監督・脚本:マイク・リー Mike Leigh
19世紀末、ヴィクトリア朝のロンドン。"ギルバート&サリヴァン"として数々の人気喜歌劇を世に送り出してきたウィリアム・ギルバートとアーサー・サリヴァン。
1884年1月、最新作『プリンセス・アイダ』に対する新聞の劇評に傷つき、サリヴァンはスランプに陥る。危機的状況を迎えた二人の関係を修復しようと周囲も気を揉むが、そう簡単には立ち直りそうも無い。
ある時、ギルバートは妻に誘われて訪れた日本の展覧会で目にした数々の日本舞踊や刀、扇子、日本女性たちからインスピレーションを膨らまし、日本を舞台にした作品『ミカド』の構想を得る。 しかし作品の完成にこぎつけるには様々な紆余曲折があって・・・
「Topsy-Turvy」とは「混乱、めちゃくちゃな様子」を指す言葉。 『プリンセス・アイダ』の評に「topsy-turvydom」などと書かれていたため、ギルバートは気分を害する。
作詞家William Schwenck Gilbert (1836-1911)と作曲家Arthur Seymour Sullivan (1842-1900)のコンビ"ギルバート&サリヴァン"。ふたりの出会いは1870年頃。
彼らの作品は主に、興行師Richard D'Oyly Carte(1844-1901)のプロデュースによる歌劇団がサヴォイ劇場で上演するために書かれた物で、いわゆる「サヴォイ・オペラ」とも呼ばれる。 1870年代はOpera Comic Theatreで上演されていたが、1881年にサヴォイ・シアターが完成して以来そちらで上演されるようになった。この劇場は、世界初の電気照明が付いた公共施設としても知られる。 ちなみに、ロンドンでも一、二を争う高級ホテル「ザ・サヴォイ」は、サヴォイ・シアターで財を成したリチャード・ドイリー・カートが創業したもの。
www.the-savoy-group.com映画『炎のランナー』Chariots of Fire(1981)にも『ペンザンスの海賊』を始めとして数多くのギルバート&サリヴァンの作品が登場する。
『ペイシェンス』はオスカー・ワイルドをモデルにした唯美主義者を主人公にした物語で、オスカー・ワイルドがアメリカに講演旅行に出かけたのも、『ペイシェンス』米国上演とのタイアップ企画としてドイリー・カートが声をかけたもの。
ギルバート&サリヴァンによる作品は以下の通り。
Thespis 1871年
Trial by Jury 1875年
Sorcerer 1877年
H.M.S. Pinafore 1878年
Pirates of Penzance 1879年
Patience 1881年
Iolanthe
Princess Ida
Mikado 1885年
Ruddigore 1887年
Yeomen of the Guard 1888年
Gondoliers 1889年
Utopia Limited 1893年
Grand Duke 1896年
ミカドの息子ナンキプーは年上のカティシャとの縁談を嫌がって、さすらいの音楽家に身をやつして宮廷から逃げ出す。 そして美しい娘ヤムヤムに出会って恋をするが彼女には後見人のココという婚約者がいて・・・
「宮さま、宮さま、お馬の前にぴらぴらするのは何じゃいな」等日本語の歌詞もあり
ミカド(帝)
ナンキプー(放浪の吟遊詩人、実は皇太子)
ヤムヤム(ナンキプーが一目惚れする娘)
ピッティ・シン(ヤムヤムの姉妹)
ピープブー(ヤムヤムの姉妹)
カティシャ(ナンキプーに恋する年上の女)
ココ(ヤムヤムの後見人)
ピシュタシュ(貴族)
プーバー(なんでも大臣)
19世紀後半のイギリスでは、ちょうど日本に対する関心が高まっていた。これは明治時代に入り鎖国を解いた日本の文化や芸術品が欧米に紹介され始めたという時代的背景があり、これに各国で開かれるようになった万国博覧会が拍車をかけ、一大ブームとなった。アーツ&クラフツ運動への影響、ホイッスラーの絵画など、随所にその影響が見られる。
ギルバートが妻と一緒に見に行った日本展は、ロンドンの高級ショッピング街ナイツブリッジのHumphrey's Hallで開催されていた。 剣道、手仕事(糸紡ぎ)や書道などの実演、歌舞伎、日本舞踊などが行われている。 ギルバートはここで日本刀を手に入れ、部屋に飾っていた。(夜中に壁にかけた日本刀が落ちるのをきっかけに『ミカド』の構想を得る。)
役者たちが着ていたキモノはリバティ(ロンドンの繁華街リージェント・ストリートにある高級デパート)のものだという台詞が。
服装や家具調度など、典型的なヴィクトリア朝の風俗に注目。 この時代はコルセットが必需品だったので、役者たちは着物を着るに当たってコルセットを外すのを嫌がる。
ヴィクトリア朝は娼婦の数が爆発的に増えていた時代で、ギルバートも裏通りで年老いた娼婦に付きまとわれる。
登場人物たちはことあるごとにお茶を飲んでいる。ティーカップにも注目。
根を詰めて仕事をしているギルバートのもとに、夜食として「beef tea」が運ばれて来る。beef teaはさいの目に切った牛肉に水を加えて煮込んで漉し、塩味をつけたスープのようなもの。
(Savoy Theatreとして)
Richmond, Surrey TW9 1QS
米アカデミー賞:
2部門受賞(衣装賞、メイクアップ賞)、2部門ノミネート(脚本賞、美術装置賞)英アカデミー賞(BAFTA):
メイクアップ賞受賞、4部門ノミネート(最優秀英国映画賞、主演男優賞、助演男優賞、脚本賞)ヴェネチア国際映画祭:
主演男優賞(ジム・ブロードベント)受賞イブニングスタンダード英国映画賞:
作品賞、主演男優賞(ジム・ブロードベント)受賞
Allan Corduner .... Arthur Sullivan
Jim Broadbent .... William Schwenck 'Willie' GilbertRon Cook .... Richard D'Oyly Carte(興行主)
Wendy Nottingham .... Helen Lenoir(秘書・後にRichardの妻となる)[Sullivanの周辺]
Eleanor David .... Fanny Ronalds(Sullivanの愛人・米国人)
Dexter Fletcher .... Louis(Sullivanの執事)
Sukie Smith .... Clothilde(Sullivanのメイド)[Gilbertの周辺]
Lesley Manville .... Lucy Gilbert (愛称'Kitty' Gilbertの妻)
Charles Simon .... Gilbertの父
Eve Pearce .... Gilbertの母
Theresa Watson .... Maude Gilbert (Gilbertの妹)
Lavinia Bertram .... Florence Gilbert (Gilbertの妹)
Kate Doherty .... Mrs Judd(Gilbertのメイド)
Kenneth Hadley .... Pidgeon(Gilbertの召使)
Keeley Gainey .... Maidservant[役者たちとその周辺]
Timothy Spall .... Richard 'Dickie' Temple (ミカド役の俳優)
Kevin McKidd .... Durward Lely (ナンキプー役の俳優・スコットランド人)
Martin Savage .... George Grossmith(ココ役の俳優)
Shirley Henderson .... Leonora Braham(ヤムヤム役の女優)
Dorothy Atkinson .... Jessie Bond(Pitti-Sing役の女優)
Amanda Crossley .... Emily(Jessieのメイド)
Cathy Sara .... Sybil Grey(Peep-Bo役の女優)
Louise Gold .... Rosina Brandram(Katisha役の女優)
Vincent Franklin .... Rutland Barrington(プーバー役の俳優)
Michael Simkins .... Frederick Bovill(ピシュタシュ役の俳優)[スタッフ]
Sam Kelly .... Richard Barker (舞台監督)
Stefan Bednarczyk .... Frank Cellier (音楽監督)
Nicholas Woodeson .... Mr Seymour(Production Manager)
Roger Heathcott .... Banton(Stage Doorkeeper)
Alison Steadman .... Madame Leon(衣装デザイナー)
Jonathan Aris .... Wilhelm(Costumer)
Andy Serkis .... John D'Auban(振付師)
William Neenan .... Cook(Floor Manager)
Francis Lee .... Butt
Adam Searle .... Shrimp(Call Boy)Miss 'Sixpence Please' を演じたモリ・ナオコは映画『スパイス・ザ・ムービー』Spice World (1997) やTVシリーズ『Absolutely Fabulous』等にも出演
Gilbert and Sullivan Archive
http://diamond.boisestate.edu/gas/『喜歌劇ミカド―十九世紀英国人がみた日本』
W.S.ギルバート (著)中央公論新社 (2002/08)『オペラ 101物語』新書館(1997/9)
NHK-BSで2004年2月4日初放映、劇場未公開
海外盤DVD
US盤(リージョン1)/UK盤(リージョン2・PAL)書籍
_Topsy-Turvy_ by Mike Leigh(1999年 イギリス 160分)
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