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『二都物語』 A Tale of Two Cities (1958)

監督:Ralph Thomas
脚本:T.E.B. Clarke
原作:Charles Dickens 小説_A Tale of Two Cities_

Story

酒に溺れ鬱々とした日々を過ごしていた腕利きの法廷弁護士シドニー・カートンと、そしてフランス貴族の出でありながら身分を隠してイギリスに来ていた青年チャールズ・ダーネイ。 チャールズはバサードという男の密告でスパイ容疑に問われ窮地に陥っていたところを、シドニーと相棒のストライバーはシドニーとチャールズの容姿が似ていることを例にとって、チャールズの無罪を勝ち取った。

シドニーとチャールズは奇しくも同じ女性、ルーシー・マネットという美女に恋をしていた。彼女の父は医者で、あるフランスの貴族の非道な所業を目にしてしまったために18年間もバスチーユに投獄されていた。 その貴族に父と兄姉を惨殺されたったひとり生き残った娘は、マネット医師の従者デファージと結婚してパリで居酒屋を営んでいたが、牢から救いだされた昔の主人を引き取り、娘のルーシーに連絡を取ってくれたのだった。

回復したルーシーの父はイギリスで開業し、チャールズは彼女に求婚する。 シドニーは彼女のためを思って熱い想いを抱えながらも身を引くことに。フランス貴族の出であることを隠していたチャールズだったが、昔の従者ギャベール父娘が窮地に立っていることを知り、危険を承知でフランスに渡る。 彼の身を案じてフランスに戻ろうとするマネット父娘に付き添ってシドニーも革命の嵐が吹き荒れるフランスへ・・・

18世紀後半、フランス革命前夜の混沌とした時代のロンドンとパリを舞台に、愛に殉じる男の純情、複雑な人間模様を描いたチャールズ・ディケンズ原作の傑作小説の映画化。主演ダーク・ボガード

 

Check!

ディケンズ原作『二都物語』

ディケンズ原作の『二都物語』は1859年に発表された歴史小説。ロンドンとパリを舞台にフランス革命前夜の緊迫した時代背景や、波乱万丈のプロットで読者を惹きつける。

Old Bailey(中央刑事裁判所)

カートンやストライバーら法廷弁護士(バリスター)の活躍の場のひとつが、通称「Old Bailey」と呼ばれるCentral Criminal Court(中央刑事裁判所)で、当時ニューゲイト刑務所に隣接(同じ敷地内)していた。
Address: Old Bailey, London EC4 (地下鉄St. Paul's駅下車)

ニューゲイト監獄(Newgate Prison)

スパイ容疑で投獄されているチャールズの弁護をするために、ニューゲート監獄を訪れたルーシー。「ダーネイは絞首刑の後四つ裂きにされるだろう」と聞いて、震え上がる。

ロンドン塔が政治犯や貴族を収容した場所であったのに対し、ニューゲイトは一般の犯罪者を収容した監獄。Old Bailey RoadとNewgate Streetの交わるあたりにあった。

1188年にヘンリー二世の命によって創立されたが、ロンドン大火(1666)で焼失し、1672年に再建、のち1770年に改装される。 はじめはタイバーンで公開処刑が行われていたが、1868年以降は建物の内部で処刑されるようになった。建物は1902年に取り壊される。(この時、同敷地内にあった中央刑事裁判所も同時に取り壊され、裁判所だけが再建される。)

タイバーン処刑場

ルーシーたちがニューゲートを訪れた時、ちょうどタイバーン行きの馬車も。ニューゲイト監獄からからタイバーン刑場までの道は、ちょうど現在のOxford Streetにあたる道。

タイバーンで最初に絞首刑が行われたのは1571年で、それまではスミスフィールドやタワーヒルで行われていた。この有名な処刑場はハイドパークの北西の角(現在マーブルアーチが立っている場所)にあった。

ニューゲイトからタイバーンの処刑場までの4kmほどの道のりHolban, St Giles and Tyburn Road (現在のOxford St.)を、囚人はゆっくりと馬車で運ばれ、沿道には多くの見物客が詰め掛けた。罪人が人気があった時は、見物人から酒を振る舞われたり、花を投げられたりしたが、嫌われ者は石や汚物を投げつけられたとか。1783年に閉鎖。

参考サイト:Tyburn Tree
http://www.evergreen.loyola.edu/%7Ecmitchell/

Inn

シドニーたちがドーバー海峡近くで泊まったのは「Inn」と呼ばれる宿屋の一種で、パブを兼営していることも。

フランス人嫌い

イギリス人の「フランス人嫌い」ときたら古くからよく知られているが、ここに登場するルーシーの従者ミス・プロスもその典型。 ルーシーを送ってドーバー海峡まで来たときも「フランスなんか死んだって行くものか」と嫌悪感をあらわにする。結局数年後に彼女もフランスに渡ることになるが、その際も"大英帝国の女"としての面目躍如、ルーシーを危機から救う。

フランス貴族たちの亡命

革命の嵐吹き荒れるフランス。イギリスにいたチャールズは「逃亡者」として死刑を求刑される。 フランス革命で財産を没収され、民衆に追われたフランス貴族たちは、この時期イギリスに逃れるものが少なくなかった。 バロネス・オルツィ原作の『紅はこべ』もそうした貴族たちを救いだしイギリスに亡命させる手助けをしていた"紅はこべ"ことパーシー・ブレイクニー卿が主人公。

対米戦争の話

チャールズがルーシーにイギリスの対米戦争の話をしていたことが、裁判でとがめられる。「ジョージ・ワシントンは将来ジョージ三世より有名になるだろう」と。 英国王ジョージ三世は、アメリカ独立戦争当時の国王で、映画『英国万歳!』The Madness of King George(1994) にも描かれているように、晩年は精神を病んでしまう。

 

キャスト

Dirk Bogarde .... Sydney Carton (法廷弁護士)
Dorothy Tutin .... Lucie Manette (マネットの娘)
Paul Guers .... Charles Darnay (フランス人・ルーシーと結婚する)

Stephen Murray .... Dr. Alexander Manette (医者・マネットの父)
Athene Seyler .... Miss Pross (ルーシーの従者)
Cecil Parker .... Jarvis Lorry (銀行家)
Alfie Bass .... Jerry Cruncher(テルソン銀行の使い走り)
Ian Bannen .... Gabelle (元St. Evremonde侯爵の使用人)
Marie Versini .... Marie Gabelle (元St. Evremonde侯爵の使用人の娘)

Ernest Clark .... Stryver(有能な弁護士・シドニーの相棒)
Duncan Lamont .... Ernest Defarge(パブの主人・元マネット医師の従者)
Rosalie Crutchley .... Madame Terese Defarge (昔マネット医師に助けられた娘)
Donald Pleasence .... Barsad(Darnayを密告した小悪党・Miss Prossの弟)
Christopher Lee .... Marquis St. Evremonde(冷酷な仏貴族・Darnayの親戚)
Sacha Pitoeff .... Gaspard (St. Evremonde侯爵に子供を轢き殺された男)

 

参考資料とソフト

.imdb.com/Title?0052270

Project Gutenberg:原作テキスト
http://digital.library.upenn.edu/webbin/gutbook/lookup?num=98

 

原作:『二都物語』 (上巻) (下巻)
チャールズ・ディケンズ (著) 中野 好夫(訳)新潮文庫

洋書・朗読CD/カセット

(1958年 イギリス 118分)

 



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