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『エニグマ』Enigma (2001)

監督:マイケル・アプテッド
脚本:トム・ストッパード
原作: ロバート・ハリス『暗号機エニグマへの挑戦』(新潮文庫刊)
音楽: ジョン・バリー

Story

1943年3月、第二次大戦下のイギリス。イギリス軍の暗号解読チームの拠点ブレッチレー・パークで働いていた天才的数学者ジェリコは、クレアとの恋に破れたショックから神経衰弱に陥り、一ヶ月暇を出されていた。 しかしある日ドイツ軍の暗号コードが突然変更され、それとほぼ時を同じくしてクレアもブレッチレーから姿を消してしまった。おりしも連合国軍の物資輸送船団が北大西洋を航海中で、このままではドイツ軍のUボートの餌食になってしまう。 ブレッチレーに復帰したジェリコは、仲間とともに不可能とも思える暗号解読に挑む。

しかし英国諜報部の将校ウィグラムは、ブレッチレー内に敵のスパイがいるのではないかと睨み、秘密裏に調査を始めていた。 それにしてもなぜクレアは失踪したのか?ジェリコはクレアの友人へスターの協力を得て謎解きにかかるのだが・・・

ロバート・ハリスのベストセラー小説『暗号機エニグマへの挑戦』を『ワールド・イズ・ノット・イナフ』のマイケル・アプテッドが映画化。 脚本は『恋に落ちたシェイクスピア』でオスカーを獲った劇作家トム・ストッパード。

 

Check!

ブレッチレー・パークa.k.a. ステーションX

ジェリコら暗号解読チームの研究者たちが働いていたのは、ロンドンから100kmたらずのところにあるブレッチレー・パークというマナーハウスだった。 ブレッチレー・パークは別名「ステーションX」とも呼ばれ、第二次大戦中、イギリス軍の最高機密を扱う秘密施設であった。ブレッチレー・パークはオックスフォードとケンブリッジのちょうど中間に位置していたため、国内最高の頭脳を集めるのに大変都合が良かった。機密保持のため戦後30年もこの施設のことは公にされなかった。

ここでエニグマの暗号コードを破った天才数学者アラン・チューリングとブレッチレー・パークについて
詳しくはこちらをご覧ください。>>『掟/ブレイキング・ザ・コード』Breaking the Code (1996)

現在ブレッチレーパークの周りには近代的な建築物があるため、撮影に当たって本物の建物をロケ地とすることはかなわず、かわりに同じくミルトン・キーンズ近郊にあるChichley Hallが使われた。 庭には「Hut」と呼ばれる小屋が本物そっくりに再現された。撮影用に作られた「ボンブ」(暗号解読に使った丸い回転する機械)は、後日ブレッチレーに寄贈されたとか。

Bletchley Park
Address:The Mansion,Bletchley,Milton Keynes,Buckinghamshire MK3 6EB
www.bletchleypark.org.uk

ケンブリッジ

主人公のトム・ジェリコはケンブリッジ出身の数学者。 ブレッチレーでエニグマを解読した実在の天才数学者アラン・チューリングもケンブリッジ(キングス・コレッジ)の出身なので、それを踏まえた設定なのだろう。 トムは首に紫と白のマフラーを巻いているが、これがいかにもスクール・マフラーっぽい。

トムはクレアへの恋が破れたショックから神経衰弱になり、1ヶ月ケンブリッジに戻っていた。

変わり者ばかりの暗号解読チーム

元来研究者というのは少なからず変わり者がいるものだが、ここに集められた暗号解読チームは中でも特に変わり者揃いだった。実際のブレッチレーに集められた研究者たちも変わり者揃いだったらしい。
リーダーのロギーはともかくとして、ポーランド人のパック(現実にポーランド人の数学者たちが暗号解読に大いに貢献していたとか)、ソ連を信奉しジェリコに"コムレイド!(同志よ!)"などと呼びかけるバクスター、口ひげを生やした"芸術家気取り"のピンカー等々、個性派揃い。

鉄道

この時代の鉄道は汽車。ブレッチレー・パークに向かう汽車のコンパートメントの中でジェリコは初めてクレアに出会う。

ブレッチレーからマンチェスター行きの汽車に乗るパックを追う場面も。ブレッチレーはロンドン・ユーストン駅とマンチェスターを結ぶ線の間にある。

紅茶はラプサン・スーチョン

クレアが自室にトムを招いて紅茶をすすめる場面が。彼女が出したのは、香りが強く好き嫌いが分かれる個性的な紅茶「ラプサン・スーチョン」ラプサンスーチョン(正山小種)はキーマン(茶葉の種類。中国産の紅茶)に松の葉をいぶして香りをつけたもので、ちょっと正露丸を連想させる匂いがする。 紅茶といえばほとんどのイギリス人は一般的なティーバッグを使うところをわざわざラプサン・スーチョンなどを出してくるというところに、クレアの謎めいた性格の一端が現れている。 砂糖はラプサンの風味を損ねるからと入れない。

ブレッチレーでは研究者たちが夜を徹して暗号解読に取り組んでいる。テーブルの上にはやはり紅茶の入ったティーカップ。

食堂の風景

クレアがブレッチレーの食堂でランチを食べて場面が。テーブルの上にはHPソース(ブラウンソース)が。

ジェリコの同僚たちが職場で作家のヴァージニア・ウルフの自殺について話している場面がある。ウルフの自殺は1941年、この作品の時代設定は1943年なので、この事件がまだ人々の記憶から薄れていなかった時期。
ヴァージニア・ウルフについて詳しくは>>ブルームズベリー・グループ (Bloomsbury Group)

Albion Street (ジェリコの下宿先)

ブレッチレーでトムが逗留しているのはAlbion Streetの下宿。朝食はダイニングで大家のアームストロング夫妻と一緒にとっている。 皿の上のイングリッシュ・ブレックファストに注目。陶器製の犬の置物(スタフォードシャー・フィギュア)が何組も飾られている。

ロンドン

冒頭のシーンでクレアが歩いていたのはロンドンのトラファルガー・スクエア。 彼女が遺したコートにバーリントン・アーケード(ロンドンの高級ショッピング街)の「ハンターズ」という店の名前が入っていたことなどから、彼女がよくロンドンと行き来していたこともわかる。

スコットランドのLoch

クレアからもらったポストカードには、海辺に佇む小屋が。 スコットランド北西部オーバン近郊にある湾Loch Feochanの文字が見える。 「Loch」とはスコットランドの言葉で「湾」や「湖」の意味。Loch Ness(ネス湖)の場合は湖だが、このように外界に面した(Uボートがやってくるような)ものは「湾」。www.multimap.com

このシチュエーションがちょっと『針の眼』 Eye of the Needle (1981)のラストシーンを想い起こさせる

現場の兵士は命がけ

海軍のケイブは連絡係としてブレッチレーに残った。激戦をくぐり抜けてきた彼の顔には無数の傷跡が残っていて痛々しい。 隻眼なのも戦傷によるものだろう。

ブレッチレーで保管されている暗号帳を見て、これをドイツ軍から奪うためにどれだけの兵士が犠牲になったか・・・と語る。
エニグマ暗号機もイギリス軍が命がけでドイツ軍のUボート(潜水艦)から奪ってきたもの。 数年前にハリウッドで"アメリカ軍がエニグマを奪取した"という設定の『U-571』という映画が作られた際、イギリス国内で抗議の嵐が巻き起こったのも、国民感情として当然のことか。

St Martin-in-the-Fields教会

ジェリコがロンドンのトラファルガースクエア前にあるSt Martin-in-the-Fields教会前で、ヘスターを待っている場面が。入り口にある看板から、この教会でヴォーン・ウィリアムス(イギリスの著名な作曲家)のコンサートが開かれることがわかる。St Martin-in-the-Fields教会ではしばしばコンサートが開かれることでも有名。

St Martin-in-the-Fields, Trafalgar Square, London WC2N 4JJ
www.stmartin-in-the-fields.org

ミック・ジャガーとエニグマ

撮影に使われた「エニグマ」はミック・ジャガー(ローリング・ストーンズ)が保有する"本物"だったとか。 個人的にもエニグマのエピソードに深い関心を寄せていたミックは、この原作小説の映画化権を獲得し自らプロデューサーとして映画制作に携わった。 ジェリコとクレアが踊っていたバーの場面で、兵士役でカメオ出演している。

ロケ地

Chichley Hall, Buckinghamshire

Newport Pagnell, Buckinghamshire, MK16 9JJ
www.chicheleyhall.co.uk

Great Central Railway, Loughborough, Leicestershire

Loughborough stationとQuorn Stationが撮影に使用された

Great Central Railway
www.gcrailway.co.uk
www.quorndon.com/events/enigma/

トラファルガー・スクエア, ロンドン

・・・冒頭とラスト、クレアが歩いている場所

St Martin-in-the-Field教会, ロンドン

・・・ジェリコがヘスターを待っている場面

St Martin-in-the-Fields, Trafalgar Square, London WC2N 4JJ
www.stmartin-in-the-fields.org

Oban, Scotland

・・・ブレッチレーの内通者をUボートが迎えに来る場面

Luton Hoo, Hertfordshire

 

キャスト

Dougray Scott .... Tom Jericho(ケンブリッジ出身の数学者)
Kate Winslet .... Hester Wallace(クレアのルームメイト、文書整理係)
Saffron Burrows .... Claire Romilly(トムの元恋人)
Jeremy Northam .... Wigram(英国情報部)

[ブレッチレーの暗号解読チーム]
Tom Hollander .... Logie
Nikolaj Coster-Waldau .... Jozef 'Puck' Pukowski (ポーランド人)
Richard Leaf .... Baxter
Bohdan Poraj .... Pinker

Matthew MacFadyen .... Cave (海軍の連絡係)
Donald Sumpter .... Leveret警部補
Robert Pugh .... Skynner ブレッチレーのセクションの長
Corin Redgrave .... Admiral Trowbridge (海軍提督)
Nicholas Rowe .... Villiers (海軍)
Angus MacInnes .... Commander Hammerbeck (海軍)

Ian Felce .... Proudfoot
Paul Rattray .... Kingcome
Richard Katz .... De Brooke
Tom Fisher .... Upjohn
Mary MacLeod .... Mrs. Armstrong(トムの大家)

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0157583

オフィシャル・サイト
www.enigmathefilm.com
www.thefilmfactory.co.uk/enigma
www.enigma-movie.com

www.bbc.co.uk/history/war/wwtwo/enigma_01.shtml

www.bletchleypark.org.uk

ソフト

DVD

原作: ロバート・ハリス『暗号機エニグマへの挑戦』(新潮文庫刊)

(2001年 イギリス 117分)


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