タイトル*れ
監督:ケン・ローチ
脚本:Jim Allen
舞台はイングランド北部。 定職もなく日々の生活費にさえ困っているボブ。7歳になる愛娘の初めての聖餐式(コミュニオン)の支度を整えてやるために、危険なレイヴ・ディスコの警備員から、下水掃除まで職を求めてなりふりかまわず働く。ところが式も間近に迫ったある日、悪徳高利貸の男が現れ・・・愚かなまでに純粋な家族愛、誇り、宗教、罪・・・果たして無事に聖餐式を迎えられるのか?
カトリックの儀式のひとつ。ワインをキリストの血、パンをキリストの肉に見立て聖体拝領を行う。実際はパンの代わりに500円玉大の丸いウエファースのようなものを口に入れてもらう。→映画『司祭』参照
聖餐式は一生の記念になるものだからと、身分不相応なほどに高価なドレス一式を揃える。ドレス、ヴェールや頭飾りで115ポンド、靴が20ポンドほど。後に買う仕事用の中古車が260ポンドだったことから考えてもたいへんな額だ。 車の半額もするドレスなんて! Bobの経済状態を心配した神父は教会にある新品同様のドレスを貸そうと申し出てくれるが、あくまで誰も袖を通していない新品をあつらえることにこだわる。ドレス一式だけでなく、記念撮影や花、御馳走の用意などなにかと出費がかさむ。神父いわく「中流階級の親はあまり金をかけないのに」
敬虔なカソリック信者らしく、棚には陶器製のマリア像が飾ってある。(*一般的なイギリス人、すなわちカソリックでなく英国国教会の信徒は宗教心が薄い)
Bobの妻Anneは、避妊のためにピルを飲むことに罪の意識を感じている。カソリックの教えを厳格に解釈すると、堕胎はもちろん避妊も罪なのである。
Anneの父はカソリック信仰には懐疑的。「宗教は人間から考える力を奪ってしまう」
Anneは娘コリーンと一緒に自宅でミンスパイを作っている。(*字幕では直訳で「ひき肉のパイ」となっていたが)何世紀も昔はひき肉を長持ちさせるためにスパイスやドライフルーツを加えて作っていたが、時代が下るにしたがって挽肉の割合は減ってゆき、現在は「Mince Pie」といっても中身がドライフルーツのみのものを指すのが普通。クリスマスに食べられる。
マトン肉を売りに行ったパブでは、中央の扉を境に中流階級向けの「サルーン」と労働者向けの「バー」に分かれていた。客層も雰囲気も全く違う。仕事のあと一息ついたBobとTommyがビターとミートパイを頼むのはもちろん「バー」のほう。
Anneの父がBobに言った台詞「毎日氷雨が降っているようなものさ("Raining stones, seven days a week")」
石礫が降ってくるような辛い状況のこと。失業した上に車まで盗まれさらに不幸に見舞われるBobの辛い毎日を端的に表わしている。
カンヌ映画祭審査員賞
Middleton, England
Bruce Jones .... Bob
Julie Brown .... Anne (Bobの妻)
Gemma Phoenix .... Coleen (Bobの娘)
Ricky Tomlinson .... Tommy (Bobの親友)
Tom Hickey .... Barry神父
Mike Fallon .... Jimmy (Anneの父・家主協会で働く)
Ronnie Ravey .... 肉屋
Lee Brennan .... アイルランド人
Karen Henthorn .... Young Mother
Christine Abbott .... May (Tommyの妻)
Geraldine Ward .... Tracey (Tommyの娘)
William Ash .... Joe
Matthew Clucas .... Sean
Jonathan James .... Tansey (高利貸)
Anthony Bodell .... Ted
Bob Mulane .... Ted's Mate
Jack Marsden .... Mike (ディスコ店員)
Jimmy Coleman .... Dixie (芝堀りの首謀者)
George Moss .... Dean
Tony Little .... Cliff
Derek Alleyn .... Factory Boss
書籍:『ケン・ローチ』グレアム フラー(編)
フィルムアート社 単行本(2000/10/01)
(1993年イギリス90分)
監督:ケン・ラッセル
原作:D.H.ロレンス原作はD・H・ロレンスの小説。ヴィクトリア朝時代の平凡な片田舎に育った奔放な少女アーシュラは、慣習に染まらない自由な女性ウィニフレッドとの出会いや、軍人・アントンとの恋などを経験して、人間的成長を遂げてゆく。
撮影はBorrowdale(湖水地方北部)や湖水地方のケズウィック、オックスフォード州のThe Sue Ryder Home。壁紙がウィリアム・モリスだったり、柳の皮で作ったカゴが使われていたり、アルバムの写真をクリモス(ヴィクトリア時代に流行した精密な印刷を施したモチーフ)を飾っていたり・・・と細かいところでも楽しませてくれる。炭鉱で財を成した人物が登場するのも当時の時代背景。
個性を尊重する教育としてもてはやされている現在のイギリスの学校とは対照的に、ヴィクトリア朝の子供の扱いは悲惨だったらしい。この映画の小学校でもきつい体罰が平気で行われているし、怖い教師におびえて子供はびくびくしている。
Borrowdale(湖水地方北部)
湖水地方のケズウィック
オックスフォード州のThe Sue Ryder Home。
Sammi Davis .... Ursula Brangwen
Paul McGann .... Anton Skrebensky (Ursulaが好きになる兵士)
Amanda Donohoe .... Winifred Inger (Ursulaの体育教師・バイセクシュアル?)
Christopher Gable .... Will Brangwen
David Hemmings .... Uncle Henry
Glenda Jackson .... Anna Brangwen
Dudley Sutton .... MacAllister
Jim Carter .... Mr Harby
Judith Paris .... Miss Harby
Kenneth Colley .... Mr Brunt
Glenda McKay .... Gudrun Brangwen
Mark Owen .... Jim Richards
Ralph Nossek .... Vicar
Nicola Stephenson .... Ethel
Molly Russell .... Molly Brangwen
Alan Edmondson .... Billy Brangwen
Rupert Russell .... Rupert Brangwen
Richard Platt .... Chauffeur
Bernard Latham .... Uncle Alfred
John Tams .... Uncle Frank
Zoe Brown .... Ursula (少女時代)
Amy Evans .... Baby Gudrun
Sam McMullen .... Winifredの赤ちゃん
(1989年 イギリス 112分)
監督:トレバー・ナン
原作:Chris Bryant
16世紀中ごろのチューダー王朝のイギリスが舞台の歴史もの。 宗教問題に絡む王位継承をめぐる権力争いに巻き込まれ、わずか9日間の女王となった後に処刑された16歳のジェーン・グレイとその夫ギルフォード・ダドリーを描いた物語。 出会った当初は反発しながらもお互いに愛し合うようになり、この国をより良くしようと理想に燃えながらも運命に翻弄されて散った、若いふたりのあまりに早すぎる死。 ロンドン塔の中庭はこの悲劇の女王が処刑された場所としてあまりにも有名。
ヘンリー八世が王妃アン・ブーリンと離婚の際にローマ・カソリック教会と決別して以来、イギリスは英国国教会の国になっていた。ヘンリー八世の息子、15歳のエドワード六世は病弱だったので、摂政のノーサンバーラント公ジョン・ダドリー卿は次の王位は誰にしようかと、策略を巡らしていた。 ヘンリー八世の長子(エドワードの姉)メアリーが最有力だが、彼女の母親は旧教国スペインの王女で、メアリー自身もコチコチのカトリック教徒。 自分たちの既得権益を守るためにも、メアリーに王冠を渡すことだけは何とかして阻止しなければならない。ダドリーはヘンリー八世の妹(サフォーク公夫人)の孫娘ジェーン・グレイにひそかに白羽の矢を立て、自分の末の息子ギルフォードと結婚させる。臨終の床にあるエドワード六世に後継者はジェーンを指名させる遺言状を書かせ、ジェーンが女王の座に即くことになった。
*ヘンリー八世の6人の妻と子どもたち:
キャサリン・オブ・アラゴン(離婚)・・・娘・メアリー一世
アン・ブーリン(処刑)・・・娘・エリザベス一世
ジェーン・シーモア(産後に死亡)・・・息子・エドワード六世
アン・オブ・クレーブス(離婚)
キャサリン・ハワード(処刑)
キャサリン・パー(ヘンリーの方が先に死亡)
父はサフォーク公(1551年ドーセット侯爵からサフォーク公爵に)Henry Grey、母Francesはヘンリー七世の孫(ヘンリー八世の妹メアリーの娘)なので、ジェーンはヘンリー7世の曾孫(ヘンリー8世の妹の孫娘)ということに。
1553年3月にノーサンバーランド公ジョンダドリーの息子ギルフォードと結婚。 同年7月6日にエドワード六世が崩御し、その3日後の7月9日に後継者とされ翌日女王として即位する。しかしまもなくヘンリー八世の長女メアリーと彼女を擁立するカトリックの大貴族である第三代ノーフォーク公側の巻き返しにあい、「9日間の女王」として翌年2月ロンドン塔タワー・グリーンにて処刑された。
1546年にウォリック伯、1551年にノーサンバーランド公となる。1553年四男のギルフォードをレディ・ジェーン・グレイと結婚させ、エドワード6世の死後女王に擁立したが失敗、メアリー一世に処刑される。(ロンドン塔タワー・ヒルにて)
37歳で王位に即いたメアリー一世は、かねてからの望みであった若きスペイン国王フェリペ二世と結婚し、プロテスタントを弾圧した。
メアリーの後に女王となったエリザベスがジョン・ダドリー卿の息子レスター伯ロバート・ダドリー(ギルフォードの兄)と愛人関係になったのは面白い。(参考:『エリザベス』)
ジェーンは「イングランド、アイルランド、およびフランスの女王」という名目で即位した。この頃フランスのカレーは英国領で、スコットランドはまだ併合されていなかったからである。
処刑にあたって目隠しされたジェーンが首を乗せるための台を探す場面があるが、あれはジェーン・グレイの処刑を描いた有名な絵画にインスパイアされたものだろう。実際に彼女が処刑されたのは、ロンドン塔のTower Greenで、同じ場所でヘンリー8世の二番目の妻アン・ブーリンも処刑されている。
Dover Castle, Kent(ロンドン塔として)
Leeds Castle, Kent, ME17 1PL
http://www.leeds-castle.comHever Castle, Kent
Broughton Castle, Oxfordshire
Chastleton House, Oxfordshire
Compton Wynyates, Warwickshire
Haddon Hall
Chatsworth House
Little Moreton Hall, Cheshire
Helena Bonham-Carter .... Lady Jane Grey
Cary Elwes .... Guilford Dudley (John Dudleyの3男・ジェーンの夫)
John Wood .... John Dudley ( Nothumberland公爵 国王の相談役)
Michael Hordern .... Doctor Feckenham (メアリー付きの神父)
Jill Bennett .... Mrs Ellen (ジェーンのお目付け役)
Jane Lapotaire .... Princess Mary (のちのメアリー一世)
Sara Kestelman .... Frances Grey (Suffolk 公爵夫人・ジェーンの母)
Patrick Stewart .... Henry Grey (Suffolk 公・ジェーンの父)
Warren Saire .... Edward 6世 (ヘンリー8世の息子・メアリーの弟)
Lee Montague .... Renard (スペイン大使)
Richard Vernon .... Winchester 侯爵
Richard Johnson .... Arundel 伯爵
Guy Henry .... Robert Dudley (John Dudleyの長男)
Andrew Bicknell .... John Dudley (John Dudleyの次男)
国内版VHS廃番
輸入版VHS(字幕なし)注文可『とびきり愉快なイギリス史』
ジョン・ファーマン (著), 尾崎 寔 (翻訳) ちくま文庫 (1997/04/01) 筑摩書房『英国王室史話』(上)
森 護・著/中公文庫
王室にまつわるさまざまなエピソードをわかりやすく紹介している。
(1985年 イギリス 141分)
#この紹介文、歴史的背景解説、キャラクター紹介を無断で転載しているサイトがありますが、引用元はこちらであることを宣言いたします。
監督:ケン・ローチ、脚本:Rona Munro
南米パラグアイからの政治亡命者ホルヘ(ジョージ)は、パブで歌っていた女性マギーに声をかける。彼女の歌に滲み出る悲しみに触れ、その心の痛みを理解し癒してやりたいと感じたのだ。最初は頑なだったローズもジョージに少しずつ心を開き、愛する4人の子供たちを失った経緯を語り出す。
マギーにはそれぞれ父親の違う子供が4人(Sean, Micky, Serena & Mary)おり、当時の恋人サイモンの暴力から逃れるため子供たちとアパートに隠れ住んでいた。ある晩マギーが子供たちをおいてパブで歌っている間に家が火事に見舞われ、長男ショーンは大火傷を負う。母親失格の烙印を押され、ショーンは社会福祉局によって強制的に養子に出され、のちに残る3人の子供たちとも引き離されてしまう。
子供たちとの別離の傷は癒えないながらも、ジョージと愛し合うようになったマギーはやがて妊娠。ところが彼女の前歴から、ソーシャル・ワーカーによって再び子供は次々と奪われてしまい・・・
1980年代に制定。親が子供(17歳未満)を育てられないと判断された場合、地方自治体が要保護児童として保護することになっている。現在でも、11歳以下(?)の子供をおいて親が外出することは違法である。小学校への通学もスクールバスの停留所までは親がつきそうのが一般的。(日本の子供のようにひとりでぶらぶらと寄り道しながら帰るなど考えられないそうだ)
マギー自身の両親も喧嘩が絶えず、父は母に暴力をふるいマギーにも性的虐待を加えるありさまだったが、当時は児童保護法がなかったので、マギーはただ耐えるしかなかった。ところが今度はマギーがこの法律のせいで子供を奪われることになる。子供の福祉(生育環境)を優先するあまり、母親の感情に注意を払わない社会福祉局の官僚主義を描いたこの作品は、イギリスで大反響を巻き起こした。
タイトルはマザーグースの詩による。イギリスの子供は指先にテントウムシをのせ、この歌を呪文のように唱えてからフッと吹き飛ばす。
Ladybird,
Ladybird, Fly away home, Your house is on fire And your children all gone ; All except one And that's little Ann And she has crept under The warming pan. |
てんとうむし
てんとうむし とんでお帰り おうちが 火事だ こどもたちはみんな逃げた あとにのこるは ひとりきり ちっちゃなアンが ひとりきり アンはこたつに はいこんだ |
裁判の場面で隣人の老婆Mrs Higgsの供述によると、「35 Marlborough Ct.」−−−ロンドン北部EnfieldTown BushHillの中間くらいに位置する。
ショーンの養母に「チップスにケチャップをかけないで」などと細かいことまで干渉する。引き取った家は裕福なようで、蛇口のついた木の家具のある素敵な子供部屋にショーンを寝かせている
マギーはアイルランド移民の多いリバプール出身。名字はコンランということからもアイルランド系なのではないかと思われる。息子の「Sean」や「Mickey」という名も非常にアイルランド的響きが強い。
JorgeはMaggieの傍にいるためにVisaが切れても英国に留まるが、職探しに訪ねたファーストフード店「Southern Chicken」では労働許可証がない弱みに付け込まれて時給2ポンドという低賃金で働くことになる。Jorgeと移民局とのやり取りも。
冒頭のマギーが歌っているのは、ジャニス・ジョップリンをモデルにした映画『ローズ』(1979年アメリカ・ベット・ミドラー主演)のテーマソング。
ベルリン映画祭女優賞:Crissy Rock
Crissy Rock .... Maggie Conlan
Vladimir Vega .... Jorge (パラグアイ人の亡命者)
Sandie Lavelle .... Mairead (Maggieの姉)
Mauricio Venegas .... Adrian
Ray Winstone .... Simon (Maggieの元恋人)
Claire Perkins .... Jill (Maggieの友人)
Jason Stracey .... Sean (Maggieの長男)
Luke Brown .... Mickey (Maggieの次男)
Lily Farrell .... Serena (Maggieの長女)
Scottie Moore .... Maggieの父
Linda Ross .... Maggieの母
Pamela Hunt .... Pamera Higgs (隣人)
James Banton .... "Southern Chicken"店長
Christine Ellerbeck .... Moira Denning
書籍:『ケン・ローチ』グレアム フラー(編)
フィルムアート社 単行本(2000/10/01)
(1994年 イギリス 102分)
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