タイトル*アラビアのロレンス
監督:デイビッド・リーン
1935年5月13日、イギリスのカントリーサイドを猛スピードで走ってくるオートバイに乗っていた男・・・不慮の事故で生涯を終えた男こそ、アラビアを舞台に活躍したイギリス人T.E.ロレンスであった。
1916年、イギリス軍司令部の命によりロレンスは砂漠へ向かい、対トルコ反乱軍の中心人物ファイサル王子に接触し、ともにトルコの軍事拠点アカバを攻め落とす。しかしアラブの英雄となったロレンスの誇りを打ち砕いたのはトルコ軍司令官による恥辱だった。イギリス軍の二枚舌、無力感。ロレンスは失意のうちに砂漠を後にするが・・・
謎に満ちたアラブの英雄の波乱の半生、苦悩と挫折を雄大なスケールで描き出した作品。
1888年8月16日北ウェールズ生まれ。オックスフォードで考古学、特に築城術の研究に励む。1911年にイラクの遺跡発掘、1913年にシナイ半島測量隊に参加。第一次大戦勃発後、軍の命により中東局情報測量班のメンバーとしてアラブ入りするが、実は対アラブ工作員であったとの見方が強い。
アラブ独立の理想に燃えたロレンスだったが、結局彼自身もイギリス政府の二枚舌に躍らされていたのだ。こちらのエッセイもご覧ください。
アカデミー作品賞、監督賞、撮影賞、美術監督賞、サウンド賞、編集賞、作曲賞。
(その他)1999年度英国映画協会によるベスト100作品:3位にランクイン
Merthyr Mawr砂丘 (Wales Bridgend近郊)
Cobham, Surrey ... オートバイ事故の場面
St Paul's Cathedral in London... 追悼式の場面(その他、主にヨルダン、モロッコ、スペインで撮影された)
Peter O'Toole .... T.E. Lawrence
Alec Guinness .... ファイサル王子
Anthony Quinn .... Auda abu Tayi
Jack Hawkins .... アレンビー将軍
Omar Sharif .... Sherif Ali ibn el Kharish
Jose Ferrer .... デラアのトルコ軍司令官
Anthony Quayle .... Harry Brighton大佐
(1962年 アメリカ 202分)
監督:Christopher Menaul、製作:David Puttnam他
映画『アラビアのロレンス』の後日談。レイフ・ファインズ主演。
1919年ブラスバンドがエルガーの「威風堂々」を演奏するなか、T.E.ロレンスの記録映画が上映される。疲れきった表情でそれをぼんやりと眺めるロレンス・・・
一年前の1918年、第一次世界大戦が終結しパリ講和会議が開かれた。集まったのは米大統領ウィルソン、仏首相クレマンソー、英首相ロイド・ジョージ。戦後処理と領土の分割を話し合うことが重要な議題だった。
イギリスはアラブに独立を約束しながらも、フランスとも領土を分割することをとりきめており、ユダヤ人にもパレスチナを与えることを密約していたという「三枚舌」を駆使していた。
アラブを率いて戦ったロレンスは、大国の好きにさせないためにもファイサルの通訳として会議に臨んだ。コーランを唱え続けるファイサルの言葉を通訳すると見せかけて、アラブの権益を確保しようと奮闘するロレンス。しかしそんな彼の努力も空しく・・・
第一次世界大戦の講和会議。1919年、戦勝国が参加して、戦後問題の処理を討議。強国の利害が対立し、フランスの強硬論を中心に戦勝国の一方的な取り決めによって、対ドイツのベルサイユ条約が成立した。また、国際紛争解決のため、国際連盟の創立を決定。
Thomas Edward Lawrence(1888-1935)
第一次世界大戦中アラブ人の対トルコ反乱を指揮したイギリス人で、アラビアのロレンスの名で知られた。著書に「智慧の七柱」「砂漠の反乱」などがある。オートバイ事故で死亡。
ロレンスは男爵であった父チャプマンと家庭教師の母の不倫の恋の果てに生まれた私生児で、そのことがかれの生涯に暗い翳を落としていた。
David Lloyd George, lst Earl of Dwyfor(1863-1945)
イギリスの政治家。自由党下院議員。1908年アスキス内閣の蔵相、1916年首相となり、連立内閣を組織して第一次世界大戦を勝利に導いた。パリ講和会議代表。アイルランド自由国(Eire)を承認。著書に「大戦回顧録」がある。
Georges Clemenceau(1841-1929)
1906-1909年首相就任。第一次世界大戦中再度首相に就任し、戦争を勝利に導き、パリ講和会議ではフランスの全権。
Woodrow Wilson(1856-1924)
アメリカの第28代大統領(在任1913-1921)。民主党員。「デモクラシーのための戦い」を主張して、第一次世界大戦では対独宣戦を布告。戦後ベルサイユ会議を指導し、国際連盟の組織などを提唱。1919年ノーベル平和賞を受賞。
Sir Winston Leonard Spencer Churchill(1874-1965)
イギリスの政治家。保守党員として下院にはいったが、のち自由党に転じた。第一次世界大戦では主戦論を唱え、海相・軍需相・陸相などを歴任。戦後は保守党に復帰し、第二次世界大戦勃発とともに海相、1940年挙国一致内閣を組織して首相となり、連合国軍を指導した。戦勝直前に労働党に敗れて下野。1951-1955年再度首相となる。文筆家としても著名で、1953年ノーベル文学賞を受賞。著書に「第二次大戦回顧録」など。
1920年ファイサルはシリアから追放されるが、チャーチルと組んでイラクで王として即位する。
当時のイギリス国王はジョージ5世。ロレンスは国王からのバース勲章を辞退して問題になった。
T. E. Lawrenceの自伝『智慧の七柱』の有名な一節「群れなす群集を我が手に統べ 砂もて遺書をしたためたり・・・御身への愛ゆえに」がしばしば引用される。
・「砂漠では空気が違う・・・粘土壁は水ではなく花から取った油でこねるのだ」と、アラビア時代にロレンスを慕っていた少年ダラームとの追憶にふける場面が出てくる。
・ロレンスの背中には未だひどい鞭打ちの傷が残っている。
「夢の見方は人によって違う。しかし白昼夢を見る男は危険だ。なぜならそれ実現しようとするから」
原題の「A Dangerous Man: Lawrence After Arabia」はこの一節に拠っている。アラブ独立という壮大な夢を見、実現させようとした男の成功と挫折・・・ロレンスの晩年の自虐的な生き方も、このパリ講和会議前後の大国の利権争いを間近に見てしまったからなのかもしれない。
Ralph Fiennes .... T. E. Lawrence
Alexander Siddig .... Feisal
Dennis Quilley .... Curzon卿
Nicholas Jones .... Dyson卿
Roger Hammond .... Valence
Peter Copley .... Maitland
Paul Freeman.... Dumont(仏首相補佐官)
Polly Walker.... Mme. Dumont (仏首相補佐官の妻)
Gillian Barge .... Gertrude Bell(英国側)
Jim Carter .... Meinertzhagen(英国側)
Michael Cochrane .... Churchill
Robert Arden .... Wilson(アメリカ大統領)
Arnold Diamond .... Clemenceau(フランス首相)
Bernard LLoyd .... Lloyd George(イギリス首相)(1990年 イギリス 104分)
アラビアのロレンスを探して(日本語・英語)
・・・八木谷涼子さんによる非常に充実した研究。ロレンスの生涯から詳細なデータ、トピックス、書誌など、ロレンスを知るには最適のサイト。
Lawrence of Arabia
Factfile
公認伝記作家Jeremy Wilson氏によるサイト。
『アラビアのロレンス』
ロバート・グレイブス(著)
『アラビアのロレンスを探して―揺れる英雄像』
スティーブン・E・タバクニック、クリストファー・マセスン(著)八木谷涼子(訳)平凡社
『砂漠の反乱』
T.E.ロレンス(著)中公文庫
『アラブが見たアラビアのロレンス』
スレイマン・ムーサ(著)中公文庫
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