監督・脚本:リチャード・カーティス
一年で最も愛があふれる季節クリスマスに交差する、19人の年齢・人種・国籍・社会的立場も全く異なった男女が織りなす9つの愛のかたち。
ドラッグに溺れてすっかり落ちぶれていた老ミュージシャンのビリー(ビル・ナイ)。再起を賭けたクリスマス・ソングをリリースし、長年のマネージャーであるジョーと二人三脚で頑張っている。彼の新曲がヒットチャートの一位に躍り出て、エルトン・ジョンのパーティにまで招かれたが、ビリーは自分が最も愛している人の元へ走る。
英国首相の座に着いたばかりのデイヴィッド(ヒュー・グラント)は若くて独身。首相官邸入りするやいなや、ちょっと太目なお茶汲みの女の子ナタリーに心を奪われてしまう。就任早々、米国大統領との首脳会談を迎えるが、大統領がナタリーにちょっかいを出しているのを目撃した彼は動揺し・・・
妻を亡くして悲しみに暮れるダニエル(リーアム・ニーソン)。友人のカレンも何かと気遣ってくれる。ところが最近亡き妻の連れ子サムが部屋に閉じこもって口も利いてくれない。母を亡くしたショックかと思いきや、実はサムは幼いながらも学校一の人気者の女の子への切ない片思いに悩んでいた。
デザイン会社の社長ハリー(アラン・リックマン)は、長年連れ添った妻カレン(エマ・トンプソン)と3人の子供に囲まれ幸せな家庭を築いていた。ところが彼は部下のミアに誘惑され、妻に秘密で彼女への高価なクリスマスプレゼントを用意していた。それに気づいたカレンは衝撃を受け・・・
ハリーの会社の社員サラ(ローラ・リニー)は、もう2年以上も同僚のカールに片思い。やっとのことでカールへの想いが遂げられそうになった瞬間、彼女の携帯のベルが鳴る。それは彼女の精神を病んでいる弟からのものだった。
弟に恋人を奪われた悲しみから、南仏に傷心旅行にやってきたジェイミーコリン・ファース。Alone again, Naturally.しだいに毎日コテージに通ってくるポルトガル人のメイドオーレリアに惹かれるようになる。互いに言葉がわからないながらも心が通じ合うふたり。
輝くような笑顔を振りまく花嫁のジュリエット(キーラ・ナイトレイ)とその新郎ピーター。そのカップルを複雑な思いで見つめるのはピーターの親友マーク。実はマークは親友の彼女であるジュリエットにずっと片思いしていた。彼女への想いを隠そうとついよそよそしい態度をとってしまうマーク。ある日、結婚式の時に彼が撮影していたビデオを見せて欲しいとジュリエットが訪ねてきて・・・
モテない青年コリンは、アメリカに行きさえすればイギリス英語に弱い開放的なアメリカン・ガールをいくらでもナンパできると一念発起。そんなにうまくいくはずがないと笑われながらも、ウィスコンシンに渡った彼を待っていたのは・・・
映画の撮影現場でスタンド・イン(代役)として、カメラ・テストで濃厚なラブ・シーンを演じているジョンとジュディ。次第に意気投合するふたりだったが、毎日肌を触れ合わせていながらなかなか自分の気持ちを打ち明けられず・・・
どの家もクリスマスツリーやリースが飾られ、クリスマスムード一食だが、特に詳細に見ることができるのはカレンとハリーの家。届いたクリスマスカードが飾られ、クリスマスツリーの下にはプレゼントが、テーブルにはクリスマスに付きものの菓子「ミンス・パイ」が載っているのが見える。
『ブリジット・ジョーンズの日記』 Bridget Jones's Diary (2001)でクリスマスにブリジットがヤケ食いしていたのがこのお菓子。
16世紀エリザベス朝からのクリスマスの伝統的な食べ物で、その形状はキリストの眠る揺りかごを表わしたものとされており、クリスマスから十二夜(公現節)までの間に12個のパイを食べると、新しい年に幸運が訪れるという言い伝えがある。もともと「ミンスミート」は、ビーフなどの挽肉(=mince)を長持ちさせるために、スパイスとドライフルーツを加え脂肪で固めたものだったが、時代とともに肉の割合が少なくなってゆき、現在では中身に挽肉を入れることは少なくなり主成分はドライフルーツ。また、クリスマスには聖歌隊が家々を回ってクリスマス・キャロルを歌って回るという習慣がある。ジュリエットの家を訪ねたマークはラジカセでクリスマス・キャロルを流しながら、声を出さずに彼女にメッセージを伝える。彼女の夫ピーターは玄関に来たのが聖歌隊だと思って、ジュリエットに小銭をあげるように伝えている。
また、ワンズワースに住むナタリーを訪ねた首相は彼女の家を探して通りにある家を一軒一軒訪ねて回る。ある家では聖歌隊と間違えられ、警備のGavinとともに歌を歌うはめに。
イギリスではクリスマスにヤドリギ(ミスルトー)の下にいる人にはキスをしても良いという習慣がある。ボスのハリーにアプローチを続けるミアは、ヤドリギの下でキスされたいと彼に告げる。
クリスマスの時期は一年で最も消費活動が活発になるとも言われており、街中クリスマス・ショッピングのムード一色になっている。カレンとハリーの夫婦もデパートselfridgesに行き、親しい人たちへのプレゼントを買いに来た。ハリーはカレンのいない間に秘密のプレゼントを買おうとするが・・・
他のヨーロッパ諸国に比べると教会に足を運ぶ機会が極端に少ないといわれているイギリス人だが、誕生(洗礼)、結婚、葬式の時には教会が登場する。
ジュリエットの結婚式では友人たちが嬉しい驚きを企画していた。
ダニエルの妻の葬式は、故人の遺言でベイシティ・ローラーズ(イギリス出身のポップグループ)の曲が流される。
ダウニング街10番地、首相官邸で閣僚が揃った会議中、気分転換になるのはやはりティータイム。ちょうどタイミングよく秘書のナタリーが紅茶とチョコレートビスケットを運んでくる。
妻に先立たれて落ち込むダニエルの家を訪ねたカレンが持っていたのは、「Waitrose」というスーパーのビニール袋。彼のダイニングテーブルにも、Waitroseプライベートブランドのコーンフレークの箱が見える。ウェイトローズはTesco等と違いちょっと高級でposhなスーパー。この何気ない場面にも、ダニエルとカレンが所得や階級が比較的生活水準が高いクラスに属することがわかる。(反対に『ノッティングヒルの恋人』Notting Hill (1999) のヒュー・グラントのフラットにあったのは、Tescoのビニール袋)
ロンドン近郊のニュータウンBasildon出身のコリンはハンサムとは程遠いルックスで、女性に近づいても失敗ばかり。冷たい英国女性にアプローチするよりも、いっそアメリカに渡って魅力的なアメリカ娘たちをナンパしてやろうと一念発起。「アメリカ娘はキュートなブリティッシュ・アクセントに弱いのさ」
この新興住宅地「Basildon出身」というところに、コリンの「イケてなさ」が端的に現れている。また、コリンが渡った先であるアメリカ北部ウィスコンシンも、ニューヨークやロサンジェルスといった洗練された大都会とはかけ離れた場所。 そんな田舎でとびきりの美女たちにめぐり合えるというところが既に夢のようなシチュエーション。
バーで知り合った女の子たちは、コリンの英国訛りに大喜び。「bottle」「straw」は英国風アクセントがはっきりわかるが、「table」は米語も英語も変わらないと言う。
ナタリーはワンズワースのダサイ側(Dodgy end:ヤバイ側)、Harris streetに住んでいると言っている。ワンズワースはテムズ南岸にある地区で、どちらかといえば労働者階級が多く住む町。(ナタリーも会話の端々に「sh*t」や「f*ck」を連発するところから、上流階級からは程遠い庶民であることがうかがえる)首相はナタリーを訪ねに行く途中、テムズにかかるアルバート・ブリッジを渡って南岸に行く。ナタリーの隣にはハリーの部下ミアが住んでいた。
Wandsworth Borough Council
www.wandsworth.gov.uk
麻薬に溺れて一時第一線から遠ざかっていたミュージシャンのビリー。久しぶりの新曲は、"Love is all around"の替え歌"Christmas is all around"。(元歌はTroggs、WET WET WETがカバーして大ヒット。)そのビデオ・クリップはまるで80年代のロバート・パーマーのビデオ・クリップのようにモデル風美女を回りにはべらせて歌うスタイル(このビデオを見て、ダニエルの義理の息子サムは女の子にもてるにはミュージシャンにならなければと決意する)。
テレビやラジオに出演するたびに危険な発言を連発して周囲をハラハラさせる。あるTV番組では「ライバルはBlueだ」と言い切り、彼らのポスターに落書きまでする始末(注:Blueは人気絶頂のイギリスのポップグループ)。
www.officialblue.comビリーはクリスマスにエルトン・ジョンのパーティーに招待される。 「エルトン・ジョンのところに10分もいたらゲイになっちゃう(Ten minutes at Elton's and you're as gay as a maypole. )」などという台詞も。注:ポップ・スターSirエルトンはゲイ。
200年前の力関係は逆転し、現在は何かとアメリカから圧力をかけられがちなイギリス。首相会談後の記者会見で若き新首相は、報道陣を前にアメリカ大統領にガツンと言ってやる。「我々はsmall countryかもしれないが、チャーチルやシェイクスピア、ビートルズ、ショーン・コネリーやハリー・ポッターを生んだ国だ!」 イラク問題で"プードル"と批判されたガツンと言えないブレア首相に対する皮肉?
ビリーの新曲は、『フォー・ウェディング』Four Weddings And a Funeral(1994)のテーマソングでもあった「Love is All Around」のメロディ。結婚式と葬式の場面があるも「フォー・ウェディング」を連想させる。
ジェイミー(コリン・ファース)が池に飛び込む場面は、イギリスのみならず世界中の女性の心をとろかしたあの有名な『高慢と偏見』Pride and Prejudice (1995)でコリン・ファースが演じた池に飛び込むシーンへのオマージュか。
かつて栄光の座にあった落ちぶれたミュージシャンという役柄は、同じくビル・ナイが演じた『スティル・クレイジー』 Still Crazy (1998) のロッカーよう。
ダニエルの前に現れる"クラウディア・シーファーそっくりの美女"は、シーファー本人が演じている。
・・・「世の中に嫌気が差したらヒースローの到着ゲートへ・・・」再会する人々の愛と喜びに満ちた笑顔があふれる場所として印象的に登場。
Heathrow,Middlesex
Trafalgar Square, London WC2N 5DN
シティにあるSirノーマン・フォスターによる建築で、通称「ガーキン(ピクルスに使う小ぶりのきゅうり)」。IRAのテロにより爆破された旧Baltic Exchange跡に建てられている40階建てのビル。
30 St Mary Axe, EC3
・・・冬季はスケートリンクとして賑わう場所。 スケートをする人々が映し出されている
The Strand, London WC2
・・・ピーターとジュリエットの結婚式が行われた教会
South Audley Street, London W1K 2PA
・・・ピーターとジュリエットのウェディング・パーティー会場
136 Grosvenor Road, London SW1 3JY
・・・ローワン・アトキンソンが店員を勤めるデパートとして
400 Oxford Street,London W1
Regent Street,London
・・・マークの家がある地域として。若手アーティストが住むにふさわしい、近年再開発された活気に満ちた場所。
10 Downing Street,Westminster, London SW1
・・・首相官邸の近くから見える
Riverside Building, County Hall, Westminster Bridge Road, London SE1 7PB
・・・首相がワンズワースに向かうときに通る橋
Albert Bridge Rd, Battersea, London SW11
Bramley Road, London W10 6SP
The Queen's Walk, London SE1 2AA
Barge House Street, South Bank, London
・・・ワンズワースのHarris Streetとして
St Paul's Churchyard, London EC4M 8AD
www.stpauls.co.uk
Borough, London SE1
151 Queensway, Bayswater, London W2 4QS
Lisbon, Portugal
Provence, France
(interiors and exteriors)
英アカデミー賞(BAFTA):助演男優賞受賞(ビル・ナイ)、英国作品賞・助演女優賞(エマ・トンプソン)ノミネート
Bill Nighy .... Billy Mack (ミュージシャン)
Gregor Fisher .... Joe (Billyのマネージャー)Colin Firth .... Jamie Bennett (作家)
Lucia Moniz .... Aurelia (ポルトガル人のメイド)
Sienna Guillory .... Jamie's Girlfriend (Jamieの恋人)
Dan Fredenburgh .... Jamieの弟Liam Neeson .... Daniel(妻をなくしたばかりの男性)
Thomas Sangster .... Sam (Danielの亡き妻の息子)
Olivia Olson .... Joanna Anderson(Samの憧れの女の子)
Ruby Turner .... Mrs. Jean Anderson(Joannaの母)
Claudia Schiffer .... Carol (ダニエルと親しくなる女性)Emma Thompson .... Karen(ハリーの妻、英国首相の姉)
Alan Rickman .... Harry(会社経営)
Heike Makatsch .... Mia(ハリーを誘惑する部下)
Laura Linney .... Sarah(ハリーの部下・Karlに片思い)
Michael Fitzgerald .... Michael(Sarahの弟、障害を持つ)
Rodrigo Santoro .... Karl(ハリーの部下・Sarahの片思いの相手)Martin Freeman .... John(代役俳優)
Joanna Page .... Just Judy (代役女優)
Abdul Salis .... Tony (助監督・コリンの友人)
Alan Barnes .... 監督Keira Knightley .... Juliet(Peterの妻)
Chiwetel Ejiofor .... Peter (Julietの夫・Markの親友)
Andrew Lincoln .... Mark (アーティスト・Julietに恋する)Hugh Grant .... 英国首相
Nina Sosanya .... Annie (首相官邸職員・黒人女性)
Frank Moorey .... Terrence (首相官邸職員・中年男性)
Jill Freud .... Pat the housekeeper (首相官邸職員・中年女性)
Martine McCutcheon .... Natalie (首相官邸職員・少し太め)
Billy Bob Thornton .... 米国大統領Kris Marshall .... Colin Frissell (アメリカに憧れるもてない男性)
Rowan Atkinson .... Rufus(セルフリッジの宝石売場店員)
www.loveactuallythemovie.com/
www.loveactually.com/
www.uipjapan.com/loveactually/
『Love Actually』(英文スクリプト):(1) (2)
『ラブ・アクチュアリー』(英文・和訳対照脚本) DHC完全字幕シリーズ
(2003年 イギリス 135分)
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