タイトル*ふ
監督・脚本:John Sayles
原作:Rosalie K. Fryの小説「Secret of the Ron Mor Skerry」。原作はスコットランドが舞台だった。
1946年に母親を亡くしたFionaは、漁師として生計を立てる祖父母といとこの住む家に引き取られた。妻を亡くしたてパブで酒浸りになる父親のJimが働く町は子供には良い環境ではないからだ。祖父母もFionaの母の死をきっかけにそれまで暮らしていた島ローン・イニッシュを離れ、本土の海岸沿に家を構えており、無人となった島はアザラシの住処になっていた。
祖父から島にまつわる伝説やまだ赤子だった弟ジェミーがゆりかごごと海にさらわれた話を聞いたフィオナは、しだいに島に帰ることを望むようになる。やがていとことともに島を訪れた彼女が見たものは・・・幻想的なケルト民族の神話、家族の絆が綴られた印象的な作品。全編に流れるケルト音楽が絶品。(ここでサントラの一部を試聴できます。)
Fionaの先祖、Liamが黒髪の妖精セルキーと恋をして子供をもうけたため、一世代にひとり生まれる黒髪の人間は妖精の置き土産として、不思議な力を持つ。Fionaは金髪だが弟のJamieは黒髪、Fionaの父の従兄弟タッドも黒髪で彼はボートから素手で海中を泳ぐ魚を掴み取ることができた。
イングランドに征服されたアイルランドはこれまで数々の辛酸を舐めてきた。ヒューの祖父Sean Connery(有名俳優と同じ名前だが)は、学校で禁じられているアイルランド語をしゃべったことを咎められて、イングランドから派遣された教師に罰として首に藁で作った衿を巻かされた。のちに彼は船が難破した折りにアザラシに助けられるが、フェニアン団への武器密輸の咎でイングランド人に投獄され一生を終えた。
Donegal (Ireland北西部)
Jeni Courtney .... Fiona
Pat Slowey .... Priest
Dave Duffy .... Jim (Fionaの父)
Declan Hannigan .... Oldest brother
Mick Lally .... Hugh (Fionaの祖父)
Eileen Colgan .... Tess (Fionaの祖母)
Richard Sheridan .... Eamon (Fionaのいとこ)
Micheal MacCarthaigh .... Seanの学校の先生
Fergal McElherron .... Sean Michael (Hughの祖父)
Brendan Conroy .... Flynn
John Lynch .... Tadhg (Fionaの父のいとこ)
Frankie McCafferty .... Tim
Gerald Rooney .... Liam (Fionaの先祖で妖精と結婚した男)
Susan Lynch .... ヌアラ(Selkie=アザラシの姿をした妖精)
Suzanne Gallagher .... SelkieとLiamの娘
Cillian Byrne .... Jamie (Fionaの弟)
Linda Greer .... Brigid (Fionaの母)神秘的な妖精セルキーを演じたSusan LynchはJohn Lynchの姉。
サウンドトラック:輸入盤(試聴ファイルつき)
原作書籍:『フィオナの海』
ロザリー・K. フライ著/矢川 澄子・訳(1996/06/01) 集英社 ; ISBN: 4087732517
(1994年 アメリカ 103分)
監督マイク・ニューウェル、脚本リチャード・カーティス
4つの結婚式とひとつのお葬式をめぐって、すれ違いながらも惹かれあうふたりを描くコミカルな物語。リチャード・カーティスは、Mr.ビーンの脚本家としても有名。Mr.ビーンのローワン・アトキンソンも新米牧師役で登場。
コンフェッティ(紙ふぶき)、ライスシャワー、ガーデン・パーディ・・・
カントリー・サイド(サマセットシャー)、ロンドン、スコットランドと場所を変えて、さまざまなイギリスの結婚式の様子が垣間見られる。
赤いローバー・ミニやランド・ローバーが登場するのが嬉しい。
結婚していなくても夫婦同然だった恋人たちの片方の死は、主人公チャールズの最後の選択にどう影響を与えたか…? 葬式の場面で朗読されていた詩はW・H・オーデンの作品。
一番目の結婚式で歌われていた賛美歌はイギリス人がこよなく愛する「エルサレム」。
フィオナとトムの兄妹は上流階級らしく城に住んでおり「イギリスで7番目に金持ち」とのこと。
一番目の結婚式の後チャールズはキャリーを追って彼女が泊まるパブへ。イギリスのパブは宿泊できるところが少なくない。ふたりが一夜を過ごしたのは重厚な家具が設えられた雰囲気の良い部屋。
チャールズとスカーレットはフラットメイト。イギリスでは異性の友人がフラットメイトとして共同生活を送るのは珍しくない。
挿入歌はWET WET WETやElton Johnなど。「クロコダイル・ロック」で新郎新婦が踊ってしまえるというのがイギリスらしい。
(その他)1999年度英国映画協会によるベスト100作品:23位にランクイン
(4番目の結婚式会場)
(チャールズが愛の告白をする場面)
(チャールズがキャリーの男性遍歴について聞く場面)
コヴェント・ガーデンのカフェ。
・・・CharlesとDavidが待ち合わせをした場所(情報提供:Eikoさん)
(2番目の結婚式会場)
(チャールズがキャリーと一夜を過ごした宿)
(結婚式会場)
Hugh Grant .... Charles
Andie MacDowell .... Carrie (アメリカ人)
Charlotte Coleman .... Scarlett(チャールズの友人・フラットメイト)
Kristin Scott Thomas .... Fiona(チャールズの友人)
James Fleet .... Tom(チャールズの友人・フィオナの兄)
Simon Callow .... Gareth (チャールズの友人・マシューの恋人)
John Hannah .... Matthew(チャールズの友人・ガレスの恋人)
David Bower .... David (チャールズの弟)Robin McCaffrey .... Serena (後にDavidと・・・?)
Randall Paul .... Chester(テキサス出身・後にScarlettと・・・?)
Corin Redgrave .... Hamish (スコットランドの大地主・キャリーの婚約者)
Anna Chancellor .... Henrietta(チャールズの昔の恋人)Timothy Walker .... Angus (第一の結婚式での花婿)
Sara Crowe .... Laura (第一の結婚式での花嫁)
Ronald Herdman .... (第一の結婚式での牧師)
Rupert Vansittart .... George(Inn"The Boatman"にいた野暮な男)
Rowan Atkinson .... Father Gerald (第二の結婚式での牧師)
David Haig .... Bernard (第二の結婚式での花婿)
Sophie Thompson .... Lydia(第二の結婚式での花嫁)
Ken Drury .... Vicar (第三の結婚式での牧師)
Neville Phillips .... Vicar (葬式の時の牧師)
Richard Butler .... Vicar(第四の結婚式での牧師)
輸入版ビデオ(字幕なし)
サウンドトラックCD:国内盤/US Import/UK Import
書籍:『フォー・ウェディング』
リチャード カーティス (著)キネマ旬報社(1994/10/01) 入手困難?書籍:Four Weddings and a Funeral : Three Appendices and a Screenplay
Richard Curtis (著) ペーパーバック (1996/05) St. Martin's Press
(1994年 英 118分)
ヨークシャー・グリムリー炭坑の坑夫たちによって編成された歴史あるブラスバンドGrimethorpe Colliery Bandの実話をもとにした人情味あふれる物語に、当時の炭鉱閉鎖や失業などの社会問題を加味した佳作。
1999年度英国映画協会によるベスト100作品:85位にランクイン
炭坑で肺をやられながらも音楽に情熱を燃やす指揮者ダニーと、余命幾ばくもない父親の指揮者が幸せに死ねるようにと家財を借金のかたに差し押さえられ日常の生活費にも事欠く暮らしをしながらもトロンボーンを新調する息子フィルのドラマ、そして自分の仕事とブラスバンドの仲間への気持ちのジレンマに苦しむ新規加入の女性奏者グロリアと、彼女に恋する若者アンディのドラマ、閉鎖に追い込まれようとする炭坑の労働者と経営者側との戦いなど、いくつもの要素が絡み合って物語を一層豊かなものにしている。
ヨークシャーの小さな村からハリファックスで予選を通過し、そして本選は有名なロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われる。広角レンズを使った臨場感が見事。入院中の指揮者ダニーのためにバンドのメンバーが病室の窓の下で「ダニー・ボーイ」を演奏する場面は泣ける。他にも「威風堂々」などブラスバンドの名曲が全編に流れゾクゾクさせる。
当時の政府(保守党)の石炭産業に対する冷遇に対する社会的メッセージも込められている。1984年以来140もの炭鉱が閉鎖され25万人近くが失業したとのこと。字幕で「トーリー党」となっていたのはいわゆる「保守党」のことで、サッチャー首相もやり玉にあがっていた。炭坑での仕事は条件も悪く、ダニーや彼の親友(グロリアの祖父)が胸をやられたのも炭坑夫の職業病。
その他:パブでスヌーカー(ビリヤード)で賭けをしたりビターをチビチビやったりする場面も多い。労働者の村らしく洗濯機は室内乾燥機を使わないで庭に張ったひもに干すし、タブロイド紙(大衆紙)を愛読している様子。村の人は日常の買い物にコンビニエンスストア「SPAR」を利用。
タイトルの「Brassed Off !」には、「Brass Band(吹奏楽団)」の他に、「〜にうんざりする(be brassed off with)」という意味もかけている。
ウィリアムテル序曲
ボギー大佐
アランフェス(ロドリーゴ)
ダニーボーイ
エルサレム
威風堂々
Piece Hall, Halifax, West Yorkshire・・・マーケットは予選通過が決まる時に演奏していた場所
Barnsley, South Yorkshire
Doncaster, South Yorkshire
Rotherham, South Yorkshire
Saddleworth, Greater ManchesterLondon・・・ロイヤル・アルバート・ホール、ビッグ・ベンなど
Pete Postlethwaite .... Danny(指揮者)
Ewan McGregor .... Andy
Tara Fitzgerald .... Gloria
Stephen Tompkinson .... Phil (Dannyの息子)
Jim Carter .... Harry
国内盤DVD
(1996年 イギリス 107分)
監督・脚本:Neil Jordan
アイルランドの古城の持ち主Peter Plunkettは、アイルランド系アメリカ人のブローガンに借金の返済を迫られていた。このままでは借金のカタに城を売り渡さなければならない。城主と使用人たちは団結して"幽霊の出る曰く付きの城"としてアメリカ人相手のゴーストツアーを企画するが・・・。城主のPeter O'Tooleのコミカルな味付けが楽しい。幽霊とのラヴ・ロマンスも。
城のディナーで供される食事はアイルランドらしく(?)たらばかり。蒸した鱈、茹でた鱈、鱈のフライ、鱈のスープ・・・
城主のピーターは借金苦で"To die, to sleep nomore bias sleep..."といいながら首吊りしようとする。この台詞は『ハムレット』の一節。
"Drink to me leave a kiss..."幽霊のMary Plunkettが乾杯のときに口ずさんだ詩はベン・ジョンソンのもの。
Ben Jonson(1573-1637)
イギリスの詩人、劇作家、批評家。諷刺劇「十人十色」の上演によって一躍その名を挙げた。三大喜劇として「狐」「物いわぬ女」「錬金術師」がある。
Dromore Castle, Limerick, Ireland
16世紀に建てられた城で、17世紀にTadhg O' Brienの手によって修復された。Denham, England
プランケット城の住人:
Peter O'Toole .... Peter Plunkett (城の主人)
Liz Smith .... Mrs Plunkett (Peterの母)
Donal McCann .... Eamon(城の使用人)
Mary Coughlan .... Katie(城の使用人)
Tom Hickey .... Sampson(城の使用人)
Tony Rohr .... Christy(城の使用人)
Hilary Reynolds .... Patricia(城の使用人)
Isolde Cazelet .... Julia(城の使用人)
Little John .... Gateman(城の使用人)アメリカ人:
Steve Guttenberg .... Jack(Sharonの夫)
Beverly D'Angelo .... Sharon Brogan(金貸しBroganの娘・Jackの妻)
Jennifer Tilly .... Miranda(男断ちのためにツアーに参加)
Peter Gallagher .... Brother Tony(カソリックの神父になる)
Martin Ferrero .... Malcolm(超心理学者)
Connie Booth .... Marge(超心理学者の妻)
Krista Hornish .... Wendy
Matthew Wright .... Woody
Paul O'Sullivan .... Graham幽霊:
Daryl Hannah .... Mary Plunkett(幽霊)
Liam Neeson .... Martin Brogan(幽霊・メアリーの夫)
Ray McAnally .... Plunkett Senior (Peterの死んだ父)
Aimee Delamain .... Great Granny Plunkett
Ruby Buchanan .... Great Aunt Man
Preston Lockwood .... Great Uncle Peter
(1988年 イギリス 98分)
原作はイギリスの現代作家ファウルズ(『コレクター』の作者)のベストセラー小説。
イギリス南部の港町で「フランス軍中尉の女」という映画の撮影がが行われている。 劇中劇の舞台は19世紀中頃のモラルの厳しいヴィクトリア朝時代のイギリス南部の港町ライム。 不実なフランス人将校に捨てられたがゆえに皆から娼婦呼ばわりされる女性サラ・ウッドラフと、婚約したばかりの美しい恋人がいるにもかかわらずサラに惹かれていくロンドンから来た考古学者チャールズの物語。
一方でこの映画の共演者マイクとアンナもお互いに家庭がありながらも不倫の関係を続けていた。 撮影が進むうちに劇中劇の登場人物たちと実生活の二人がオーバーラップしていく・・・
(映画の中で読み上げられるデータだが)1857年当時ロンドンでは8軒に一軒が売春宿で、男性125万人に対して娼婦が8万人もいた。ロンドンのような大都会では失業した家庭教師などは娼婦になるしかなかった。サラがロンドンに行くと本当に堕落した女になってしまうとつぶやくのもこうした事情による。
ヴィクトリア朝のロンドン:チャールズはロンドンに着くとすぐクラブに行き、なじみの友人と談笑。通りにはたくさんの馬車が忙しく行き交っている。 繁栄を謳歌した大英帝国の首都ロンドンだが、一歩裏通りに入ると貧しい女性たちの群れが見えるのがわびしい。
メリル・ストリープの足元に波が打ち寄せる港の場面
エクセター駅の場面
サラが滞在したEndicott's Family Hotel
(『フォー・ウェディング』でヒュー・グラントとアンディ・マクドウェルが一夜をすごしたホテル)
・・・ラストシーン
Meryl Streep .... Sarah / Anna
Jeremy Irons .... Charles / Mike
Hilton McRae .... Sam (Charlesの従者)
Emily Morgan .... Mary (Ernestinaのメイド)
Lynsey Baxter .... Ernestina (Charlesの婚約者)
Peter Vaughan .... Mr Freeman (Ernestinaの父で実業家)
The French Lieutenant's Woman
by John Fowles (カセットテープ:朗読Jeremy Irons)The French Lieutenant's Woman
by John Fowles (Paperback)
(1981年 イギリス 124分)
監督:Stephen Frears
脚本:Alan Bennett
原作:John Lahr
撮影:Oliver Stapleton
音楽:Stanley Myers
1950年代から60年代にかけてのロンドンを舞台に、実在の劇作家ジョー・オートンとその同性の恋人ケネス・ハリウェルとの悲劇に終わった愛憎の日々を描く。今をときめくゲイリー・オールドマンの初期作品。
ジョン・ラーが書いた同名の伝記を基にしたジョー・オートンの半生の映画化。
"Prick Up One's Ears"という表現は直訳すると"耳をそばだてる"という意味だが、"Prick"にはスラングで××という意味があり(辞書を引いてください・汗)、"Ears"は"Ar*e"のアナグラム(綴りを入れ替える言葉遊び)・・・というかなりきわどい意味を含んでいる。
Joe Orton (1933-1967)
1933年1月1日レスター(Leicester)に生まれる。本名John Kingsley Orton。1951年5月ロンドンのRADA(Royal Academy of Dramatic Art)に入りそこで演技を学ぶ。映画の中でRADAの奨学金がもらえたと喜ぶ場面が。 このRADAでケネス・ハリウェルと運命的出会いをする。 ハリウェルと共著で小説も何作か創作していたが生前は出版されず。(T.S.エリオットが役員を勤めるという出版社に小説_The Boydresser_を持ち込む場面が。) この1950年代はジョン・オズボーンら「怒れる若者たち」と呼ばれる新進作家たちが台頭してきた時代で、これまでの既成概念を打ち破ろうとする斬新な作品が世に出た時代だった。オートンが本名のジョンでなく別の名前を考えるようにとペギーにアドバイスされたのも、ジョン・オズボーンと混同されないため。
イズリントンの図書館の蔵書に執拗に落書きや切抜きを繰り返した罪で、ついに1962年禁固6ヶ月の実刑判決を受ける。 初めて長期間ハリウェルと離れ、自己を見つめる生活の中で物書きとして成長し、受刑中に練ったプロットで、出所後すぐにBBCラジオドラマの脚本「The Ruffian on the Stair」を書いたのを皮切りに、劇作家としての才能を花開かせる(31歳)。
1967年8月9日恋人のケネス・ハリウェルによって撲殺され、ハリウェル自身も睡眠薬の過剰摂取で自殺。いわば無理心中といったショッキングな死は世間を大いに騒がせた。
>>作品
- 『スローン氏の歓待(Entertaining Mr Sloane)』(1964)
- 1964年5月6日、New Arts Theatreにて初演、のちWyndham's Theatreにうつる。劇作家テレンス・ラティガンが"the best first play I have seen in 28 years"と絶賛した。
- 『略奪品(Loot)』(1966)
- 初演1965年2月1日、ケンブリッジArts Theatre、翌年Jeanetta Cochrane Theatreにて上演。
Best Play of the yearに選ばれた大ヒット
「"Loot"の映画化権が売れた」と作中で言われているが、これはオートンの死後同郷(レスター出身)のリチャード・アッテンボロー主演によって実現している。- 『What the Butler Saw』(1969)
オートンが裸で横たわる姿をスケッチしていたのはPatrick Prockter。 この作品はNational Portrait Galleryに収蔵されている。
National Portrait Gallery:www.npg.org.uk
>>オートンのスケッチ
「俳優を志すなら綺麗な発音を学ばないと」と、オートンは発声法をランバート夫人について学ぶ。 実際彼が育った界隈はものすごい訛りのきつい地域のようだ。 実家のお隣の住人(インド系か?)の訛りもすさまじい。
ふたりの出会いはオートン18歳、ハリウェル25歳のときのこと。1951年から16年間にも及ぶ長い付き合いとなった。
オートンとハリウェルはRADAで出会った直後の1951年6月から一緒に暮らし始める(161 West End Lane, London, NW6)。 ハリウェルがロンドン北部イズリントン(25 Noel Road, Islington, London, N1)にフラットを買ったのは1959年のこと。
ハリウェルは早くに両親を亡くしたものの、その遺産で生活には困らないし充分な教養もあるミドル・クラスの人間。 それとは対照的にオートンは地方都市レスターの貧しい家庭に生まれた典型的なワーキング・クラスの男。 ハリウェルはミドルクラスの価値観を憎みながらもそこから抜け出せず、"失うものは何もない"オートンに羨望を覚える。
公園でみつけたかっこいい男を追いかけて彼のフラットまで尾けていく場面。 ハリウェルが「"ticket for proms"があるから帰りたい」と言う台詞が字幕では「パーティーの約束があるから」となっていたが、この場合の「proms」は、パーティーでなくロンドンのロイヤルアルバートホールで開かれるクラッシック・コンサートのこと。 ハリウェルの教養やミドルクラス出身であることがうかがえる台詞だ。
「ゲイの暗黒時代ね。見つかれば監獄行きだった(1964年のペギーとオートンとの出会いを回想して)」にもあるように、オートンが生きた1960年代のイギリスは同性愛が犯罪とされていた時代だった。 ゲイの男たちがつかの間のラヴ・アフェアを求めて集まる公衆トイレにも、警官たちが抜き打ちで取り締まりにやってくる。
そんな時代でも男たちは官憲の目を盗んで、地下鉄構内で、公園で、公衆トイレで、そしてバス停でさえも、相手を求める。 オートンがジャネットやハリウェルと一緒に出かけたサウスバンクの花火大会でも、芝生でからみあっている男たちがいたし、緑豊かな公園(ハイドパークやグリーンパーク?)でも理想の相手を品定めしたりする視線が飛び交う。 そういう用途に利用する公衆トイレのことは英語で"cottage"、米語で"tearoom"と呼ぶらしい。
オートンはビートルズが出演する映画の脚本「アップ・アゲインスト・イット」を依頼されており、その件でビートルズのマネージャーであるブライアン・エプスタインとしばしば連絡を取る場面がある。 旅先のモロッコにまで電話が。 姿は見えないが、ポール・マッカートニー自身がわざわざオートンのフラットに車で尋ねてくる場面も。 結局この脚本は"健全な"ビートルズ像を損なうという理由でエプスタインに却下されてしまうことになるのだが。
ちなみにブライアン・エプスタインもゲイで(映画『僕たちの時間』などで描かれているように)、RADAに在籍していたこともある。オートンとハリウェルの死から間もない1967年8月27日にドラッグの過剰摂取で死亡。
オートンの葬式にはビートルズの'A Day in the Life'が流された。
エリザベス女王の戴冠式の映像をふたりでTVで見ている場面が。これは1953年のこと。
NY批評家協会賞:助演女優賞受賞(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)
カンヌ国際映画祭:芸術貢献賞受賞(スタンリー・マイヤーズ・音楽)英アカデミー賞(BAFTA):3部門ノミネート(主演男優賞、助演女優賞、脚色賞)
Gary Oldman .... Joe Orton
Alfred Molina .... Kenneth Halliwell (Ortonの恋人)
Vanessa Redgrave .... Peggy Ramsay (Ortonのエージェント)Wallace Shawn .... John Lahr(ライター・アメリカ人)
Lindsay Duncan .... Anthea Lahr (John Lahrの妻)Frances Barber .... Leonie Orton(妹)
Stephen Bill .... George Barnett(Leonieの夫)
Julie Walters .... Elsie Orton(母)
James Grant .... William Orton(父)Dave Atkins .... Mr Sugden
Janet Dale .... Mrs Sugden
Bert Parnaby .... The Magistrate (判事)
Margaret Tyzack .... Madame Ada Lambert(発声法の先生)
Selina Cadell .... Miss Datersby
David Cardy .... Brian Epstein(ビートルズのマネージャー)
Liam De Staic .... Brickie
William Job .... RADA Chairman
Rosalind Knight .... RADA Judge
Angus MacKay .... RADA Judge
Steven Mackintosh .... Simon Ward (俳優・母の入れ歯を投げられる)
Charles McCowen .... Mr Cunliffe
Helena Michell .... オートンの友人
Sean Pertwee .... オートンの友人
Eric Richard .... Education Officer
Linda Spurrier .... Instructor
Max Stafford-Clark .... Honourable President
Charlotte Wodehouse .... Janet (RADAの仲間・一緒に公演に)
ビデオ廃盤?
参考サイト:Knitting Circle
参考書籍:『たのしく読める英米演劇―作品ガイド120』
編集:一ノ瀬 和夫、外岡 尚美他 (2001/04/01) ミネルヴァ書房原作:"Prick up your ears"John Lahr
(1987年 イギリス 110分)
監督:Peter Cattaneo
脚本:Simon Beaufoy
ヨークシャー地方シェフィールドはかつて鉄鋼産業が栄えた町だったが、長引く不況で工場は潰れ、鉄産業に従事していた男たちはみな失業してしまい、気勢を吐いているのは女たちばかりである。 ある日町にやってきた有名な男性ストリップ・チーム「チッペンデールズ」のショウに女たちが熱狂しているのを見たガズ(R.カーライル)は、子供の養育費を稼ぐための苦肉の策として自分たちもストリップで一獲千金をと考えつく。 もちろん素人集団が客を集めるには付加価値が必要。スッポンポンになる(=go the Full Monty)しかない!
集まった6人は貧相、デブ、年寄り、ダンス下手・・・とおよそストリッパーとしての素質のない男たちばかり。さまざまな紆余曲折を経て練習を重ねていく過程が、ある時はテンポ良く、ある時はしみじみと描かれる。メンバーのうちふたりがデキちゃうのはさすがイギリス。
昔は鉄鋼業で栄えた工業都市シェフィールドも、産業構造の変化によって一転して失業者の溢れる街になってしまったが、それでもイングランド第四の大都市(人口は約50万人)。
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また、シェフィールドといえば銀食器やナイフの産地としても有名で、シェフィールド産の銀器には産地刻印(Assay Mark)として王冠のマークがついている。
(*たとえばロンドン産はライオン、バーミンガム産はイカリのマーク)
作品中何度も登場するのが大型スーパー「ASDA」。食品だけじゃなくビデオ・テープ、衣料品までなんでも揃っている。 (右写真はASDAのシェフィールド店。Photo by Cheeky) |
失業者ガズが住むのは低所得者でも格安で借りられるカウンシル・フラットのようだ。Job Centre(職業安定所)には失業保険をもらう男たちの長い列ができ、いかにも不況・・・
元・工場主任のジェラルドの自宅は、さまざまな置物が並ぶ居間、綺麗に手入れされた庭のついた小奇麗な一軒家。庭には陶製のノーム(=Gnome。幸福を呼ぶ妖精で小人のような姿をしている)がたくさん飾られている。実際、イギリスの郊外に行くとこのような人形を庭においている家庭は多い。ちなみにメイジャー元首相のお父さんもこのノーム人形を作る仕事に携わっていた。
ガズの息子ネイサンはまずいと言ったが、廃工場で食べるために持ってきたChinese Take Awayは安くて美味しいので人気があるし、結構小さな町にも店がある。
体重の単位を「stone」で数えるのがイギリス! 「ポンド」を「quid」とスラングで言い換えるのがイギリス!
音楽はドナ・サマーの「ホット・スタッフ」をはじめとして、「フラッシュ・ダンス」などのダンス・ナンバーにあふれている。ショーに使ったTom Jones「You can leave your hat on」は、歌詞がダンスに合っていてとってもセクシー。
『モンティ・パイソン大全』(須田泰成・著/洋泉社)P127より抜粋
「Monty」とは、第二次大戦でナチス・ドイツ陸軍将軍ロンメルを破った、英国陸軍元帥Bernard Law Montgomery(1887-1976)の愛称のこと。Montgomery将軍はマッチョで豪快で"何でも徹底的にやる人柄"として知られている。たとえば、決戦が近づくとどんなに優秀な軍人でも食が細くなるものなのに、彼は作戦実行日の朝まで食べ応えのあるこってり重いEnglish Breakfastをフルコースで平らげていたというエピソードがある。「Full Monty」という言葉はここから生まれたもので、"徹底的に、最後までとことんやる"という意味になる。
英国王室のウィリアム王子までも(もちろん服は着たままだが)フル・モンティ・ダンスを披露したり、チャールズ皇太子もヒューゴ・スピアーらとともにTVでダンスを踊ったりと、国中でブームが巻き起こった。
TV番組「世界ウルルン滞在記」シェフィールド編によると、この映画のヒットによって、男性ストリップチームがたくさん誕生したという。 イギリスの男性ストリップはプロ意識が高いため、日本やアメリカのそれと違って、パンツにおヒネリをはさんだりするような行為は失礼にあたるとか。女性の誕生日パーティに出前することも多いという。
番組中で取り上げられていたチームは、この映画のサウンドトラックCDを使用しているらしく、「You Sexy Thing」、「You can leave your hat on」、「Hot Stuff」などの曲に乗って踊っていた。警官や士官のコスチュームの人気が高いとか。
1998年英アカデミー賞・作品賞、観客賞、主演男優賞(R.Carlyle)、助演男優賞(T. Wilkinson)受賞、8部門ノミネート
1998年米アカデミー賞・音楽賞受賞の他、3部門ノミネート
(その他)1999年度英国映画協会によるベスト100作品:25位にランクイン
Crookes Cemetery, Sheffield, Yorkshire (墓地)
Bacon Lane, Sheffield, Yorkshire (運河)
Shiregreen Working Mens Club, Sheffield, Yorkshire (ストリップをやる店)
Peveril Road, Sheffield, Yorkshire (ロンパーの家)
Sanderson Special Steels, Sheffield, Yorkshire
Whirlow Park Road, Sheffield, Yorkshire (ジェラルドの家)
Eversure Textiles, Sheffield, Yorkshire (前妻マンディの工場)
Meadowbank Road, Sheffield, Yorkshire (デイブの家)
Langsett School, Burton Street, Sheffield, Yorkshire (Job Club)
Ruskin Park, Sheffield, Yorkshire
Pepes, Cambridge Street, Sheffield, Yorkshire (Burger Bar)
Ski Village, Sheffield, Yorkshire
Manor Oaks Road, Sheffield, Yorkshire (Keep Fit sequence)
Robert Carlyle .... Gaz
Tom Wilkinson .... Gerald (元・工場主任)
Mark Addy .... Dave (Gazの友人・太っている)
Paul Barber .... Horse (年寄り)
Steve Huison .... Lomper (赤毛でタレパイ)
Hugo Speer .... Guy (体は立派だがダンス下手)
・・・ファンサイトHugo Speer HeavenEmily Woof .... Mandy (Gazの元妻)
Lesley Sharp .... Jean (Daveの妻)
William Snape .... Nathan (Gazの息子)
June Broughton .... Lomperの老母
Glenn Cunningham .... 警官
Official Site:Fox Searchlight
サウンドトラック:国内盤・US・UK / "More Monty!"
書籍:Screenplay
書籍:The Full Monty Handbook
Simon Beautoy (著) ペーパーバック (1997/09) St. Martin's Press
(1997年 イギリス 93分)
こちらをごらんください
監督:Fred Schepisi
原作はDavid Hareの人気戯曲(1978年ロンドンで初演)で、彼自身が脚本を担当。
第二次大戦中のフランスでレジスタンスとして活動していた英国人女性スーザンは、パラシュートで落ちてきた兵士ラザールと忘れられない出会いをした。彼女は終戦後イギリスに戻るが、戦争中の輝かしい記憶のためか、日々の生活が色褪せて見える。何かに飢え自分の情熱をまっとうしようとする女性の愚かしくも激しい生きざまを、1943年から1961年、第二次大戦〜エリザベス二世の戴冠式〜スエズ動乱などを背景に描く。
(Susanが外務省高官のAndrew Charleson卿に夫の昇進をかけあう場面)
Susan:本心を言えない職業(外交官)を嫌になることは?
Sir Andrew:外交官の仕事はそういうものです・外交術で英国人(English)にかなうものはいません。
皮肉にも大英帝国が栄えたとき外交官の数は600.帝国が崩壊した今その数6,000。 国力が弱まっただけ我々の過当競争は汚く過酷になった。 帝国の崩壊で信ずるものを失ったのです。英国人は感情がなく冷たいそうだな。
Susan:彼らは感情を隠しているのよ。They hide them from the world.
イングランド(ロンドンなど)、ベルギー、フランス、チュニジア
Meryl Streep .... Susan
Charles Dance .... Raymond Brock(Susanの夫・外交官)
Tracey Ullman .... Alice Park (Susanの親友・ボヘミアン的な女性)
Sam Neill .... Lazar(Susanがフランスで出会った男性)
Sting .... Mick(闇屋・Susanが子供を作るためだけにかかわりを持った男)
John Gielgud .... Sir Leonard Darwin(英国大使・Raymondの上司)
Ian McKellen .... Sir Andrew Charleson (外務省高官)
James Taylor .... Tony (Susanの同志・無線技師)
Hugh Laurie .... Harry
Roddy Maude-Roxby .... (戴冠式委員会議長)
Andrew Seear .... Ashley (戴冠式委員会の仲間)
(1985年 イギリス 119分)
ピーター・グリーナウェイ監督がシェイクスピアの「テンペスト」を元に独特の味付けで幻想的に仕上げた映像の魔術。
シェイクスピア役者・ジョン・ギールグッド畢生の名演技。キャリバン役のマイケル・クラークの狂気の演技が華を添える。音楽はお馴染みのマイケル・ナイマン。
John Gielgud .... Prospero
Michael Clark .... Caliban
Isabelle Pasco .... Miranda
Michel Blanc .... Alonso
Erland Josephson .... Gonzalo
Tom Bell .... Antonio
Kenneth Cranham .... Sebastian
Mark Rylance .... Ferdinand
Gerard Thoolen .... Adrian
Pierre Bokma .... Francisco
Jim van der Woude .... Trinculo
Michiel Romeijn .... Stephano
Orpheo .... Ariel
Michael Clerk (マイケル・クラーク)...スコットランド・アバディーン出身。ブリッティッシュ・ニューウェーブ・バレエの旗手で振付師も。
参考資料とソフト(外部リンク)
サウンドトラック(マイケル・ナイマン)
(1991年 英=仏 126分)
監督:Andre Techine
19世紀のヨークシャー地方・ハワースの陰鬱な荒野で生涯のほとんどを過ごした三姉妹とその兄弟ブランウェルの秘めた情熱を描く。(フランス語作品)
このフィルムの冒頭には、現在はロンドンのNational Portrait Gallery所蔵になっている、ブロンテ姉妹の有名な肖像画が登場する。 作者はブランウェルで、左からアン(14歳)、エミリー(16歳)、シャーロット(18歳)が描かれているが、当初はエミリーとシャーロットの間にブランウェルの顔もあったが、後に消されてしまった。(映画の中でもこのシーンが出てくる。芸術家を志しながらも酒と阿片に溺れ自滅していったブランウェルがどうして自分の顔だけを消してしまったのか・・・彼の痛ましい生涯を象徴している。)
1836年にシャーロットが桂冠詩人のロバート・サウジーに詩を送って返事をもらう場面が出てくる。サウジーは彼女の詩才を認めながらも、文学は女性の一生の仕事にはなり得ないと釘をさした。ヴィクトリア朝の女性の職業は限定されており、教師・家庭教師になるか結婚して家庭に入るしかなかった。のちに三姉妹が小説を出版するにあたって男名前をペン・ネームに使ったのもそのためだろう。(ジョルジュ・サンド、ジョージ・エリオットなども女性でありながら男性を思わせるペンネームを用いた)
三姉妹の作品が出版された当時、一番人気があったのはシャーロットの「ジェイン・エア」だった。エミリーの「嵐が丘」も"シャーロットの人気に便乗したやっつけ仕事"だと陰口を言われる。シャーロットの「ジェイン・エア」はサッカレーにも賞賛され、ヴィクトリア女王も気に入って夫のアルバート公に読み聞かせたという。→『嵐が丘』 『ジェイン・エア』
1948年ブランウェル31歳、エミリー30歳で相次いで他界、翌年アンも死亡。一番長生きしたシャーロットも結婚の翌年に38歳で死去。
特に明示されていないが、ヨークシャーのハワース地方で撮影されたと思われる。ヒースの花、荒涼とした原野、なだらかな丘の場面が幾度となく挿入される。
Isabelle Adjani .... Emily (『嵐が丘』の作者)
Marie-France Pisier .... Charlotte (『ジェイン・エア』の作者)
Isabelle Huppert .... Anne (『アグネス・グレイ』の作者)
Pascal Greggory .... Branwell (ブロンテ家の長男)
Patrick Magee .... 父親・牧師
Roland Bertin .... Nicholls (のちにシャーロットと結婚)
Xavier Deprax
Alice Sapritch
Jean Sorel (ハリファクスの彫刻家リーランド)
Helene Surgere .... Mrs Robinson (Branwellの雇い主の奥方)
(1978年 フランス 115分)
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