)

 


『名探偵ホームズ/黒馬車の影』Murder by Decree (1979)

監督:Bob Clark
脚本:John Hopkins

■Story

1888年秋、名探偵シャーロック・ホームズとワトソン博士は、またしても切り裂きジャックによる連続殺人事件のニュースを耳にする。 自警団を結成した商人たちからの要請もあって、本格的な捜査に乗り出すが、警視総監のウォーレンからの妨害もあって、一筋縄ではいかない。 ホームズたちは匿名の情報屋からの伝言で霊媒師ロバート・リーを訪ね、殺された娼婦たちの共通の友人メアリー・ケリーを探し出し、フリーメイソンや権力の中枢部にいる人々が事件の鍵を握っていることを知るが・・・

■Check!

□切り裂きジャック事件

1888年8月31日から11月5日にかけて、ロンドン・イーストエンドで起きた娼婦連続殺人事件。
事件の概要と五人の被害者について詳しくは別項参照。>>切り裂きジャックについて

□シャーロック・ホームズ

ストラディバリ(バイオリン)を奏で、化学の実験に熱中し、鳥打帽とコートをまとった典型的なホームズ像。

□オペラハウスの夜

ホームズとワトソンは、コベント・ガーデンにあるロイヤル・オペラ・ハウスに出かける。良い席には立派な身なりの紳士・淑女が座っていて、安い天井桟敷には庶民たちが集まっている。 階級社会の縮図のようで面白い。その夜は皇太子一家も臨席する予定になっていたが、到着が大幅に遅れたのでブーイング。 皇太子(ヴィクトリア女王の息子・のちのエドワード)とアレグザンドラ皇太子妃。プリンス・エディは彼らの長男であり、未来のイギリス国王となるべき人物。

□Sirチャールズ・ウォーレンと"血の日曜日事件"

「昨年の"血の日曜日事件"でも中心的な役割を果たした」と言及されているSirチャールズ。血の日曜日事件とは、1887年11月13日にトラファルガー・スクエアで起こった惨事。 失業者や社会主義者など約二万人の群集と、警視総監のSirチャールズ・ウォーレンが指揮する警官隊が衝突し、大混乱となった。(北アイルランドデリーで起きた血の日曜日事件"Bloody Sunday"とは別)

□フリー・メイソン

フリーメイソンについて詳しくは『フロム・ヘル』 From Hell (2001) の項を参照

警視総監のSirチャールズに、フリーメイソン独特のジェスチャーと握手をして驚かせるホームズ。 Sirチャールズは、フリーメイソンの紋章がついた指輪もはめていた。 フリーメイソンの会員は、仲間同士にだけわかる特殊な挨拶をすることで知られている。 モンティ・パイソンのスケッチでも、フリーメイソンたちの特殊な握手方法が取り上げられている。

壁に残された落書き「The Juwes are The men that Will not be Blamed for nothing.」の「Juwes」は「Jews(ユダヤ人)」のつづり間違いでなく、ソロモン王の神殿を建てたグランドマスターを殺害した三人の男の名のことだという説。フリーメイソンの会員にはイギリス政府や警察上部の中心人物が多く会員になっており、首相、内相、警視総監ウォーレン、医師のスパイベイなどもメンバーだったと作中で言及されている。

余談だがシャーロック・ホームズの原作者コナン・ドイルも実はフリーメーソンの会員だったとか。

□アニー・クルック

ヴィクトリア女王の孫クラレンス公が秘密結婚したといわれているカトリックの女性。
事件をもみ消すために聖クリストファー病院からレディングの精神病院に移されていた。 切り裂きジャック事件の裏にクラレンス公とアニー・クルックが絡んでいるとする説は、映画『フロム・ヘル』 From Hell (2001) と近い。

■ロケ地

バッキンガム宮殿
国会議事堂他

■キャスト

Christopher Plummer .... Sherlock Holmes
James Mason .... Dr. John H. Watson

David Hemmings .... Inspector Foxborough(スコットランドヤードの警部)
Anthony Quayle .... Sir Charles Warren(スコットランドヤード警視総監)
Frank Finlay .... Inspector Lestrade (ホームズたちのなじみの警部)
John Gielgud .... Lord Salisbury(首相)
Geoffrey Russell .... Henry Matthews (内務相)
Donald Sutherland .... Robert Lees(霊媒師)
Tedde Moore .... Mrs. Lees(霊媒師の妻)
Peter Jonfield .... William Slade
Roy Lansford .... Sir Thomas Spivey (医師)
Genevieve Bujold .... Annie Crook(プリンス・エディに捨てられた女性)
Susan Clark .... Mary Kelly(五番目の被害者・娼婦)
June Brown .... Ann Chapman(娼婦)
Hilary Sesta .... Catherine Eddowes(娼婦)
Chris Wiggins .... Doctor Hardy
Catherine Kessler .... Carrie
Ron Pember .... Makins(自警団長)
Ken Jones .... 波止場の警備員
Terry Duggan .... Danny (美人局)
Victor Langley .... 皇太子
Pamela Abbott .... アレグザンドラ皇太子妃
Robin Marshall .... クラレンス公プリンス・エディ

■参考資料とソフト

『図説 切り裂きジャック』
仁賀 克雄 (著) ふくろうの本 (2001/05/01) 河出書房新社
日本で唯一のリッパロロジスト(切り裂きジャック研究家)によるわかりやすく面白い本。おすすめ。

『恐怖の都ロンドン』
スティーブ・ジョーンズ著/友成純一・訳/ちくま文庫(1997/05/01) 筑摩書房 ISBN: 4480032649

『フリーメイソン―西欧神秘主義の変容』
吉村正和(著)講談社現代新書 (1989/01/01)

(イギリス=カナダ 124分)


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