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タイトル*し


『ジェイン・エア』Jane Eyre (1996)

監督:Franco Zeffirelli
原作:Charlotte Bronteの同名小説で、これが6度目の映画化。

幼くして両親を失ったジェイン・エアは、母方の叔父(故人)の妻リード夫人に引き取られるが、冷酷な叔母はジェインを孤児のための寄宿学校・ローウッド校に送って厄介払いをする。 ローウッド校での過酷な10年の生活ののちに、ジェインはそこを出てヨークシャーのソーンフィールド館で家庭教師の職を得る。どことなく暗い影のあるロチェスター卿に次第に惹かれていくジェーンだったが、やがて驚くべき真実が・・・?

11歳でアカデミー助演女優賞(「ピアノ・レッスン」)を受賞したアンナ・パーキンがジェインの少女時代を演じて話題に。

Check

原作者:シャーロット・ブロンテ

Charlotte Bronte(1816-1855)

英国国教会牧師の三女として生まれる。妹エミリー・ブロンテ(1818-1848)は『嵐が丘』を、妹アン・ブロンテ(1820-1849)は『アグネス・グレイ』をそれぞれ著す。 シャーロットの『ジェイン・エア』は1847年にロンドンで出版され、大反響を呼ぶが、当時妹たちの作品はほとんど省みられることは無かった。

作者であるシャーロット・ブロンテやその妹エミリ・ブロンテの生涯については映画『ブロンテ姉妹』で描かれている。

ガヴァネス(家庭教師)という職業

ガヴァネスとは、主に住み込みで上流から中流階級の子供の教育にあたった女性家庭教師のこと。19世紀のイギリスでは、働いて収入を得る女性はレディではないと見なされており、未婚の女性がレディの体面を保ちつつ就ける仕事はガヴァネス以外にはなかったとか。ジェインはフランス語、ピアノ、数学、絵画とさまざまな教養を身につけた女性として描かれている。 ローウッド校で二年間教師として働いていた経験を生かすには絶好の場。

ジェインがソーンフィールド館に来た時、フェアファクス夫人は「これでやっと対等に話せる相手が出来た」と喜ぶ。フェアファックス夫人にとって、ジョン&レアの夫婦や、グレイスのような使用人たちは格下の使用人として認識されている。

一方で、ソーンフィールド館のパーティに招かれた客人たちのガヴァネスに対する偏見は強い。 ロチェスター卿に色目を使うブランチ嬢は「ガヴァネスなんて不器量な女性ばかり」と、そしてその母親も「ガヴァネスのことなんて、考えるだけで頭が痛くなる」と。

ガヴァネスが登場する映画:
『ジェイン・エア』Jane Eyre (1996) ガヴァネスが当主と結ばれる。作者のシャーロット・ブロンテ自身もガヴァネスの経験あり。
『ファイアーライト』 Firelight (1997) 主人公であるガヴァネスと当主とのロマンス。
『エマ』Emma(1996) エマが慕うMrs Westonも元ガヴァネス。

参考文献:『ガヴァネス ヴィクトリア朝の<余った女>たち』川本静子・著/中公新書
サッカレー『虚栄の市』、シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』、ヘンリー・ジェームズ『ねじのひねり(ねじの回転)』など、イギリス小説に登場するガヴァネスを題材に歴史的背景をわかりやすく解説した本。たいへん興味深く読めるのでおすすめ。

その他

ソーンフィールド館の古びていながらも由緒ありげな調度品の数々が目を引く。大きなタペストリーが見事。

 

ロケ地

ハドン・ホール(Haddon Hall, Derbyshire)

建築されて600年以上たつ中世の城で、そのタペストリーは有名。ワイ川を見下ろす堂々とした外観を誇る。ミントンの陶器「Haddon Hall」が誕生したところとしても有名。
Haddon Hall, Bakewell, Derbyshire DE45 1LA TEL : 01629 812855

www.haddonhall.co.uk

 

Wingfield Manor

15世紀半ばの邸宅で、1569年にはスコットランドの女王メアリーが幽閉されたことも。1770年以降廃虚になった。
Wingfield Manor, Wingfield, Derbyshire TEL : 01773 832060

www.english-heritage.org.uk

Brimham Rocks, North Yorkshire

Hathersage, Derbyshire

「モートン村」の背景となったのはこのピークディストリクト地方の小さい村。ここの教会の墓地にはロビンフッドの仲間リトル・ジョンが埋葬されているという言い伝えが。

 

キャスト

Anna Paquin .... Jane Eyre (少女時代)
Fiona Shaw .... Mrs Reed (ジェーンの叔父の妻)
John Wood .... Mr Brocklehurst (ローウッド校の校長)
Geraldine Chaplin .... Miss Scatcherd (ローウッド校の厳しい教師)
Amanda Root .... Miss Temple (ローウッド校の優しい教師)
Leanne Rowe .... Helen Burns (ジェーンの唯一の友達)

Charlotte Gainsbourg .... Jane Eyre
William Hurt .... Edward Fairfax Rochester (ソーンフィールド館の当主)
Joan Plowright .... Mrs Fairfax (ソーンフィールド館の女中頭)
Josephine Serre .... Adele (ロチェスター卿の元恋人の娘)
Billie Whitelaw .... Grace Pool (ソーンフィールド館の使用人・バーサの世話係)
Richard Warwick .... John (ソーンフィールド館の使用人・Leahの夫)
Judith Parker .... Leah (ソーンフィールド館の使用人・Johnの妻)

ソーンフィールド館の客人たち
Elle Macpherson .... Blanche Ingram (イングラム卿の娘)
Miranda Forbes .... Lady Ingram
Chris Larkin .... Frederick Lynn
Ann Queensberry .... Lady Lynn
Simon Beresford .... Henry Eshton
Sheila Burrell .... Lady Eshton

Edward De Souza .... Richard Mason (Berthaの兄)
Maria Schneider .... Bertha (ロチェスター卿の妻)
Peter Woodthorpe .... Briggs (弁護士)

Fiona Shaw .... Mrs Reed (ジェインの意地悪なおば)
Samuel West .... St. John Rivers (教区牧師)
Charlotte Attenborough .... Mary Rivers (牧師の妹)

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0116684

Project Gutenberg: Jane Eyre:テキスト原文

 

(1996年 イギリス 113分)


『司祭』Priest (1994)

監督:アントニア・バード
脚本:ジミー・マクガヴァン

Story

舞台はリバプールの貧しい教区にあるカトリック教会。司祭としての理想に燃える新任の若き神父グレッグは、もう一人の神父マシューが労働党のプロパガンダのような説教をしたり、彼が(聖職者として禁じられているにもかかわらず)愛人と一緒に住んでいることで衝突したりする。

ある日グレッグは14歳のリサから父親に性的虐待を受けているという告悔を聞くが、どうすることもできない神父としての立場に思い悩む。(信者の告悔の秘密は漏らしては行けないというかたい掟がある) 一方で彼自身も聖職者でありながら、ゲイ・クラブで知り合った青年グレアムと関係を持つようになっており、自分の立場と性的嗜好の板挟みになって悩んでいた。

やがてリサと父親の関係は偶然母親の知るところとなり、事実を知りながら黙っていたグレッグは激しく責められる。その辛さに耐えかねて訪ねていったグレアムと車の中で密会しているところを、運悪く警察に逮捕され新聞沙汰になってしまう・・・本当の愛とは、魂の救済とは何かを問い掛ける問題作。

 

Check!

カトリック

全米公開の際にカトリック教会から抗議運動が起きたといういわくつきの作品だが、正直言って、問題となった神父が同性愛者であるというスキャンダラスな設定よりも、カトリックの教義そのものに対する問いかけのほうが大きなウェイトを占めていたような気がする。

司教の屋敷は広く安楽な暮らしをしており、教区の住民が清掃奉仕をしているおかげで美しく保たれている。当の司教も体面ばかり気にする人物で、問題を起こしたグレッグを自分の担当地区から追放し、自分を批判したマシュー神父に陰湿な嫌がらせをする。一般のカトリック信徒たちも、スキャンダルを起こしたグレッグを責め、非難する。ヨハネ書にも「罪なき者が石を投げよ」とあるのに・・・結局彼の痛みを理解できたのは、マシュー神父と父親の暴力に傷ついたリサだけだった。

イギリスでは英国国教会の信徒がほとんどを占め、カトリックは小数派なのだが、アイルランド系移民が多いリバプールではカトリック信徒が多い。ゲイクラブで知り合ったグレアムもカトリックだった。リバプールには英国国教会と、カトリック教会のふたつの大聖堂があることで有名。

How dear you do this, call yourself Catholics! (それでも自分をカトリックと呼べるのか)」・・・「catholic」という言葉には、「旧教の」という意味の他に小文字で表記すると「普遍的な」「心が広い、包容力がある」という意味もある。だからマシュー神父は、グレッグを一方的に責めるばかりの"心が狭く包容力のない"人々に対し、こう叫んだのである。

「罪なき者が石を投げよ」

ヨハネ書8章「姦通の女」のエピソード。律法学者やパリサイ派の人々が姦通を犯した女をとり囲んで「モーセは姦通をした女は石で撃ち殺せと律法の中で命じている」と、通りかかったイエスを試すために問い掛けた。するとイエスは「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まずこの女に石を投げなさい」と答えたので、集まっていた人々はひとりまたひとりと立ち去ってしまった。自分たちのことを棚に上げて他人を非難することの愚かしさをさとしている。

「近親相姦の権利を大金で売ったアレキサンドロ6世」

開き直ったリサの父親が例に挙げたこの法王アレキサンドロ6世(ロドリーゴ・ボルジア)は、かのチェーザレ・ボルジアとルクレツィア・ボルジアの父親として知られる。(聖職者は結婚、ましてや子どもを作るなんて御法度なのにも関わらず)
彼は法王の選挙のときにも有力者を金で買収し、数々の愛人を持ったため、「最も肉的なキリスト(il piu carnale Homo)」とあだなされた。

聖体拝領の儀式

カトリックで行われる聖体拝領の儀式は、キリストがワインを自分の血、パンを自分の肉にたとえたことからはじまったもの。パンといっても500円玉大のウェファースのようなものだが。カトリック教徒の方はもちろんご存知だろうが、海外旅行などで教会のミサを見学した方ももしかしたらご覧になったことがあるかもしれない。

子供は満7歳になった頃に「初聖体拝領式」を行う。女の子は白いドレス、白いヴェールをかぶって、男の子もおしゃれをする。この作品のなかにも初聖体拝領式に出席する子供たちが行進する場面がある。

タバコ

「一日に煙草を10本は吸う」という女生徒に対し、どうやって煙草を買うお金を捻出しているの問いただすグレッグ。イギリスではタバコにかかる税率が非常に高く、中学生の女の子がそんなお小遣いを持っているとは考えにくいからだ。

すさんだ街

舞台はリバプールの中でも特に貧しい地域のようで、家庭訪問に出かけた先のビルには壁に大きく「IRA」とスプレーで落書きがあるうえに、エレベーターの中で立ち小便する男までいた。リバプールは地理的にアイルランドへの玄関口で、住民の3〜4割はアイルランド系。ゆえにカトリック信者も多く、イギリスには珍しくひとつの町に二つの大聖堂(英国国教会とカトリックの)がある。

Meat is Murder 〜食肉は殺人だ〜

グレッグが身を寄せた先の奥さんは「Meat is Murder」と大書されたエプロンをつけていた。「今晩のおかずは”死んだ豚”よ」と言っていたところをみると、この女性も家畜を殺すことに罪の意識を感じ反対する主義の人なのだろう。1980年代イギリスでカリスマ的人気を博したロック・バンド「The Smiths」も「Meat is Murder」というタイトルのアルバムを出していたことをご存知の方も多いだろう。

"Bugger the Bishop"

偽善的で無慈悲な司教のことを話題にした時に、マシュー神父は「Oh, Bugger the Bishop(あのくそったれ司教め)」とののしる。 「Bugger」というのは人を罵る時によく使われる言葉だが、原義は「男色行為をする」というスラングから来ている。 それを聞いていたグレッグ神父に対し笑いながら「Don't take that literally. (文字通り取るなよ)」と言ったのは、「別に司教にXXしろって言っているわけじゃないぞ」というちょっときついジョーク。

新聞

グレッグの購読する新聞「The Times」を、マシューは「社主が好かん(= I despise Mardoc.)」と敬遠する(→「The Times」はメディア王ルパート・マードックに買収された)。

マシューは教会の説教でもサッチャー政権を批判するようなバリバリの労働党寄りの人物なので、新聞は進歩的な層が好む「The Guardians」を読む。「The Times」にしろ「The Guardians」にしろ、”クオリティ・ペーパー”と呼ばれる知的水準が高い層に好まれる新聞で、庶民が好む「The Sun」などのタブロイド紙とは一線を画す。

グレッグのスキャンダルに群がってきたのもタブロイド紙の記者たちのようで、「Liverpool Echo」という新聞には、彼の事件について一面に刺激的な見出しがおどっていた。

WebSite> Liverpool Echo

You'll never walk alone

ラストシーンで流れる「You'll never walk alone」はミュージカルナンバーですが、リヴァプールFCの有名な応援歌でもあります。(情報提供:Jumiさん) Liverpool F.C.

 

ロケ地

リバプール、ロンドン、マンチェスター

Blundellsands, Liverpool(グレッグとグレアムが話しているときに少年がコーヒーポットを奪いに来た場面)

Liverpool
ホープ・ストリート・・・グレッグとグレアムが偶然再会してしまう通り
駅近くのウォーカー美術館や博物館のある建物の前・・・グレッグが裁判で有罪を認めたあと、新聞記者に付きまとわれながら歩いている場所(情報提供:Jumiさん)

 

キャスト

Linus Roache .... Father Greg Pilkington
Tom Wilkinson .... Father Matthew Thomas
Robert Carlyle .... Graham (グレッグ神父の恋人)
Cathy Tyson .... Maria Kerrigan (マシュー神父の恋人)
Lesley Sharp .... Mrs Unsworth (リサの母親)
Robert Pugh .... Mr Unsworth (リサの父親)
James Ellis .... Father Ellerton
Christine Tremarco .... Lisa Unsworth (父親に暴行されていた少女)
Paul Barber .... Charlie (グレッグのジム仲間)
Rio Fanning .... Bishop

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0110889

Video

DVD

(1994年 イギリス 109分)


『シド&ナンシー』Sid and Nancy (1986)

監督・脚本=アレックス・コックス
音楽=ジョー・ストラマー、ザ・ポーグス、プレイ・フォー・レイン

Story

1970年代後半のパンク・ムーヴメントの立役者、セックス・ピストルズにベーシストとして途中から加入したシドは、ヴォーカルのジョニー・ロットンと人気を二分するほどの存在になってゆく。 そんなときに出会ったのが、ニューヨーク・ドールズのグルーピーをしていたというアメリカ娘、ナンシー・スパンゲンだった。

挑発的なバンドの姿勢は世間の非難の的となり、バンドの成功に伴って手に入れた名声とドラッグは次第にシドの心と体を蝕み始める。 彼の才能を信じて支えようとするアメリカ娘ナンシーとの激しく破滅的な恋はやがて悲劇的な結末を迎えることに・・・

伝説的パンクバンド「セックス・ピストルズ」のベーシスト、シド・ヴィシャスとその恋人ナンシー・スパンゲンの実話に基づいたラヴ・ストーリィ。

Check

セックス・ピストルズ

1970年代後半にキングズロードのマルコム・マクラーレンの店に集まっていたバンドを中心に結成されたパンク・バンド。 英国史上初めてテレビで「f**k」と発言するなど、その過激な発言と行動はイギリスのみならず世界中を揺るがした。活動期間はたった26ヶ月、アルバムは1枚のみ。1978年に解散。

詳しくはNo Future: A Sex Pistols FilmThe Filth and the Fury (2000)の項へ

シド・ヴィシャス

1957年、イーストロンドン生まれ。 本名はジョン・サイモン・リッチー。 父親はバッキンガム宮殿の近衛兵。

16歳の頃からジョン・ライドン(ジョニー・ロットン)とつるんでいた昔馴染みだった縁で、メンバーのグレン・マトロックの脱退後1977年2月にベーシストとして加入する。 しかしバンドに入るまで彼は一度もベースを弾いたことがなかったという。

体を上下に揺する「ポゴ・ダンス」も、シドが始めたものだとか。

シドが麻薬に溺れるようになったのは、ドラッグ中毒者だったナンシーの影響が大きかったと言われている。ピストルズ解散後の1978年10月に、ナンシーはニューヨークのチェルシーホテルで腹部を刺されて死亡しているところを発見される。 翌1979年2月2日、シド自身も麻薬の過剰摂取で死亡。享年21歳。

ロンドンの描写

ロンドンの街並み(テムズ河、タワーブリッジ、ダブルデッカー、騎馬警官、ホースガーズ)、下町の風景(パブでのダーツ遊び、ベイクド・ビーンズ、マーケット、貧民街の子供たち)

キャスト

Gary Oldman .... Sid Vicious (セックス・ピストルズのベーシスト)
Chloe Webb .... Nancy Spungen (シドの恋人)

[ピストルズのメンバー]
Andrew Schofield .... Johnny Rotten(ヴォーカル)
Perry Benson .... Paul (ドラム)
Tony London .... Steve (ギタリスト)

David Hayman .... Malcolm McLaren(ピストルズの仕掛け人)
Debby Bishop .... Phoebe
Xander Berkeley .... Bowery Snax
Courtney Love .... Gretchen
Kathy Burke .... Brenda Winczor
Iggy Pop .... Prospective Guest

若きゲイリー・オールドマンが「マイ・ウェイ」をパンク・ヴァージョンで"マイ・ワイ"と歌う姿にはシビレてしまう!

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0091954

国内盤DVD

サウンドトラック

(1986年 イギリス 113分)


『シャロウ・グレイヴ』Shallow Grave (1994)

監督:ダニー・ボイル
製作:アンドリュー・マクドナルド
脚本:ジョン・ホッジ

Story

「友達が信頼できなくなったらどうする?」

グラスゴーのフラットで共同生活を送る3人(記者のアレックス、会計士のデヴィッド、医者のジュリエット)は、ルームメイトを募集する。ところが3人のお眼鏡に適った自称作家のヒューゴは、越して来たその日に大金を残して急死してしまう。3人はヒューゴの死体を森に埋めに行くが、始末したデヴィッドは次第にノイローゼ気味になり、スーツケースと一緒に屋根裏に立て籠もるようになる。そしてヒューゴのスーツケースを探していた組織の間の手が3人のフラットに迫ってくるが・・・。

『トレイン・スポッティング』Train Spotting (1996)のダニー・ボイルの初監督作で、95年イギリスアカデミー賞イギリス映画賞受賞。

Check

キッチン周り

かなり広めのフラットで、鍋や調理道具のいっぱい吊るされた開放感のあるキッチンが素敵。

イギリスらしくナイフ類は壁に取り付けられた磁石につける方式になっている。

ごみの分別収集がない

イギリスではゴミの分別収集がなされていないので、燃えるごみ・燃えないごみの区別なく一緒くたに捨ててしまうのが普通。 生ごみとワインボトルが同じゴミ箱に入れられている。

スコットランドな飲み物

アレックスとデイヴィッドがキッチンで乱闘している場面で、倒れたゴミ箱から転がってきたのは、スコットランドの国民的清涼飲料ともいえる着色された甘ーい炭酸飲料「IRN-BRU(アイロン・ブルー)」の缶。

冷蔵庫にはマキューアン(ビール)の缶も。

チャリティ・パーティー

ジュリエットに誘われて3人で連れ立ってやってきたのは、恵まれない子供のためのチャリティ・パーティー。 スコットランドらしく、ミュージシャンや客の中に、伝統的なキルト姿のものもちらほら。 フロアでカントリー・ダンスも踊る。 アレックスもタータン・チェック柄のジャケットを着用。

TV番組1:フットボール

アレックスが、TVでフットボール(サッカー)の試合を見ている場面が。 グラスゴーっ子らしく、グラスゴーを拠点としたチーム「Rangers」の試合。

www.rangers.co.uk

TV番組2:クイズ"Lose a Million"

プリングルズをつまみながらアレックスが見ていたクイズ番組は、ITV放映の「Lose a Million」。司会は、本家"クイズ・ミリオネア"の司会も務めるChris Tarrant。

TV番組3:映画『ウィッカーマン』

アレックス (ユアン・マクレガー)がTVで観ていた映画『ウィッカーマン』 The Wicker Man (1973) は、スコットランドの離島で繰り広げられる惨劇と異郷への傾倒を描いた作品で、ドラキュラ役で名高いクリストファー・リーが島の領主を演じている。

 

ロケ地:スコットランド

エディンバラ

New Town
Heriot way,
St. Stephen's Church
North East Circus Place
・・・三人のフラットとして

グラスゴー

Townhouse Hotel, West George st.
Anniesland

Rouken Glen

・・・グラスゴー郊外。死体を埋めた場所。

Mugclock Country Park, near Milngavie

・・・グラスゴー郊外。車を乗り捨てた場所

 

キャスト

Ewan McGregor .... Alex Law
Kerry Fox .... Juliet Miller
Christofer Eccleston .... David Stephens

Ken Stott .... Detective Inspector McCall (刑事)
John Hodge .... Detective Constable Mitchell (
刑事)
Keith Allen .... Hugo (
フラットの新入居者)
Colin McCredie .... Cameron Cambell(
同居人募集の応募者)
Peter Mullan .... Andy (
麻薬組織の男・フラットを襲撃に来る)
Leonard O'Malley .... Tim(
麻薬組織の男・フラットを襲撃に来る)
John Bett .... Brian McKinley(
新聞社でのアレックスの上司)
Robert David MacDonald .... Lumsden (
スティーブンの上司)

 

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0111149

DVD

(1994年 イギリス 92分)


『シューティング・フィッシュ 』 Shooting Fish(1997)

監督は当時33歳のStefan Schwartz。

Story

タイトルは「たるの中に入れた魚を撃つのはたやすい」つまり「だますのは簡単さ」という意味。大邸宅に住むことを夢見る孤児院育ちのふたりの男:口八丁手八丁のアメリカ人ディランと、コンピューターおたくのイギリス人ジェズ。ふたりが偽のプレゼン(音声認識ができるコンピューターの販売)にタイプ要員として雇った医学生のジョージィ。この3人を中心に展開するやったりやられてりのコン・ゲーム(詐欺)、それにロマンスの味付けも加わった活きのいいコメディ。

Check

ジェズとディランが共同生活するおもちゃ箱をひっくり返したような部屋が楽しい。さりげなく置かれているフラワーロックとダッチワイフ人形は後で活躍するので要チェック。

腹いせにRayやStratton-Luceらが、ディランとジェズの部屋を荒らす場面。
"I vow to thee, my country(ホルストの木星)"の堂々たる旋律に乗って次のように叫びながら暴れる。”英国的なるもの”の象徴とはこのようなものなのか。:
「古き良き英国はどこへ行った!生ぬるいビール、日曜のクリケット、土曜のサッカー、(作曲家の)エルガー、ブリテン、(作家の)ロブソン、ジェローム、肉のカレー煮、ワーテルロー、マーガレット・サッチャー!」
刑務所の中でもベイクドビーンズ(大豆のトマト煮)を食べているところがイギリス人!

ロケ地

Mill Hill, London

(ディランとジェズが錆止めを依頼されたガスタンク) 地下鉄Mill Hill East駅近く
Alexandra Palace, London
(ごみ箱をあさっている場面)

キャスト

Dan Futterman .... Dylan (アメリカ人)
Stuart Townsend .... Jez
Kate Beckinsale .... Georgie
Nickolas Grace .... Mr Stratton-Luce (経理係・詐欺の被害者)
Arabella Weir .... Mrs Stratton-Luce
Claire Cox .... Floss (Georgieの妹)
Darren Renouf .... Robin (Georgieの弟)
Ralph Ineson .... Mr Ray (車上荒らし犯)
Nicola Duffett .... Mrs Ray
Dominic Mafham .... Roger (Georgieの婚約者・幼なじみ)
Peter Capaldi .... Mr Gilzean
Annette Crosbie .... Mrs Cummins
Phyllis Logan .... Mrs Ross

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0120122

DVD

(1997年イギリス114分)


『十二夜』 Twelfth Night: Or What You Will(1996)

監督・脚本はロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのTrevor Nunn 。(Viola役のImogen Stubbsは彼の妻)
製作は『英国万歳!』『から騒ぎ』のStephen EvansとDavid Parfitt、衣装は『ハワーズエンド』『眺めのいい部屋』『モーリス』『いつか晴れた日に』のJohn Bright、
シェイクスピアの喜劇を19世紀の舞台設定で映画化。

Story

メサリーン出身の双子の兄妹セバスチャンとヴァイオラは、嵐に遭って難破したため生き別れになってしまい、互いに相手が死んでしまったと思い込んでいた。

ヴァイオラは墓地で見かけたオリヴィアが父の伯爵と兄を相次いで亡くして悲しみに沈んでいることを知って共感を覚え、老船長の口利きで彼女に求婚しているというオーシーノ公爵に仕えることにする。「セザリオ」と名を変え男装して。

やがて"セザリオ"ことヴァイオラは、オーシーノ公の信頼を得てオリヴィアとの橋渡しを命じられる。ところがオリヴィアは風変わりな使者"セザリオ"に並々ならぬ興味を持ってしまい、熱烈なアプローチを仕掛けてくる。"セザリオ"ことヴァイオラはいつのまにか主君であるオーシーノ公に恋をしてしまったというのに。

このヴァイオラ、オーシーノ公、オリヴィアの"正三角関係"を軸に、執事マルヴォーリォに対する復讐劇(Oliviaの屋敷に居候している叔父Sirトービー、騎士エギュチューク、侍女のマライア、道化のフェステによる)、そしてヴァイオラの兄セバスチャンと彼を助けたアントニオ(オーシーノ公の領地ではお尋ね者)の登場によって物語は一気にクライマックスへ・・・!

 

Check !

撮影は主にコーンウォール地方で行われている。オーシーノ公の城はSt. Michael's Mountの上に立てられており、砲台を備えた質実剛健な雰囲気。
一方オリヴィアの屋敷は平地に建てられたマナー・ハウスで、整型庭園が美しい開放的なつくり。台所にはパンやチーズ、銅製の鍋、菓子型、テリーヌ型、Cupboardには皿が綺麗に並んでいる。

原作

ウィリアム・シェークスピア(1564-1616)
『ハムレット』とほぼ同時期に書かれた喜劇。テキスト全文はこちらのサイトで読める。 →CompleteWorks of Shakespeare
日本語訳は白水社(訳・小田島雄二)、角川文庫など各種出ている。

『十二夜』和書検索_Twelfth night_ 洋書検索

十二夜とは

(キリスト教用語)クリスマスから十二日目、すなわち公現節の前夜祭(1月5日)のこと。キリスト教圏ではTwelfth Day(1月6日)までクリスマスの飾りをつけておくとか。クリスマスから公現祭(1月6日)の前日までを「降誕節(Christmastide)」と呼ぶ。

Awards

アカデミー衣装賞受賞。

ロケ地

St. Michael's Mount

この島に建っている城は、12世紀にベネディクト修道会礼拝堂だったもの。 ロココ・ゴシック様式の応接間や兵器庫、14世紀のチャペル(6-9月の日曜日に行われる礼拝にも参加可能)などが見物。 干潮時には歩いて渡れるため、イギリス版"モン・サン・ミッシェル"として有名。 現在ナショナル・トラストの管理下に置かれている。

St.Michael's Mount, Marazion, near Penzance, TR17 0EF
TEL : 01736 710507

Lanhydrock House

Bedruthen Steps

Mount Edgecumbe

Prideaux Place

Cothele

Trebarwith Strand

Trerice

 

キャスト

Imogen Stubbs .... Viola (Sebastianの双子の妹)
Toby Stephens .... イリリア領主Orsino公
Helena Bonham Carter .... Olivia (Orsino公の想い人)
Ben Kingsley .... Feste (道化)
Nigel Hawthorne .... Malvolio (Oliviaの屋敷の執事)
Mel Smith .... Sir Toby Belch (Oliviaの叔父)
Richard E. Grant .... Sir Andrew Aguecheek(騎士・Oliviaの求婚者)
Imelda Staunton .... Maria (Oliviaの侍女)
Nicholas Farrell .... Antonio (Sebastianの命の恩人)
Steven Mackintosh .... Sebastian (Violaの双子の兄)
Sid Livingstone .... Violaたちが乗っていた船の船長
Alan Mitchel .... Valentine
Peter Gunn .... Fabian (Oliviaの屋敷の使用人)
Tim Bentinck .... Officer
Rod Culbertson .... Officer
James Walker .... 司祭
Jeff Hall .... 庭師

Sir Toby役のメル・スミスは映画『ビーン』の監督も務めた。

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0117991

Official site

DVD国内盤

 

(1996年 イギリス 134分)


『ジュビリー』Jubilee(1978)

監督:デレク・ジャーマン

錬金術学者ジョン・ディー博士を訪れたエリザベス1世が未来を見る旅に出た。堕落と退廃が支配する未来のロンドン。エリザベスの生まれ変わりが統率するグループが対立組織と衝突し事態は思わぬ方向へ…

音楽はブライアン・イーノ。
パンク・シンガーのトーヤ・ウィルコックスが好演。彼女は『さらば青春の光』にも出演している。

*「ジュビリー」とは聖年、年祭、祝典を指す。

ロケ地

バトラーズ・ワーフ、London

Theatre Royal, Drury Lane, London

Catherine St, London WC2B 5JF

キャスト

Jenny Runacre .... エリザベエス一世/Bod
Nell Campbell.... Crabs
Toyah Wilcox .... Mad
Jordan .... Amyl Nitrite
Hermine Demoriane .... Chaos
Ian Charleson .... Angel
Karl Johnson .... Sphinx
Linda Spurrier .... Viv
Neil Kennedy .... Max
Orlando .... Borgia Ginz
Wayne County .... Lounge Lizard
Richard O'Brien .... John Dee博士 (錬金術師)
David Haughton .... Ariel (案内役のエンジェル)

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0076240

国内盤DVD

(1978年 イギリス 103分)


『女王と祖国のために』For Queen and Country(1989)

監督:Martin Stellman

Story

1979年の北アイルランドからフォークランド紛争へと転戦し、精鋭パラシュート部隊に所属していた軍人ルーベンは、8年間の軍隊生活を終えロンドンに戻ってきた。 彼が育った懐かしい街はすさみきっていて、そこかしこで彼が黒人であることで差別的な待遇を受ける。そのうえ派兵中に移民法が変わったために彼は英国籍を失っていた・・・。当時のサッチャー政権に対する批判をこめた社会派作品。

Check!

フォークランド紛争:

大西洋南西部、南アメリカ南端マゼラン海峡沖にあるイギリス領の諸島。この諸島を巡ってアルゼンチンとイギリスが争った。当時の首相はサッチャー。

イギリス国籍法

1991年に制定されたイギリス国籍法で、旧植民地セントルシアから4歳の時に移住したReubenは、8年も軍隊で祖国のために勤務していたのにイギリス国籍を失った。

黒人差別

退役後ロンドンに戻ったReubenが入ったパブで、スキンヘッドの男に黒人を蔑視した言葉を投げかけられる。スキンヘッドにしているようなタイプは国粋主義者であることが多く、移民や有色人種に対して攻撃的。

戦友フィッシュ

ルーベンの戦友フィッシュが読んでいる新聞は、主に労働者の読むタブロイド紙「The Mirror」。彼は北アイルランドの反英テロで脚を失っていた。妻は現地で知り合ったアイルランド人。低所得者向けフラットの家賃も払えないほど困窮した生活に疲れ、子供を連れてアイルランドへ家出してしまう。

荒れた街のようす

エレベーターのなかで立ちションしている男がいた。映画『司祭』でもそういう場面が・・・子供たちも麻薬に溺れ、売人をやっている子供さえいる。
ルーベンの昔の知り合いコリンは、昔は荒れていたが今は芸術家の多く住むサリードッグズに住む。汚いことをやって蓄財したらしい。ニューポートパグネルのサービスエリアでパキスタン人とトイレで麻薬の取引を。

ミニキャブ

ミニキャブの運転手として母子家庭の生計を立てているStaceyの紹介で、Reubenも運転手として働くように。黒塗りオースチンでおなじみの正規のタクシー運転手になるには国家試験をパスしなければならないが、ミニキャブなら車さえあればすぐ始められる。一種の白キャブのようなものだが、市民の足として便利に利用されている。

ロケ地

ロンドン

Bray(アイルランド、ダブリン近郊)

キャスト

Denzel Washington .... Reuben
Dorian Healy .... Fish (Reubenの親友)
Sean Chapman .... Bob (Reubenの友人・警官)
Graham McTavish .... Lieutenant
Geff Francis .... Lynford (Reubenの知人・警察に反抗)
Frank Harper .... Mickey
Craig Fairbrass .... Challoner (パブに銃を持ってきた男)
Michael Bray .... Bryant
George Baker .... Kilcoyne
Bruce Payne .... Colin (Reubenの知人)
Brian McDermott.... Harry (殺された警官)
Lisa O'Connor .... Haley (少女・Staceyの娘)
Amanda Redman .... Stacey (Haleyの母親)

参考資料とソフト

imdb.com/Title?0097373

 

(1989年 英=米 105分)


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