タイトル*ふ
*ビデオタイトル『フェリシア』
監督・脚本:アトム・エゴヤン・・・『スイート・ヒア・アフター』『エキゾチカ』
撮影:ポール・サロシー
音楽:マイケル・ダンナ
衣装:サンディ・パウエル
原作:William Trevor・・・アイルランド出身。『フールズ・オブ・フォーチュン』の原作者
連絡先も告げぬままにイギリスに行ってしまった恋人を追って、アイルランドからバーミンガムにやってきた17歳の少女フェリシア。わずかな手がかりを頼りに恋人の勤め先を捜し歩く彼女に親切に声をかけてくれたのは、食品工場の支配人ヒルディッチ氏。優しそうな中年男に次第に気を許していったが、彼には恐ろしい別の顔があったのだ。料理番組のビデオを見ながら、一人暮らしだというのに夜毎完璧なフランス料理のフル・コースを作って豪華な晩餐をとる彼には、いったいどんな過去が・・・?
ウィリアム・トレヴァーの1994年度ホイット・ブレット賞受賞作をもとにしたサスペンス。
産業革命で大きく発展したイングランド中部にあるロンドンに次ぐ大都市。フェリシアは通りがかったヒルディッチ氏に安宿が集まっているB&B街は"マーシュリンク"のあたりにあると教えてもらう。よくB&Bに備え付けられているタイプの電気ポット(中に電熱線が入っている)で湯を沸かすフェリシア。
イギリスに着いたフェリシアは、入国管理室に通され身分証の提示を求められる。
普通はアイルランドーイギリス間のフェリー入国はあまり厳しくないが、着の身着のままのフェリシアは不法入国労働者ではないかと怪しまれたのであろう。
入国管理室を出た彼女は、ナショナル・エキスプレス社の操車場へ向かったので、おそらくコーチ(長距離バス)でから内陸部のバーミンガムへ移動したのだと思われる。
ジョニーがイギリス軍に入ったという噂を聞いて、フェリシアの父は強い不快感を示す。
フェリシアの曾祖母の夫は「1916年5月に英軍兵に殺された」とあるので、1916年4月24日に勃発したイースター蜂起がらみで亡くなったのではないかと推測される。1616年はアイルランドで反英感情が吹き荒れた年で、多くのアイルランド人が英国の支配に抵抗し命を落とした。
フェリシアが彼女の曾祖母とアイルランドの言葉であるゲール語で話す場面がある。
「聖パトリックの日までに家に帰りたい」というフェリシア。アイルランドの守護聖人を祭るSt. Patrick's Dayは、毎年3月17日に催される。
フェリシアがヒルディッチ氏についていった病院のロビーでは、TVでオスカー・ワイルド原作の「サロメ」を放映していた。衣装や雰囲気からすると1953年のリタ・ヘイワース版サロメのようだが、演じているのはヘイワースではないようだ。「洗礼者ヨハネの首を!」と求める美しくも凄惨な物語。
アイルランド
Gransworth, Co. Cork
St. Mary's Church, Clogheen, Co. Tipperaryバーミンガム
ロンドン
音楽の使われ方が印象的。ヒルディッチ氏が"My Special Angel"の歌詞をつぶやくところにはゾクリ。他に、ケイト・ブッシュの"The Sensual World"など。
第52回カンヌ映画祭正式出品作品
Bob Hoskins .... Joseph Ambrose Hilditch(食品工場の支配人)
Elaine Cassidy .... Felicia
Claire Benedict .... Miss Calligary (宗教家)
Peter McDonald .... Johnny Lysaght (Feliciaが探している恋人)
Brid Brennan .... Mrs Lysaght (Feliciaの恋人の母)
Gerard McSorley .... Feliciaの父
Marie Stafford .... Feliciaの曾祖母
Arsinee Khanjian .... Gala (Hilditch氏の母・料理研究家)
ヒルディッチ氏の母を演じたArsinee Khanjianは、エゴヤン監督のパートナーでもある。
(1999年 イギリス=カナダ 116分)
邦訳:『フェリシアの旅』角川文庫
監督・脚本:Roman Polanski
脚本:Gerard Brach
音楽:Krzysztof Komeda
潮が満ちると隔絶されてしまう孤島、リンディスファーン島(ホーリーアイランド)の古城に住む中年男ジョージと、その若くて美しいフランス人の妻テレサ。新婚10ヶ月のジョージは、全財産を投げ打ってこの古城を買い取り、平穏な暮らしを始めたのだが、若いテレサは近くの島に住む青年とこっそり浮気をしていたりする。
そこへ逃亡中の犯罪者が瀕死の相棒を連れて逃げ込んできたことから、何かが崩れはじめ・・・
人口200人も以内小さな島だが、年間に50万人以上もの観光客が来る。干潮時にイングランド本土から歩いて渡れるが、満潮時には外界から遮断されてしまう。(コーンウォールのSt. Michael's Mountも干潮時に道が出来る島として有名)
この島はイングランドに最初にキリスト教が伝播した場所と言われている。7世紀にはノーサンバーランドの王オズワルドがここから僧を招いてキリスト教に改宗した。アイルランドの僧Aidanはこの島にコミュニティを作りキリスト教を広め、後に聖人に列せられた。
テレサ夫妻が住む古城にある由緒ある聖カスバートのステンドグラスは、遊びに来ていた悪ガキに割られてしまう。
聖カスバート:
聖Aidanの死んだ651年8月31日の夜に、スコットランドのメルローズに住む若い羊飼いCuthbertは、聖Aidanの死を幻視したのをきっかけに、彼が設立したMelroseにある僧院に入った。後にLindisfarneに渡り布教活動を続け、聖人として列せられる。
ジョージがテレサとの新婚生活のために買った古城。その昔Sirウォルター・スコットがこの城に滞在して『ロブ・ロイ』を書上げたらしく、ジョージは客人たちにウォルター・スコット縁の部屋を披露する。
この城は現在ナショナル・トラストの管理下にある。結婚式などのイベントにも貸し出されるらしい。
Sir Walter Scott(1771-1832)
スコットランド・エディンバラ生まれの詩人・小説家。エディンバラでは法律家としての教育を受けるが、1796年には詩(バラッド)を書き始め、処女作『The Border Minstrelsy』(1802)の出版によって有名に。その後恋愛小説『The Lady of the Lake(湖上の美人)』(1810)、スコットランド史に基づいた歴史小説『Waverley』(1814)『A Legend of Montrose』(1819)、中世をに着想を得た『Ivanhoe(アイバンホー)』(1819)など、多くの作品を発表する。
ディッキーのボスの居場所は「St.Cuthbert Arms Hotel, Mablethorpe」となっていたが、このMablethorpeは、Lincolnshireの海沿いの町Skegnessから約20キロ北上したところにある地名らしい。
(参考:Cross the causeway)
Holy Island(Lindisfarne Island), Northumberland
WebSite>The Holy Island of Lindisfarne
1966年ベルリン国際映画祭 金熊賞受賞
1966年ヴェネチア国際映画祭 イタリア批評家賞受賞
Donald Pleasence .... George
Francoise Dorleac .... Teresa
Lionel Stander .... Richard(Dickie)
Jack MacGowran .... Albert(Richardの仲間)
Iain Quarrier .... Christopher (Teresaの浮気相手)
Geoffrey Sumner .... Christopherの父 (近隣に別荘を持つ資産家)
Renee Houston .... Christopherの母
Robert Dorning .... Mr Fairweather (客)
Marie Kean .... Mrs Fairweather
William Franklyn .... Cecil (近隣に住む資産家)
Jacqueline Bisset .... Jacqueline (Cecilのガールフレンド)
Trevor Delaney .... Nicholas (Fairweather夫妻の子供)夭折したカトリーヌ・ドヌーヴの姉、フランソワーズ・ドルレアックがヒロイン。
ジャクリーン・ビセットにとって台詞がある初めての映画だったとか。
(1966年 フランス B&W 113分)
Cross the causeway
『袋小路』を研究するファンサイト。より詳しい情報をお求めの方はぜひ!
監督:Nick Willing ・・・『妖精写真』(1997)
脚本:Peter Barnes
原作:Lewis Carroll _Alice in Wonderland_、_Through the Looking Glass_
アリスはガーデン・パーティーで、お客さまに歌を披露しなければならないのが嫌でふらふらと庭をさまよっているうちに、通りがかった白ウサギを追って奇妙な世界に迷い込む。「Drink me」と書かれた不思議な薬を飲んだとたん、アリスの体が変化して・・・
ベテラン英国俳優を中心とした超豪華キャストによる実写版「不思議の国のアリス」。続編「鏡の国のアリス」のエピソードも取り入れられている。言葉遊びが楽しい。
冒頭に、アリスの両親が招待したお客さまが思い思いにパーティーを楽しんでいる様子が写る。チェスやカードに興じる人々、サンドウィッチやタルトをつまむ人々・・・このシークエンスにのちに不思議の国で体験するさまざまなものが散りばめられている。
高級そうな家具が並んでおり、庭には温室が。
お菓子を食べるのに使用するカトラリーはナイフのみ、というのがいかにもイギリスか。(フォークは使用しないことが多い)
白い騎士:「アジンコートの戦を思い出す」・・・「ヘンリー5世」の戦の舞台となった場所。
「首をはねるべきか・・・それが問題だ」・・・「ハムレット」
アリスが芋虫に暗唱させられた詩は、ロバート・サウジイ(1774-1843)による教訓詩の替え歌。
臆面もなく王の顔を見るチェシャ猫をかばって、アリスが抗議した台詞。イギリスのことわざで、「目下のものが目上の者の前でやっても良いことはいくらでもある」という意味。
「にせ亀(Mock Turtle)」という名前は「Mock Turtle Soup」という海亀のスープに見立てて、子牛を使って作る緑色のスープから。テニエルの挿し絵の「にせ亀」にしっぽとひずめがついているのはこの理由による。
別名Griffin。鷲の頭と翼を持ち、下半身はライオンの形をした伝説上の怪獣。黄金の宝を守るとされている(ギリシャ神話)。キリストの中の神と人間の合体のシンボルとして描かれてきた。
『不思議の国のアリス』の続編『鏡の国のアリス』に出てくるエピソードも、この作品にいくつかとりいれられている。
- 鬼百合(Tiger Lily)とデイジー
- TweedledumとTweedledeeの場面、および彼らが語るせいうちと大工の物語
- ライオンとユニコーンの戦い
- 白の騎士と赤の騎士
(1)「夏の日にハートのジャックタルト盗んだ」ハートのジャックは、女王のタルトを盗んだかどで裁判にかけられる。 18世紀の雑誌「ヨーロピアン・マガジン」に掲載された四節からなる詩で、キャロルが取り上げたことにより一躍有名に。のちに第一節のみマザーグースの歌として親しまれるようになった。キャロルの原書では第一節の"And took them clean away"が"And took them quite away"になっている。 The Queen of Hearts The King of Hearts (2)Tweedledum & Tweedledee元になったのは、18世紀の讃美歌作家ジョン・バイロムが、英国に帰化した有名な作曲家ヘンデルと、イタリア人作曲家ボノンチーニの対立を、「TweedledumとTweedledeeとの間にそれほど違いがあるのかね」と揶揄した風刺詩。 傍目にはたいして変わり映えしなようなことでいがみあっている二人を「Tweedledum and Tweedledee」というようになった。 この歌詞にあるように、ガラガラ(rattle)が壊れているのを見つけたふたりはけんかをはじめ、カラスの大群が空を舞う。 Tweedledum and Tweedledee |
(3)桑の周りを回ろうよTweedledumとTweedledeeがアリスの手を取って歌いながらくるくる回っていた場面。イギリスの子供たちはこの歌にあわせて輪になって回ったり、手を叩いたりして遊ぶ。 Here we go round the mulberry
bush, (5)ライオンと一角獣キャロルは、ライオンとユニコーンの戦いを、グラッドストーン(自由党)とディズレーリ(保守党)の対立になぞらえて書いたといわれている。ちなみにキャロルは保守党支持。 スコットランド王ジェームズ六世(在位1567-1625)は、世継ぎの無かったエリザベス一世没後に"ジェームズ一世"としてイングランドの王位を継承した際、両国の紋章(イングランドがライオン、スコットランドが一角獣)の図案を組合わせて新しい紋章を制定した。 The Lion and the Unicorn Some gave them white bread, (4)Twinkle Twinkle帽子屋は、お茶会で、また裁判の席で「きらきら星」の歌詞を勝手にアレンジして歌っている。原詩はアメリカの女流詩人ジェイン・テーラーが1806年に発表した有名な詩。 原詩 お茶会で帽子屋が歌ったバージョン: 後に裁判の場面でも"Twinkle Twinkle Little Gnat"と替え歌をする。Gnat(ブヨ)は、『鏡の国のアリス』に登場。 |
Londonなど
1999年度エミー賞受賞
ルイス・キャロル作詞による歌が多数使用されている。
"Wow Wow Wow"(公爵夫人の歌)Speak roughly to your little boy, I speak severely to my boy, "Beautiful Soup"(モックタートルとグリフォンのコーラス)Beautiful Soup, so rich and
green, |
"Will you, won't you?"(にせ亀とグリフォンのコーラス)のちにアリスもこの歌を披露することになる。 "Will you walk a little
faster?" said a whiting to a snail, |
Tina Majorino .... アリス
Miranda Richardson .... ハートの女王
Simon Russell Beale .... ハートのキング
Jason Flemyng .... Sir Jack(ハートのジャック)
Whoopi Goldberg .... チェシャ猫
Elizabeth Spriggs .... 公爵夫人
Ben Kingsley .... いもむし少佐(英国陸軍)
Christopher Lloyd .... 白の騎士
Martin Short .... きちがい帽子屋
Robbie Coltrane .... Tweedledum
George Wendt .... Tweedledee
Peter Ustinov .... せいうち
Pete Postlethwaite .... 大工
Gene Wilder .... 偽亀(Mock Turtle)(1999年 米=英)
監督・脚本:Caroline Thompson
原作:Anna SewellThe Project Gutenberg E-text>_Black Beauty_ by Anna Sewell
19世紀末の英国が舞台。農場での誕生から人間との暖かい交流、理不尽な仕打ち・・・黒馬"ブラック・ビューティ"がたどる数奇な一生を描く。
『秘密の花園』『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の脚本家キャロライン・トンプソンの監督デビュー作。
最初の主人であるGordon一家の暮すBirtwick Parkにあるあたたかみのある屋敷、貴族一家の格式ある大邸宅、辻馬車屋ジェリーの生活の場である猥雑な大都市ロンドン・・・と、19世紀末の様々なイングランドの様子や、階級社会が描かれている。
ロンドンのマーケットには、ネズミ駆除屋やバイオリン弾き、青物売りとさまざまな人々がいて面白い。
・・・最初の主人の家
・・・ロンドンの町のセットがブレナム宮殿の庭に造られた。宮殿の建物は遠景にオペラハウスとして登場
・・・Wexmire卿の屋敷
・・・ブラックビューティーがLady Wexmireのためにポーズを取った部屋
Newport Pagnell, Buckinghamshire, MK16 9JJ
www.chicheleyhall.co.uk
Alan Cumming .... Black Beauty (黒馬・声の出演)
Sean Bean .... 農夫Grey(Black Beautyが生まれた農場の主人)
Jim Carter.... John Manly(Gordon家の使用人)
Andrew Knott .... Joe Green (Gordon家の使用人・少年時代)
Ian Kelsey .... Joe Green (青年時代)
Peter Davison .... Squire Gordon (Black Beautyの最初の主人)
Rosalind Ayres .... Gordon夫人Peter Cook .... Lord Wexmire (Black Beautyの二番目の主人・貴族)
Eleanor Bron .... Lady Wexmire
Adrian Ross Magenty .... Lord GeorgeDavid Thewlis .... Jerry Barker(辻馬車乗り)
(1994年 アメリカ 89分)
制作・総指揮:ゲイリー・オールドマン
監督:ジェイク・スコット・・・リドリー・スコットの息子
脚本:Robert Wade / Neal Purvis / Charles McKeown
音楽:Craig Armstrong・・・『ロミオ+ジュリエット』
撮影:John Mathieson・・・『グラディエイター』『ツイン・タウン』
舞台は1748年のロンドン。犯罪のノウハウに通じた頭の回転の良いプランケットと、甘いマスクで上流社会にコネを持つ聖職者の息子マクレーン。ひょんなことから出会ったふたりは紳士協定を結び、タッグを組んで金持ちを襲うようになった。
社交界の花形ロチェスター卿のパーティーの帰りに、ハイドパークで裁判長ギブソン卿とその姪レベッカの乗る馬車を襲う。マクレーンはパーティで一目ぼれしていたレベッカに恭しい態度で接して驚かせ、この一件からふたりは"紳士強盗"として有名に。
次々と盗みを重ね金が溜まってきたところで、プランケットはマクレーンに新天地アメリカへ移住する計画を持ち掛ける。そんな時、ふたりはフランス大使を誤って殺してしまい、この事件を追及されてギブソン卿は失脚に追い込まれる。レベッカには彼女に想いを寄せるチャンスの魔の手が迫り、紳士強盗のふたりもチャンスに濡れ衣を着せられるが・・・
現代風の味付けが施された痛快バディ(相棒)ムービー!
Based on True Story
紳士強盗プランケット&マクレーンは実在の人物。
マクレーンは1724年、スコットランド長老教会の聖職者の末息子として、アイルランド北部のモナハンで生まれる。この作品中でもフランス大使相手にフランス語を話す場面があるが、実際のマクレーンもラテン語をはじめとして幅広い教育を受けていた。18歳の時に父が他界し、その財産を使い果たした頃に元薬剤師プランケットに会い、悪の道に手を染める。6か月間に1616件の強盗を働いたという。ブレヒトの『三文オペラ』の元になったジョン・ゲイの戯曲『乞食オペラ』の主人公マックヒースは、このマクレーンがモデルといわれている。John Gay(1685-1732): The Beggar's Opera
ハイドパークでギブソン卿とレベッカを襲うシーンがあるが、実際に被害に遭ったのは作家のホレス・ウォルポールだったとか。この時の紳士的な振る舞いが評判を呼び、紳士強盗として名を馳せることになる。
実在のマクレーンは1750年に処刑されるが、プランケットの方は逃げ延びたという。(参考:オフィシャルサイトより)
ニューゲイト牢獄
最初に登場するのはナイツブリッジにあるDebtor's Jail。現在は名門デパートハロッズがある高級商業地だが、昔は牢獄があったなんて。
墓場で捕らえられたふたりが入れられるのが、かの有名なNewgate Prison。Old Bailey RoadとNewgate Streetの交わるあたりにあった。ロンドン塔が政治犯や貴族を収容した場所であったのに対し、ニューゲイトは一般の犯罪者を収容した監獄。かのダニエル・デフォーもここに投獄され、その時の体験を『モル・フランダース』に記している。
1188年に創立されたがロンドン大火(1666)で焼失し、1672年に再建、のち1770年に改装される。 はじめはタイバーンで公開処刑が行われていたが、1868年以降は建物の内部で処刑されるようになった。建物は1902年に取り壊される。
参考Web(絵画をご覧ください)
タイバーン処刑場
タイバーンで最初に絞首刑が行われたのは1571年で、それまではスミスフィールドやタワーヒルで行われていた。この有名な処刑場はハイドパークの北西の角(現在マーブルアーチが立っている場所)にあった。
ニューゲイトからタイバーンの処刑場までの4kmほどの道のりHolban, St Giles and Tyburn Road (現在のOxford St.)を、囚人はゆっくりと馬車で運ばれ、沿道には多くの見物客が詰め掛けた。罪人が人気があった時は、見物人から酒を振る舞われたり、花を投げられたりしたが、嫌われ者は石や汚物を投げつけられたとか。1783年に閉鎖。
参考Web(ホガースの絵画をご覧ください)
Tyburn処刑場について詳しくわかるサイト:Tyburn Tree
18世紀ロンドンの風俗
闘鶏、ボクシング、つけぼくろ、男性の鬘(かつら)、決闘、公開処刑・・・と、18世紀ロンドンの風俗でいっぱい。衣装にも注目。
ロチェスター卿
主人公ふたりの他に異彩を放っていたのが、マクレーンの旧友ロチェスター卿。"I swing everywhere."とバイセクシュアルを公言している。印象に残る台詞がこれ。
New world is too far, too big, and too primitive.
And My place is here...collapsing young.時代はジョージ2世(『英国万歳!』The Madness of King George(1994) のジョージ3世の祖父)の治世。アメリカの独立を間近に控え、ふたりの紳士強盗も新世界への希望を胸に秘めていた一方で、ダンディな洒落者ロチェスター卿の生きる社会は権謀術数渦巻くイングランドの社交界。この対比が面白い。
ロンドン、プラハ(チェコスロバキア)、スペイン
Robert Carlyle .... Will Plunkett
Jonny Lee Miller .... Captain James Macleane
Ken Stott .... Chance
Tommy Flanagan .... Eddie (Chanceの部下)
Michael Gambon .... Lord Gibson(裁判長)
Liv Tyler .... Lady Rebecca Gibson(Gibson卿の姪)
Alan Cumming .... Lord Rochester(社交界の花形男)
Terence Rigby .... Harrison (Newgate Jail看守)
Claire Rushbrook .... Lady Estelle Darcy(資産家の女性)
Iain Robertson .... Highwayman Rob (Chanceに殺されたPlunkettの相棒)
(1999年 イギリス 100分)
Official
http://www.robtherich.com(英語)
http://www.plunkett.gr.jp/(日本語)
http://www.macleane.gr.jp/(日本語)
制作:ケネス・ハーパー
監督:ケン・ラッセル
原作・脚本: Peter Myers
イングランド南部の寂れたシーサイド・リゾート、ゴームレー。このぱっとしない町に観光客を呼ぶために、映画祭を開催しBB(ブリジット・バルドー)を招待しようと企画するジム。しかしかの有名なBBが来てくれるはずもなく、代わりに目を付けたのが、フランスのお色気女優FF(フランソワ・フェイヨール)。見事FFを口説き落としゴームレーに連れてくるのに成功する。
フランスから美人女優がやってきたというので、ゴームレーは町を挙げての歓迎ムード。好色な市長や頭の固いお役人たちをも巻き込んでスラップスティックな大騒ぎが始まる。はたして第一回ゴームレー映画祭は・・・?ジムとガールフレンドのジュディの仲は・・・?
英国映画界の鬼才ケン・ラッセルの処女長編。
ラッセルの短編『エルガー』を観たプロデューサーが"ジャック・タチスタイルの映画を"と持ち掛けた企画だった。
貸し椅子
イギリスの海岸や公園に置かれている椅子は、お金を払って借りるシステムになっていることが多い。ジムは椅子を利用している人から料金を徴収する係なので「タダで日光浴させてなるものか」と、自転車で海岸や長い桟橋を走りまわっている。うっかり座っているとこのように料金徴収係がくるのでご注意を。
町を挙げての大歓迎
フランスから来た女優を歓迎するために、ゴームレーのお役人たちはさまざまなイベントを企画する。
ゴームレーの"英国一長い桟橋"をパレードしてり、ブラスバンドの楽隊が用意されていたり。演目はもちろん英国国歌"God Save the Queen"や、"Rule Britania"。
FFのためにフランスの文化を表した山車を用意していたが、ギロチンやら、わざと足の短さを強調したロートレックやら不愉快なテーマを出してきたので、彼女の怒りを買う。(注:画家のトゥールーズ・ロートレックは少年時代の事故が元で、脚の骨の成長が止まっていた。モンティ・パイソンのギリアムアニメにもロートレックの脚を揶揄したものがある)
ウォルター・ローリー卿のように・・・
FFの足元の水溜まりにウォルター・ローリー卿の真似をして、さっとマントを敷いてあげたゴームレー市長だったが、FFは・・・?!
ウォルター・ローリー卿とは、エリザベス一世時代の貴族で、女王の前の水溜まりに自分のマントをさっと広げて差し上げたという逸話で有名。(参考:『恋に落ちたシェイクスピア』)
Herne Bay, Kent, England
James Booth .... Jim (椅子係)
Alita Naughton .... Judy (Jimのガールフレンド・"自称"新聞記者)
Roy Kinnear .... Henry (イベント係)
Marisa Mell .... Francoise Fayol (フランスの女優)
Sandor Eles .... Vladek (Francoiseの婚約者)
Bryan Pringle .... Gormleigh市長
(1963年 イギリス 86分 B&W)
監督・脚本:Carl Prechezer
脚本:Peter Salmi/Tim Veglio
イングランドでも最高の波が期待できるコーンウォールは、サーフィンのメッカ。もうすぐ30歳になろうとするJCは、"そろそろサーフィンから卒業して落ち着いてほしい"という恋人のクロエの願いに頭を悩ませていた。そんな時にロンドンからJCの幼なじみ、ジョッシュ、ディーン。テリーの3人がコーンウォールにやってきて大はしゃぎ。やがてJCは"墓場(boneyard)"と呼ばれる危険なサーフポイントに誘われるが、クロエの気持ちを考えて断る。彼は10年前にそのポイントで成功した伝説的サーファーだったのだ。ところが仲間のディーンが無謀にもひとりで嵐が近づく"墓場"に挑んだことを知り・・・
サーファーたちの恋と友情を描いた青春ドラマ。「Blue Juice」とは、「青い波」という意味。Channel 4 Films制作。
コーンウォール
イングランド南西部の半島で、気候も温暖。北側の海岸線には岩場も多く、たしかに波も高そう。南側には砂浜も多く、海水浴に人気がある。
コーンウォールはアーサー王伝説ゆかりの場所が数多く残っていることでも有名(アーサー生誕の地といわれるティンタジェルなど)。テリーが子供時代に見ていたTV番組で、アーサー王の妃グイネヴィアを演じていた女優に、ティーハウスでばったり出くわすというのも面白い趣向。
この作品の舞台となった場所は、坂の多い町で、荒々しい岩場や萱葺屋根の家があったりして、コーンウォールらしい風景を存分に楽しめる。
カフェ「Aqua Shack」
海辺のカフェAqua Shackはサーファーたちの溜まり場。クロエは競売に出ているこのカフェを買い取り、JCとふたりで経営してゆきたいと願っていたのだが・・・この店の屋根には、大きく「Cream Tea」(後述)と書かれている。
トライフル
「トライフル」はイギリスで非常に人気のあるおやつで、スポンジケーキ、フルーツ、シェリー酒、カスタードクリーム、生クリームなどを器に入れ冷やし固めたもの。この作品にも何度かトライフルについての言及がある。
- JCとクロエ:朝食はトライフルにしようと言う。
- クロエの働くカフェにやってきた子供たちがトライフルが食べたいという。
- 「お夜食」と言って、クロエはJCの体に生クリームを塗り付け、スポンジやフルーツも載せてしまう。
クリーム・ティー(Cream Tea)
街で最高のクリーム・ティーを求めるTerryを、ジョッシュとディーンはツタの絡まる素敵なティーハウスに連れて行く。
"クリーム・ティー"とは、クリームを入れた紅茶のことではなく、「紅茶+クロテッドクリームとジャムを添えたスコーンの組合わせ」のこと。この地方をドライブしていると、道路脇に「Cream Tea」という看板が出ているのをよく見かける。コーンウォールは隣のデヴォン州と並んで美味しいクロテッド・クリームで有名な土地柄。コーンウォール産のクロテッド・クリームのことを、特に「コーニッシュ・クリーム」(デヴォン産はデヴォンシャー・クリーム)と呼ぶ。
Terryが連れてこられたティールームは、豪華なシャンデリアがあり、中世騎士の鎧が飾られていたりする優雅な雰囲気の店。運ばれてきたスコーンもよく膨らんでおいしそう。
タブロイド紙
ジョッシュの不倫スキャンダル記事が掲載されたのは「Daily Star」だった。
WebSite > The Daily Star : Internet Edition
Smuggler FM
ひょうきんなジングルとともに、時々流れてくる地元FM局の名前は「Smuggler FM」。「Smuggler」とは、「密輸入業者」という意味。コーンウォール半島は昔海賊や密貿易のメッカだったことを知っていると、思わずクスッと笑いがこぼれる名前だろう。
コーンウォールはケルト文化の色濃く残っている土地で、人を寄せ付けない洞窟や崖を利用して、昔は密輸入業者や海賊たちが活躍していた。ヨーロッパ大陸やアメリカとの交易も行われていたらしい。
コーンウォール(Gwithianなど)、カナリア諸島
Sean Pertwee .... JC
Catherine Zeta-Jones .... Chloe (JCの恋人)
Steven Mackintosh .... Josh Tambini (テクノ系レコード・プロデューサー)
Ewan McGregor .... Dean Raymond (ドラッグ売人)
Peter Gunn .... Terry Colcott (パブ経営)Heathcote Williams .... Shaper
Colette Brown .... Junior
Michelle Chadwick .... Sarah (Terryの婚約者)
Keith Allen .... Mike (タブロイド新聞記者)
Jenny Agutter .... Mary Fenton(Terryの憧れの女優)
(1995年 イギリス 99分)
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