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タイトル*こ


『恋はハッケヨイ!』Secret Society (2000)

監督:イモジェン・キンメル
脚本:イモジェン・キンメル / カトリオーナ・マクゴーワン
衣装デザイン:スザンナ・バクストン・・・『ディファレント・フォー・ガールズ』
相撲指導:シド・ホアー・・・英国相撲協会チェアマン

Story

ヨークシャーのとある田舎町に住むアツアツの新婚夫婦、ちょっと太目のデイジーと彼女にぞっこんのケン。 ところがケンが突然失業し、生活に困ったデイジーは缶詰工場に働きに出ることに。 工場の作業員は女性ばかりで、毎日が単純作業のきつい仕事。 しかし従業員の中にやけに体格のいい女たちがおり、就業後まとまってどこかに消えてゆくのだ。 ・・・それはなんと秘密の相撲クラブ! 主任のマーリーンはデイジーの素質を見抜き、「あなたならきっと横綱になれるわ」と励まし、稽古に誘う。これまで太っていることでからかわれたりしてコンプレックスを抱いていたデイジーは、次第に自信を取り戻し相撲の世界にのめりこんでゆく。 一方で、毎晩デイジーの帰りが遅いことを心配した夫のケンはひそかに愛妻の行動を探るが、SFマニアのケンはデイジーが宇宙人に乗り移られてしまったと誤解して戦々恐々。 さて、デイジーは相撲取りとして成功できるのか、そしてケンとデイジーの愛の行方は・・・?

 

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ふくよかな女性たち

イギリスにはオッ!と驚くほどふくよかな女性たちがけっこういて、デイジーくらいの体格の女性は珍しくない。工場主任に誘われて、太目さん専用のディスコに踊りに行ったりもするが、フロアにあふれた女性たちの大群は「イギリス中から」集まったのではなく、「ヨークシャーじゅうから」集まっただけという設定もすごい。

Piggy In The Middle

仕事帰りのデイジーが故障したバイクを押しながら歩いていて、若い男たちにからかわれる場面。男どもは「Piggy In The Middle, Piggy In The Middle(字幕:ブタさんこちら)」と歌いながらデイジーのヘルメットをくるくると投げていたが、これはイギリスの子供たちの遊びのひとつで、もともとは「Piggy In The Middle」と歌いながら3人くらいでボールを投げあいっこして、中心にいる一人がそのボールをインターセプトするというもの。

一般には「Piggy In The Middle」という熟語で「板ばさみになった人」という意味。モンティ・パイソンのファンなら、ラトルズ(The Rutles)のナンバーに「Piggy In The Middle」という曲があったのを思い出す方も多いだろう。

缶詰工場

デイジーが働く缶詰工場では、グリーンピースのほかに茹でニンジンやソーセージの缶詰なども扱っていた。日本ではニンジンやソーセージの缶詰はなじみが薄いが、イギリスでは定番。茹でたジャガイモの缶詰だってポピュラーなのだ。(参考:『ウィッカーマン』 The Wicker Man (1973) )

SFマニア

ケンとその友達のビリーは揃って重度のSFマニア。ビリーの勤め先であるレンタル・ビデオ店の店主もSFマニアで、人を集めて講演会を開いたりもする。もともとイギリスにはこうしたオタク的に宇宙人やU.F.O.を好む人々がおり、日々マニアックな研究にいそしんでいるとか。

紅茶

ケンとデイジーが家で飲んでいる紅茶の銘柄はTyphoo。マグカップにポイッとティーバッグを放り込んで紅茶を飲んでいた。

日本趣味

缶詰工場の主任マーリーンの部屋は徹底した日本趣味のインテリア。相撲を通じて日本文化にも興味を持ったのか。禊の儀式、「心技体」の精神、着物、太鼓・・・少々勘違い気味ではあるが、細部にまで凝っていて笑える。

職業安定所でDaisyを缶詰工場にスカウトした女性が着ていたのは、ミヤケ・イッセイ(プリーツ・プリーズ)のシャツ。プリーツが横方向に伸びるので着る人のサイズを選ばないし、縦ラインが強調されるので着やせして見えるというすぐれもの。相撲を含めて日本文化に興味のあるふくよかな女性にはぴったりのワードローブ。
(着物はV&A美術館でリサーチしたとか!)

相撲

行司役として登場するシド・ホアーは、過去12年英国相撲協会のチェアマンの要職にあり、国際相撲協会の運営委員も務めているという重鎮で、Channel 4(イギリスのTV局)の解説者としても知られている。柔道のオリンピック金メダリストでもある。(オフィシャルサイトより)

 

ロケ地

Doncaster, South Yorkshire
マン島
ケルン(ドイツ)

キャスト

Charlotte Brittain .... Daisy
Lee Ross .... Kenny (Daisyの夫)
Annette Badland .... Marlene Anderson (缶詰工場主任)
James Hooton .... Billy(SFマニア)

主演のシャーロット・ブリテンは『同級生』 Get Real (1998) にも出演。

(2000年 イギリス 96分)

オフィシャルサイト
公開時コピー:泣いて、笑って、つっぱって。恋の決め手は上手投げ!


Go! Go! L.A.L.A. Without a Map (1998)

監督・脚本:Mika Kaurismaki
原作:Richard Rayner_Los Angeles Without a Map_

 

Story

22歳で父の後を継いでブラッドフォードで葬儀屋を営んでいるリチャード。仕事は順調、婚約者は資産家の娘・・・と、何不自由ない日々を送っていたが、実は脚本家になるという夢を秘めていた。

そんな彼に訪れたひとつの転機。どんよりと曇ったヨークシャーの空の下、偶然観光旅行でその地を訪れていた米国人女性バーバラに一目ぼれしてしまい、仕事も婚約者も捨てて陽光きらめくカリフォルニアに旅立ったのだ。

英国の片田舎に住んでいたリチャードにとって、何もかも派手で陽気なロサンジェルスと、そこに生きるショービズ界の人々には戸惑うばかり。困り果てた彼を助けてくれた"cool"なミュージシャン、モスに世話をしてもらい、少しずつL.A.での足がかりを築いてゆく。
しかし、そう簡単に彼の恋が成就するはずもなく、思わぬ恋敵が現れる野心万々の若手監督パターソンだ。女優の卵のバーバラも彼のことを憎からず思っている様子。リチャードはL.A.に馴染めるのか?そして彼の恋の行方は・・・?

 

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英国V.S.米国のカルチャー・ショック

イングランド北部の曇り空の下に住んでいたリチャードにとって、底抜けに明るいカリフォルニアでのできごとはすべてがカルチャーショック。イギリス英語の発音をからかわれたり。 アメリカ人にとって、とても「cute」と感じるようだ。

スコットランド出身

リチャードは「スコットランド生まれで、ブラッドフォードで葬儀屋を営んでいる」という設定。よくこの作品のあらすじに「スコットランドの葬儀屋が」とあるが、彼の葬儀屋自体はイングランドにあるので正しくは「スコットランドの葬儀屋が」と書くべき。

行く先々で「English!(=イギリス人、イングランド人)」と言われるが、そのたびに「Scottishだ(=スコットランド人だ)」と訂正し続けている。

日本料理店

リチャードは、バーバラが持っていた日本料理店「ヤマシロ」のマッチを手がかりに、ロサンジェルスに旅立つ。この日本料理店は業界人も良く出入りするお店で、バーバラの友人ジュリーも働いていた。

レニングラード・カウボーイズ

ミカ・カウリスマキ監督とも縁の深い(*)フィンランドのバンド、「レニングラード・カウボーイズ」が、ヴィンセント・ギャロとセッションするシーンは見物。
*ミカ・カウリスマキ監督の弟、アキ・カウリスマキ監督がレニングラード・カウボーイズの映画を撮っている。

 

ロケ地

Bradford, West Yorkshire

UK Street Map

Undercliffe墓地(Bradford, West Yorkshire)

・・・冒頭の葬列の場面
UK Street Map

アメリカ(L.A.、ラスベガス)

 

キャスト

David Tennant .... Richard(英国人・元葬儀屋)
Vinessa Shaw .... Barbara (女優の卵)
Julie Delpy .... Julie(バーバラの親友)
Vincent Gallo .... Moss (リチャードの友人)
Cameron Bancroft .... Patterson (若手監督)
James LeGros .... Takowsky
Saskia Reeves .... Joy
Joe Dallesandro .... Michael

特別出演:
Leningrad Cowboys ・・・ギャロとのライヴの場面が
Johnny Depp・・・『デッドマン』のポスターの中からリチャードに語り掛ける
Anouk Aimee
Robert Davi
Monte Hellman・・・(『断崖』の監督)レストランの客として
Amanda Plummer・・・リチャードが働くプールのオーナー

主演のDavid Tennantはスコットランド出身。英国演劇界で活躍中。
『バタフライ・キス』のSaskia ReevesとAmanda Plummerが再共演。

(1988年 英=仏=フィンランド 107分)

原作:_Los Angeles Without a Map_
by Richard Rayner(Paperback)


『コーンウォールの森へ』All the Little Animals (1998)

監督:ジェレミー・トーマス・・・『ラスト・エンペラー』などの製作で知られる大物プロデューサーの初監督作品
原作小説:Walker Hamilton

Story

ボビーは子供の頃の事故が原因で知能に障害を持つ繊細な24歳の青年。母を亡くして悲しみに沈む彼の気持ちなどお構いなしで、継父は彼に遺産相続を放棄させようと脅迫・虐待する。可愛がっていたペットを殺され、自らの身の危険をも感じたボビーはロンドンを離れてはるか遠くコーンウォールまで逃げる。
そこで出会ったのは、車に撥ねられた動物たちを弔って歩く風変わりな老人サマーズ氏。どんな小さな動物も尊厳を持って扱われるべき---そんな哲学に共感を覚えたボビーは、彼を慕い助手としてそばに置いてくれるよう頼む。老人はどこか暗い過去を秘めているようだったが、ふたりの暮らしは幸せに満ちていた。しかしボビーの継父と話をつけに行こうとしたことから、悪夢のような悲劇が・・・

 

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アーサー王と妖精伝説〜コーンウォールとグラストンベリー

継父の魔の手から逃れようとしたボビーが行き先を聞かれたとき、口をついて出てきたのはコーンウォールという地名。このケルトの薫り高く、昔から中央権力の手の届かない辺境の地とみなされてきたイングランド南西部の半島は、妖精やアーサー王伝説の舞台でもある。本能的に古代の神話・伝説を秘めた土地に逃れたいと思うのは、自然な心の動きだろう。

ロンドン郊外でトラベラーズの家族に拾ってもらったボビーは、コーンウォールに行く途中、グラストンベリーで車を降ろされてそこで夜を明かす。ボビーが眠っていた場所はグラストンベリー・トール(Glastonbury Tor)というアーサー王伝説縁の場所。この高い円錐形の小山の上には、聖ミカエル礼拝堂が建っている。また、聖コフレン伝説ではこの小山の上に妖精界の王グウィン・アプ・ニズの宮殿があると伝えられており、このグラストンベリー・トールがアーサー王伝説の「アヴァロン」という説もある。また、アーサー王の遺体はグラストンベリーの修道院に納められたという伝説も。

2番目にボビーを乗せてくれた大型トラック運転手は「Truroに行く」と言っていたが、Truroはコーンウォールの州都。

参考資料(解説は後述):
『アーサー王ロマンス』井村君江・著/ちくま文庫
『コーンウォール』井村君江・著/東京書籍

コーニッシュ・アイスクリーム

ボビーが海岸の屋台にコーニッシュ・アイスクリームを買いに行く場面がある。
コーンウォールでは良質な乳製品が有名で、コーンウォール産のクロテッドクリームを特に「コーニッシュ・クリーム」と呼ぶほど。アイスクリームも名産のひとつで、コクがある風味豊かな味わいはやみ付きになる。

コーンウォールと廃坑

この地方は昔から錫(すず)や石炭を産出することでも知られており、現在は採算が合わずに廃坑にしてしまったような跡があちこちに見られる。このような廃坑がクライマックスで重要な役目を果たすのだが・・・

 

ロケ地

コーンウォール

グラストンベリー(Glastonbury Tor), Somerset

マン島(Ballabeg/Big old house, Douglas/Marown) >> www.manxfilms.com

ロンドン郊外

 

キャスト

John Hurt .... Mr Summers(風変わりな老人)
Christian Bale .... Bobby Platt (知能に障害がある青年)
Daniel Benzali .... De Winter (Bobbyの継父)
James Faulkner .... Mr Whiteside (De Winter氏の顧問弁護士)
John O'Toole .... Bobbyを乗せてくれた非情なトラック運転手
Amy Robbins .... Bobbyの亡き母
John Higgins .... Dean(Bobbyの世話係)

ロンドン郊外でヒッチハイクしていたBobbyを乗せてくれたトラベラーズ一家の子供に、『フェアリーテール』のエリザベス・アールが。

サマーズ=夏、デ・ウィンター=冬という役名も寓話的。

 

参考資料とソフト

『アーサー王ロマンス』井村君江・著/ちくま文庫

『コーンウォール』井村君江・著/東京書籍
著者はケルト神話、アーサー王伝説、妖精伝説の権威。『コーンウォール』は、実際にコーンウォールに暮らしている著者ならではの深い洞察と研究に裏打ちされた読み応えある本。図版も豊富なのでおすすめ。

(1998年 イギリス)


『5シリングの真実』The Winslow Boy (1999)

監督・脚本:デビッド・マメット
原作戯曲:テレンス・ラティガン
音楽:

Story

1912年のロンドン。クリスマスを間近に控えたウィンズロー家では、長女キャサリンの婚約者を迎えて華やかな雰囲気に包まれていた。ところがそこへ王立海軍寄宿学校に行っていた末っ子のロニーが突然戻ってくる。級友の現金為替5シリングを盗んだという疑いをかけられて、退学処分になってしまったのだという。息子の無実を信じる父親は、切れ者の弁護士モートン卿に依頼。この問題はマスコミによって国民的関心事となる。長引く戦いでウィンズロー家の財政を逼迫し、やがては家長であるアーサーの健康を蝕み、長女の縁談にも暗い影が差すように。はたしてウィンズロー少年の名誉は回復されるのか・・・?

テレンス・ラティガンの戯曲を原作に味わい深い台詞を生かした丁寧なつくりが静かな感動を呼ぶ佳作。

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モデルとなった事件

この原作戯曲は、実際の事件にヒントを得て創作された・・・ 1908年にワイト島のオズボーン海軍士官学校(Naval College at Osbourne)で学ぶ13歳の少年George Archer-Sheeが5シリングの郵便為替を盗んだと疑われ、退学になった。父親のMartin Archer-Sheeは裕福なリバプールの銀行支配人。 この事件当時、士官学校では複数の生徒が容疑をかけられていたが、ジョージだけが咎められ退学処分になったのは、彼の家庭がカトリックであったことも関係しているという説もある。 リバプールはイギリスの中でも特にカトリック系の住民が多い地域だが、プロテスタントが大勢を占めるイギリスでは、少数派であるカトリック教徒は何かと偏見を受けやすい存在。

モートン卿のモデルとなった敏腕弁護士Edward Carsonは、オスカー・ワイルド裁判でクイーンズベリー侯爵側の弁護士として名を馳せた有名人。 彼の弁舌の成果か、1909年に時の国王エドワード七世は権利の請願を受け入れ、それに「(Let Right be Done)」と署名し、1910年に再審議の結果少年の無実は証明された。しかし保守党議員となったジョージの兄Martin Archer-Shee Jr.の運動もあって、賠償金として3,000ポンドが支払われたものの、公的な謝罪文書はついに送られることはなかった。

戯曲化するにあたって、"36歳の保守党議員"であったロニーの兄をオックスフォードの大学生に、ロニーの姉を女性参政権運動の活動家という設定にした。

女性参政権運動

1889年にEmmeline Pankhurstらが最初の婦人参政権団体を設立し、その5年後に地方参政権が実現していた。Pankhurstらは1903年にマンチェスターで社会政治団体を立ち上げ、その後活動の本拠をロンドンに移した。1910年には一部の女性に参政権を与える法案が国会で審議されたがアスキス首相によって却下された。それ以来活動は激しさを増し、婦人参政権論者の中には、ハンガーストライキを試みたり、窓ガラスを割ったり、自らを鎖で郵便ポストにくくりつけたり、馬車の前に身を投げ出したりする過激な行動に出るものが少なくなかった。キャサリンの「他の運動家のように窓ガラスを割ったり、ピラー・ボックスに体を縛り付けたりはしませんわ」という台詞は、こういった運動があったことを示している。彼女はこの運動が実を結ぶかどうかわからないとモートン卿に語っていたが、婦人参政権が実現したのは、ウィンズロー少年事件の18年後、1928年のこと。

国会議員の給与

弁護士のモートン卿は下院議員として国政の一端に携わる立場にいたが、国会議員に給与が支払われるようになったのは1911年からのこと。 先祖代々の遺産があるか、本人に相当の収入がない限りは国会議員として活躍することも難しかった時代。

権利の請願(the Petition of Right)

女王や海軍は過ちを犯さないという前提なので、裁判で訴えることはできない。その代わりに「権利の請願」というかたちで訴えを聞いてもらう手続きをとる。1628年に議会から国王Charles一世に請願したものもこの「権利の請願」。

クリケット

Winslow家の顧問弁護士デズモンドは、昔は有名なクリケットの選手だった。 この事件を取材に来た女性記者は、掲載する写真を撮影するにあたって(読者に好感を与えるために)ウィンズロー少年にクリケットのユニフォームを着るように言う。

テレンス・ラティガンの戯曲

テレンス・ラティガンによる戯曲は、1908年に13歳の海軍士官候補生が5シリングの郵便為替を盗んだと疑われた実際の事件に想を得た作品。この原作では時代を1912〜1914年に移しすべてはサウス・ケンジントンにあるウィンズロー家の居間で展開する。当初モートン卿役にはジョン・ギールグッドがオファーされていたが、彼が断ったためEmlyn Williamsに変更になり、1946年にウェストエンドのリリック・シアターで初演された。この舞台は1年を越えるロング・ヒットとなり、ラティガンはエレン・テリー賞を受賞し、翌年NYブロードウェイ公演も大ヒットした。1950年にはアンソニー・アスキス卿によって映画化もされており、その時ロニー少年を演じたNeil Northは、本作で海軍大臣を演じている。

ロケ地

ウィンズロー家として、ロンドン南部Claphamにある屋敷が使用された。

 

キャスト

Jeremy Northam .... Sir Robert Morton (敏腕弁護士・下院議員)

Nigel Hawthorne .... Arthur Winslow
Gemma Jones .... Grace Winslow (Arthurの妻)
Rebecca Pidgeon .... Catherine Winslow (長女)
Matthew Pidgeon .... Dickie Winslow (長男)
Guy Edwards .... Ronnie Winslow (次男・14歳)
Lana Bilzerian .... Undermaid
Sarah Flind .... Violet (Winslow家のメイド)
Colin Stinton .... Desmond Curry (Winslow家の顧問弁護士・Catherine に思いを寄せている)

Aden Gillett .... John Watherstone (キャサリンの婚約者)
Neil North .... 海軍大臣

キャサリン役のRebecca Pidgeonは、デビッド・マメット監督夫人。

参考文献・ソフト

オフィシャルサイト(英語)
www.spe.sony.com/classics/winslowboy/

(1999年 アメリカ 104分)


『ことの終わり』 The End of the Affair (1999)

監督・脚本:ニール・ジョーダン
原作:グレアム・グリーン
音楽:マイケル・ナイマン
衣装:サンディ・パウエル

Story

第二次大戦直後1946年のある夜、作家のモーリス・ベンドリックスは、旧知の間柄であるヘンリー・マイルズを見かけて声をかける。ヘンリーは妻サラが浮気をしているかもしれないという悩みに取り付かれてひとり雨の中に佇んでいたのだ。ベンドリックスは以前サラと不倫の恋に溺れていたのだが、2年前その関係は突然終わりを迎えた。ヘンリーの話から、サラに新しい愛人"第三の男"ができたのではないかと嫉妬にとりつかれた彼は、探偵に調査を依頼する。そして明らかになった意外な真実とは・・・?

 

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原作者グレアム・グリーン(1904-1991)

原作者のグレアム・グリーンは、20世紀を代表する小説家のひとり。オックスフォード大学ベーリオルコレッジで学び、1926年にカトリックのヴィヴィアンと結婚したのをきっかけに、自身もカトリックに改宗する。

1951年に発表されたこの作品には、彼自身の不倫の恋(相手はアメリカ出身の人妻キャサリン・ウォルストン)が投影されているといわれている。グリーンもキャサリンとルールズで、ステーキのつけあわせの玉ねぎをたっぷり食べていた。そしてキャサリンもカトリック。

"The End of the Affair"は1955年にデボラ・カー主演で映画化されている他、『第三の男』、『ブライトン・ロック』、『落ちた偶像』(キャロル・リード監督作品)、『ヒューマン・ファクター』『ハバナ』など、多くの作品が映画化されている。
>>『情事の終わり』The End of the Affair (1955)

スペイン内乱(1936-1939)

ベンドリックスが初めてサラに出会ったマイルズ家のシェリー・パーティー(1939年夏)では、スペイン内乱の影響で南アフリカ産のシェリーが振る舞われていた。シェリー酒はスペイン産のものが有名だが、内乱のため手に入らなかったものと思われる。

スペインでは1936-39年の内乱を経て、フランコを総統とする軍事独裁政権が成立していた。ベンドリックスもこのスペイン内乱に参加して負傷したという設定になっている。当時ヘミングウェイをはじめとして文化人や作家などがこぞって志願兵となって戦っていた。ベンドリックスもこのスペイン内乱に参加して負傷したという設定になっている。(映画『情事の終わり』では、第二次大戦で負傷したという設定)

ルールズ(Rules)

ベンドリックスとサラがいつも通っていたレストラン「パーマース」のモデルは、有名な老舗レストラン「ルールズ」。尾行していたパーキス氏が「子供連れでは入れなかった」と報告している通り、1798年にオイスターバーとしてオープンした高級レストラン。メニューは伝統的な英国料理中心。グレアム・グリーンもここで愛人のキャサリン・ウォルストンと玉ねぎ料理を食べた。彼が利用していた部屋も現存する。
住所:35 Maiden Lane WC2 (Covent Garden駅下車)

勲章

ヘンリーは今度O.B.E.をもらうことになったとサラに告げる。「O.B.E.はC.B.E.へのステップで、退官したらK.B.E.をもらえるから、君はレディ・マイルズになる」と。(日本語字幕ではなぜか"C.B.E.をもらう"となっていたが、本当はO.B.E.であることを確認)
O.B.E.とは大英帝国勲章(Order of the British Empire)のこと。K.B.E.はナイト叙勲でSirの称号がつき、夫人にはレディの称号がつく。

V-E Dayの熱狂

対独戦争でドイツ軍降伏を記念した日。サラも、記録映画を見てVサインを出している熱狂的に喜んだ国民を眺めていた。VサインはVictoryの意味で、ウィンストン・チャーチルが使って広まった。

摂政皇太子とフィッツハーバート夫人

ブライトンのロイヤル・パヴィリオンの中で、これはプリンス・リージェント(摂政皇太子)が愛人のために建てたものだと切り出すベンドリックス。のちにジョージ4世となる摂政皇太子ジョージには、フィッツハーバート夫人という愛人がいたが、彼女がカトリックだったために、妃にはプロテスタントのカロラインを迎えた。(映画の台詞にもあるが、カロラインはかなり肥満体型だったらしい。)
プリンス・リージェントとフィツハーバート夫人は、映画『英国万歳!』The Madness of King George(1994) にも登場。

衣装

サンディ・パウエルの衣装デザインにも注目!
サラが身にまとっている、ワインレッドを差し色にした仕立てのいいツイードのスーツ姿。クラシカルだが艶っぽいガーター、ストッキング、靴。
素肌にそのままブレイザー(サスペンダー)をつけてひげをそるベンドリックス。
いかにも高級官僚らしいピンストライプの三つ揃いのスーツを着たヘンリー。

 

ロケ地

[ロンドン]

キュー・ガーデン

サラの屋敷の屋外シーンに使用。冒頭のパーティーの場面など。
Kew Green, Richmond, Surrey

Rule's(レストラン)

"レストラン・パーマーズ"として映画では外観のみ使用

Maida Vale Station

・・・サラが少年に声をかけて地下鉄の駅まで送っていく場面

Sheraton Park Lane Hotel

・・・ベンドリックスがサラとの再会の場所に指定したホテル。
現在はシェラトン系だが当時は「Park Lane Hotel」。アールデコ調のボールルーム(舞踏場)があることで知られる。
Piccadilly, LONDON W1Y 8BX(ハイドパーク・コーナー駅下車)
Website: www.sheraton.com

Whitehall Theatre

サラが逃げ込んだ、ヴェラ・リンの映画が上映されていた映画館(席数673)。1930年にE.A. Stoneのデザインによって建てられた。>>Web

Kensal Green Cemetery(W10)

サラを埋葬した墓地。>>UK Street Map

Battersea Park, London SW11

 

[ブライトン]

Palace Pier


遊園地のあるブライトン名物の桟橋

Royal Pavillion


ベンドリックスたちが室内コンサートを聴いている時に、ヘンリーがやってきた場所。

The Grand(ホテル)


1864年創業のブライトンの高級ホテル。
Kings Road, Brighon England BN1 2FW

 

原作の舞台設定

Clapham Common

テムズ南岸にある大きな公園。公園を挟んで北側はサラとヘンリーのような上流家庭が住むテラスハウスが並ぶ。ベンドリックスのフラットは、コモンを挟んで南側。ベンドリックスからの電話に家を飛び出し、タクシーに乗ったサラを、彼はクラパム・コモンを突っ切って追いかけて行く。

3 Vigo Passage

サベージ氏の探偵事務所のある場所。原作と映画『情事の終り』ではVigo Streetとなっている。
Vigo streetはRegent streetから脇道に入ったところにある中心街に近い位置。

Cedars Road

サラが訪ねていった"第三の男"が住んでいると思われるフラット。クラパム・コモンのすぐ近く(UK Street Map)

St.Joseph Church

サラが訪れたカトリック教会

Cafe Royal

原作ではここでベンドリックスとサラが再会する。リージェント・ストリートにある有名な店で、オスカー・ワイルドもお気に入りだった。

Rule's

原作でふたりがよく通っていたレストラン。映画では「パーマーズ」という名前になっている。グレアム・グリーンが使っていた部屋が今でも残っている。

Leinster Terrace

原作でふたりが初めての情事に及んだのは、この通りにあるホテル。(映画ではサラの屋敷で)

 

Awards

英アカデミー賞脚色賞受賞、他9部門ノミネート(作品・監督・脚色・主演女優・主演男優・音楽・撮影・美術・衣装・メイクアップ)
ゴールデングロ−ブ4部門ノミネート(作品・監督・主演女優・音楽)
米アカデミー賞2部門ノミネート(主演女優・撮影)

キャスト

Ralph Fiennes.... Maurice Bendrix (作家)
Julianne Moore .... Sarah Miles(Henryの妻)
Stephen Rea.... Henry Miles (高級官僚・サラの夫)
Ian Hart .... Mr Parkis(私立探偵・Savage氏の部下)
Sam Bould .... Lance Parkis (Parkins氏の息子)
Jason Isaacs .... Richard Smythe
Deborah Findlay .... Susan Smythe(Smythe氏の姉)
James Bolam .... Mr Savage(私立探偵事務所の所長)
Simon Turner .... Doctor Gilbert

(1999年 イギリス101分)

Official Site(英語・日本語)

Video
Soundtrack
Book(1)_(2)
Audio Cassette


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