タイトル*た
監督:ジュリー・テイモア・・・舞台版『ライオンキング』でトニー賞受賞
原作:シェイクスピア「タイタス・アンドロニカス(Titus Andronicus)」
(シェイクスピア作品のなかでもマイナーな作品なので、あらすじを全部書いてみました。未見の方のために後半は白色にしてありますので、最後まで読みたい方はマウスで選択し反転させてください)
ゴート族を制圧し凱旋した勇将タイタス。彼は戦死した息子たちの魂を慰めるために、人質として連行したゴート族の女王タモラの長子を生け贄として捧げた。必死の命乞いもむなしく息子を殺されたタモラは、残されたふたりの息子カイロンとディミトリアスとともに、タイタス一家への復讐を誓った。
その頃ローマでは、亡き先代皇帝のふたりの息子、長男のサターナイナスと、その弟バシアナスが互いに次の皇帝の座をめぐって火花を散らしていた。しかしローマ市民を代表する護民官マーカス(タイタスの弟)は、祖国に勝利をもたらした人望の厚いタイタスを次期皇帝に指名する。しかしタイタスは皇帝の座を固辞し、長幼の序列を重んじ兄のサターナイナスを皇帝に推薦してしまう。サターナイナスはタイタスの娘の美しいラヴィニアを妃に望み、タイタスは娘が弟皇子バシアナスと恋仲であることを知りながら承諾。この決定に反対した末子ミューシャスは父の手にかかって殺されてしまう。しかしタイタスが凱旋土産に連れてきた美貌の女王タモラを一目見た新皇帝は、あっさり心変わりして彼女を妃に迎える。タモラは密かに復讐の炎を燃やしながらも、より苦痛を味わせるためにタイタスを皇帝にとりなすのだった。
(これより先、ネタバレになりますので字を白色にしてあります。マウスで選択し反転させて読んでください。)
皇后という地位に上り詰めながら、タモラはひそかにムーア人のアーロンを愛人にしていた。以前からラヴィニアに関心を持っていたタモラの息子たちは、アーロンにけしかけられて皇帝臨席の狩りの日に弟皇子バシアナスを殺害し(タイタスの息子たちがその罪をきせられた)、ラヴィニアを強姦したうえ非情にも舌を切り落とし両手首を切断した。
"冤罪で死刑に処せられることになった息子たちを返して欲しかったら、一族の誰かの片手を差し出せ"皇帝からの使者と偽ったアーロンの言葉を信じて、自分の手首を切断し助命を乞うタイタスに寄越されたのは、哀れ息子たちの生首だった。怒りに燃えたタイタス一族。今やラヴィニアを強姦した犯人もタモラの息子たちだとわかってしまった。長男のルーシャスはローマに兵を挙げさせるためにひとりゴートに向かった。
皇后タモラは出産するが、生まれてきたのは紛れもなくアーロンの血を受け継いだ黒人の赤ん坊。困惑したタモラは赤子をアーロンの元につかわす。その頃、タイタスの名誉を回復したいという願いも皇帝に無視され、長男ルーシャス率いるゴート族もローマに近づきつつあった。
ルーシャス軍はアーロンとその赤ん坊を捕らえ、アーロンはこれまでの陰謀を告白し、自らの命とひきかえに我が子の助命を願う。タイタスのもとに変装してやってきたタモラとその息子たちはたくらみを見破られ、息子たちは捕らえられる。皇帝・皇后臨席の宴に見事なミートパイを用意したタイタスは、ふたりの目の前で愛娘ラヴィニアの命を絶ち、今食べたばかりのパイに入っていたのはタモラの息子たちの肉だと告げる。怒り狂った皇帝皇后を殺すもタイタスも絶命。新皇帝に選ばれたルーシャスはタイタスの名誉を回復し、この血で血を洗う復讐劇は幕を閉じたのだった。
シェイクスピア作品のなかでも最も初期に書かれたと思われる、血で血を洗う異色の残酷復讐劇で、近年あまり上演・映画化されることがなかった。判断を誤ったために破滅する「リア王」、ムーア人のコンプレックス「オセロ」など、のちの作品に見られる人物造形の片鱗が見られる。また(原作の台詞でも言及されているが)敵国に助けを求めて自分を裏切った母国を攻めさせるという状況は「コリオレーナス」を思い起こさせる。
古代ローマの鎧を着けた武人がいるかと思ったら、アメ車やビリヤード台、ペプシ缶なども登場し、豪華絢爛な衣装とあいまって、独特の世界を作り上げている。皇帝サターナイナス役のアラン・カミングがはまりすぎ。
(Actors/Actress A to Zで紹介していないキャストのみ)
Matthew Rhys(デミトリアス):ウェールズの首都カーディフ生まれ。RADA出身。『ハート』(1999) では交通事故で亡くなった青年(心臓提供者)の役を。
Osheen Jones(小ルーシャス):1980年代に一世を風靡した歌手ハワード・ジョーンズの息子。RSC版『夏の夜の夢』、『ベルベット・ゴールドマイン』(ジャック・フェアリーの少年時代)など、名子役として活躍。
サター ナイナスとバシアヌスが次の皇帝の座をめぐって対立する場面で振っていた旗は、現在ローマでライバル同士のサッカーチーム、A.S. Roma(黄/赤)と、S.S. Lazio (白/水色)と同じ色だそうだ。
この作品を観て「ミートパイが食べたいなぁ」と思われた方は、こちらへどうぞ。>>ミート・パイ
*でも使用する肉は牛や豚にしてくださいね。
ムッソリーニの庁舎、カラカラ浴場、ハドリアヌス帝別荘、コロシアムなど
[タイタス一家]
Anthony Hopkins .... Titus Andronicus (ゴート族征討の将軍)
Laura Fraser .... Lavinia (タイタスの娘)
Angus MacFadyen .... Lucius (タイタスの息子)
Osheen Jones .... 小Lucius(タイタスの孫・Luciusの息子)
Kenny Doughty .... Quintus(タイタスの息子)
Blake Ritson .... Mutius(タイタスの息子)
Colin Wells .... Martius(タイタスの息子)
Colm Feore .... Marcus Andronicus(タイタスの弟・護民官)[ゴート族のタモラ一家]
Jessica Lange .... Tamora (ゴート族の女王・のちローマ皇后に)
Raz Degan .... Alarbus (タモラの長男・生け贄に)
Jonathan Rhys-Meyers .... Chiron(タモラの次男)
Matthew Rhys .... Demetrius(タモラの三男)[ローマ皇帝とその周辺]
Alan Cumming .... Saturninus (故ローマ皇帝の長男・のちに皇帝に)
James Frain .... Bassianus(故ローマ皇帝の次男・ラヴィニアの恋人)[その他]
Harry J. Lennix .... Aaron (ムーア人)
Geraldine McEwan .... 乳母
(1999年 アメリカ 162分)
監督:Compton Bennett
脚本:Muriel Box / Sydney Box
世界的に有名なピアニスト、フランチェスカ。事故で運び込まれた病院から抜け出し自殺を図ったところを助けられ、精神分析医ラーセンが治療を担当することに。自殺の原因を探るために催眠療法を用いているうちに、彼女を苦しめていた過去、三人の男性をめぐる心理的な葛藤がヴェールを脱ぐように明らかになってゆく・・・。
タイトルの「第七のヴェール」は、オスカー・ワイルドの戯曲「サロメ」によるもの。サロメが身につけた7枚のヴェールを、一枚、また一枚と剥ぎ取っていくように、催眠療法によってフランチェスカの隠された胸のうちを明らかにしていくさまをあらわす。
スーザンにそそのかされて授業に遅刻してしまったフランチェスカは、教師からひどい体罰を受ける。柳のムチで手のひらをひどく打たれるというものだが、イギリスの学校では伝統的な体罰。現在は法律で禁止されているが。
ニコラスに音楽の才能を認められたフランチェスカが進学したのは、ロンドンのRoyal College of Music。ここと、隣にあるRoyal Albert Hallは映画『シャイン』にも登場。
ロイヤル・アルバート・ホール
ロイヤル・カレッジ・オブ・ミュージック
ショパン、ラフマニノフなど、有名なピアノ曲がふんだんに使われている。
1947年米アカデミー賞脚本賞受賞(Muriel Box /Sydney Box )
James Mason .... Nicholas (Francescaの父のいとこ・後見人)
Ann Todd .... Francesca Cunningham (ピアニスト)
Herbert Lom .... Doctor Larsen (精神分析医)
Hugh McDermott .... Peter Gay (アメリカ人・Royal College of Musicの学生)
Albert Lieven .... Maxwell Leyden (画家)
Yvonne Owen .... Susan Brook (Francescaの学生時代の友人)
(1946年 イギリス 94分 B&W)
ドキュメンタリー映画出身のNick Broomfield監督による初めてのフィクション作品。
伯爵家の息子Hugoは、元軍人、ポロ選手・・・と輝かしい経歴を持ち、現在は実業家として会社の顧問を務めている。元モデルの美しい妻はキャリアウーマンとして忙しい毎日を送っていたが、Hugoは妻が仕事仲間のRaulと浮気をしているのではないかという疑念を抱いていた。
ある夜軍人時代の仲間とのパーティの帰りに飲酒運転で女性をはねてしまう。たったひとり警察を呼ぼうと主張したJamieを押し切り、一緒に乗っていた仲間たちは事故を秘密裏に処理する。
やがて休日を過ごすために妻子と共に訪れた父の屋敷を舞台に、Hugoの妻に対する疑惑とひき逃げ事件の苦悩は妄想へと変わっていく・・・
Hugoの父であるCrewne卿のカントリー・ハウス(城)は、観光客に公開しているらしい。「明日から一般公開です」と、執事がロープを張って準備をしている場面がある。
屋敷内の由緒ありげな甲冑、絵画、重厚な家具、Four-postered bed(四柱式ベッド)の数々はため息もの。ジャギュアやロールス・ロイスなど高級車が目白押し。貴族の富の象徴のひとつであるオランジェリー(温室)もある。Hugoがポロ(馬上からスティックを使って球を打つ競技で、上流階級のスポーツとされている)をする場面も。
事件の現場となったロンドンのBelgraviaは、高級住宅街として有名なエリア。被害者はLady Castlemereの屋敷で働く料理人だった。
Hugoの母である伯爵夫人はRebeccaに招待されたJamieが上流階級でないことで見下げている態度をとる。彼は学費が払えず助成金を受けて大学に進学していた。
また、Hugoの妻Ginnyに対する台詞にも上流階級の奢りが感じられる。
Rebeccaは伯爵家の財産がほとんど兄のものになってしまうこと強い不満を抱いている。わがままいっぱいに育った奔放な娘。 彼女はかなり歯並びが悪いが、イギリスは上流階級でもアメリカ人のように神経症的に歯並びを気にすることは少ないとか。
現在ボーディング・スクール(寄宿学校)に通っている。 パブリック・スクールへの進学を前にしていたが、それは「Edwardが生まれる前から決まっていたことだ」とGinnyが言う場面が。上流階級では子供が生まれたときにパブリック・スクールへの入学を申し込んでおくことが多い。 受験にはコネも重要らしい。
Jamieと彼の仲間たちが、女王のパレードに備えて練習をする場面がある。 おなじみの黒く背が高い帽子をかぶり、肩当て布付きのセーター(ウーリープーリー)を着ている。
Thirsk近郊にあるお城。このThirskはドクターヘリオットの舞台でもあり、Yorkからもほど近い。(情報提供:Eikoさん)
17世紀の銀行家Duncomb卿がバッキンガム公から購入した中世の城。 協力者のクレジットにこの城の持ち主であるThe Right Honourable Lord and Lady Feyrshamの名前がある。
ドーバー海峡近くの白い崖
Gabriel Byrne .... Hugo Crewne
Amanda Donohoe .... Ginny(Hugoの妻・元モデル)
Struan Rodger .... ピーター・エグルトン(Hugoの軍人時代の仲間)
Douglas Hodge .... ジェイミー・スキナー大尉Jamie(近衛兵・Rebeccaと交際中)
Peter Sands .... Colonel
David Delve .... Alec
Ralph Brown .... Jack
Alexander Clempson .... Edward (Hugoの息子)
Catherine Livesey .... Nanny(Edwardの乳母)
Michael Hordern .... Lord Crewne(Hugoの父・伯爵)
Judy Parfitt .... Lady Crewne(Hugoの母)
Sadie Frost .... Rebecca Crewne(Hugoの妹)
Ian Carmichael .... Exeter(執事)
Matthew Marsh .... Raul(Ginnyの友人・アルゼンチン人)
Phyllida Hewat .... Lady Castlemere(ひき逃げ被害者の雇い主)(1989年 イギリス 89分)
監督:ジョン・マッケンジー
原作・脚本:フレデリック・フォーサイス
製作総指揮:F.フォーサイス、マイケル・ケイン
1987年、冷戦下のソビエト連邦の秘密情報機関KGB。西側の軍事組織の要であるNATOを瓦解させる計画のために、腕利きの工作員ペトロフスキー少佐をイギリスに潜入させていた。
一方、英国情報部MI5では、中途入省の反骨精神あふれる情報部員プレストンの活躍により、NATOの軍事機密を流していたMI5部員を捕まえたが、彼は長官代理のスミスに反発したために空港・海港担当に左遷されてしまう。ところがプレストンはその部署で東側船籍の乗組員の事故死に遭遇し、原爆の起爆装置に使われる部品を発見する・・・。
フレデリック・フォーサイスのベストセラー・スパイ・アクション小説の映画化。
ペトロフスキー少佐が潜入していたRAF"Baywaters空軍基地"は、イースト・アングリア地方(イングランド東部)にあるという設定らしい。他にもKGBの無線専門家が「コルチェスター行きのIntercity」に乗ったり、プレストンがペトロフスキー少佐を追跡する際「サフォークからイプスイッチ方向に南下」していたりと、イーストアングリア地方の地名が多く出てくる。
RAF: http://www.raf.mod.uk/
映画ではペトロフスキーがコルチェスターに入国したのが発見されたという台詞があったと思いますが、大陸からのフェリーが着くのは内陸のコルチェスターでもなく、海から程近いイプスウィッチでもなく、フェリックストウなので、これは映画の誤りと思われます。
原作の舞台はイングランド南西部で、周囲の国立公園(野鳥の王国)が核で破壊されるというのが重要な鍵でした。フェン地方の自然が破壊されるといってもインパクトに乏しいので、反米国感情を扇動するというプロットが活きません。
現実的には、RAFの基地は東部に偏在していますが、これは対独戦の時代の名残です。
冒頭に退役した元大佐として出てくるのが、ソビエトに亡命したかつてのダブル・スパイ、キム・フィルビー(英国人)。本名はハロルド・エイドリアン・ラッセル・フィルビー。ケンブリッジ大学トリニティ・コレッジで学ぶ。1937-9年はスペイン内戦をフランコ政権側から報道。その後英国情報部で約30年、ダブル・スパイ活動を続ける。1963年にイギリスからソビエトに亡命。
ダブル・スパイ事件
キム・フィルビーと同じくケンブリッジ出身者のダブル・スパイにはガイ・バージェス、ドナルド・マクリーン(1951年亡命)、アンソニー・ブラント(1979年公的に発覚。1983年没)らがいた。(映画『アナザー・カントリー』はガイ・バージェスの青年時代について描かれたもの)
軍事機密を流している疑いのあるブレンソンを尾行していた場面。地下鉄Hyde Park Corner駅から乗り込み、次の駅で下車し長いエスカレーター、長い連絡通路を通って乗り換える。(たぶんGreen Park駅?この駅は乗り換えにけっこう歩く) 連絡通路にはミュージシャン気取りの若者がいたりするのもよく見る光景。
地下鉄の車内で、スキンヘッズの若者二人が黒人女性に差別的な言葉を投げかけいじめている場面も。
部屋には大きなクリスマス・トゥリーが飾ってあり、ひもにはたくさんのクリスマスカードが吊るしてある。
ペトロフスキーが潜伏先に選んだ貸し家にも、プレストンらがカフェの見張り用に借りた部屋にも、「To Let」という看板が出ていたが、これはイギリスでは「部屋(家)貸します」という意味。
クリロフ教授の息子が同性愛行為に耽っている証拠写真を突きつけられて脅される場面があるが、ソビエトのような共産主義国家では特に同性愛は御法度。発覚すると懲役5年もの刑に処される。
ペトロフスキー少佐の隣人の米国人、McWhirter夫妻。"ジム・ロス(偽名)"と名乗ったPetrofsky少佐を馴れ馴れしくさらに崩して"Jimmy"と呼ぶところがいかにもアメリカン。McWhirter氏が勤務するBaywaters米軍基地にPetrofskyを連れて行った時も、飲んでるビールはバドワイザー。
・・・ブレンソンの連絡場所となっていたピザ屋(UK Street Map)
(PetrofskyがVassilievnaと接触した場所)
(KGBの無線専門家がコルチェスター行きのIntercityに載る場面)
Newport Pagnell, Buckinghamshire, MK16 9JJ
www.chicheleyhall.co.uk
[英国情報部MI5]
Michael Caine .... John Preston
Julian Glover .... Brian Harcourt-Smith (長官代理)
Michael Gough .... Sir Bernard Hemmings(長官)
Ian Richardson .... Sir Nigel Irvine
Anton Rodgers .... George Berenson (NATOの機密書類を流していた男)
[KGBとその周辺]
Pierce Brosnan .... Valeri Petrofsky少佐(英国専門の工作員)
Ray McAnally .... General Karpov(中将・KGB第一副書記長)
Alan North .... General Govershin(KGB書記長)
Ned Beatty .... Borisov将軍
Joanna Cassidy .... Irena Vassilievna(Petrofskyのもとに派遣された核弾頭専門家)
Jerry Harte .... Krilov教授
Michael J. Jackson .... Pavlov少佐
Michael Bilton .... Kim Philby(退役大佐・英国から亡命)[その他]
Matt Frewer .... Tom McWhirter(Petrofskyの隣人・米国軍人)
Betsy Brantley .... Eileen McWhirter (その妻)
(1987年 イギリス 116分)
監督:ルイ・マル
「あなたと会えるから彼と結婚するのよ」・・・"息子の婚約者との恋"というショッキングなテーマを扱った作品。 原作はJosephine Hartの小説。
主人公スティーヴンは入閣も控えた敏腕政治家だったが、ある日パーティでフランス人アンナと運命的な出会いをする。ところが彼女は息子マーティンの恋人だった。彼の妻イングリッドは本能的にアンナを嫌う。 人目を忍んでむさぼるように互いを求める二人。 やがて事態は思わぬ方向へと・・・
スティーブンの妻イングリッドは、200年続いた古い家系の出で、彼女の父エドワードが政治家だったことから、スティーブンも同じ道を志した。いわば逆・玉の輿。彼らの結婚はSt. Anselm Churchで執り行われたとか。
イングリッドの父が所有するカントリーハウスも、壁に何枚もの肖像画がかかった豪華なもの。"ハートレー"という場所にあるらしい。夜にはみな暖炉の周りに集まってマシュマロを焼いている。スティーブンがうっかりテーブルクロスにこぼした赤ワインに、イングリッドが染みにならないようにすぐさま塩をかけている。ここでの暮しは、レンジローバー、ワックスドジャケット(バブアーのもの?)、ウェリントンブーツと、英国的エッセンスがいっぱい。
主人公が溺れていった破滅的な恋の相手は、一見すると特に色っぽくも美人でもない無口な普通の女性だった。 「たいして美しくもないジュリエット・ビノシュがどうしてあのファム・ファタル的な役を?」という声も良く聞かれるが、"She was no different from anyone else."という最後の台詞からもわかるように、普通の女性の中に隠された魅力、そして泥沼的な恋愛にはまり込んでしまう恋の不思議を描くにはぴったりの配役ではないだろうか。
アンナの母が宿泊していたのがこのホテル。
メイフェアのParklaneにある五つ星の高級ホテルで、ハイドパークが望める絶好のロケーション。1931年に建造され、1991に改装された。248室。
Hotel of the Yearや、The Best Hotel in the UK'といった栄誉に何度も輝いている。
ロンドン
ドーチェスター・ホテル
Jeremy Irons .... Doctor Stephen Fleming(政治家)
Juliette Binoche .... Anna Barton(Martinの恋人))
Miranda Richardson .... Ingrid Fleming (Stephenの妻)
Rupert Graves .... Martyn Fleming(Stephenの息子・新聞記者)
Ian Bannen .... Edward Lloyd (Ingridの父)
Peter Stormare .... Peter Wetzler (Annaの昔の恋人)
Gemma Clarke .... Sally Fleming (Stephenの娘)
Leslie Caron .... Elizabeth Prideaux (Annaの母)
Tony Doyle .... 首相
Ray Gravell .... Raymond (Stephenの仕事仲間)
David Thewlis .... Detective(1992年 英=仏 111分)
監督:Marleen Gorris・・・『アントニア』でアカデミー外国語映画賞を受賞したオランダの女流監督
脚本:Eileen Atkins
原作:Virginia Woolf
(1997年 英=オランダ 97分)
第一次大戦の傷痕も生々しい1923年6月のロンドン。その晩に開かれるパーティーの準備に余念のないクラリッサ・ダロウェイの脳裏をふと、まだ若かった頃の思い出がよぎる。親友サリーと笑いさざめく幸福に満ちた日々、求愛を拒絶した青年の真摯な目・・・
議員の妻として何不自由ない暮らしを送る中でふと歩みをとめ、過去と現在に意識をさまよわせながら、彼女は次第に現在の自分を再認識していくのだった。
原作は20世紀を代表する女性作家ヴァージニア・ウルフが1925年に著した作品。"意識の流れ"の手法を駆使し独自のスタイルを確立した作品として、英国文学史に重要な位置を占めている。
街の様子、衣装など、1920年代のロンドンを丁寧に再現している。30年前(1890年代)の娘時代の風俗との対比も鮮やか。
セプティマスという青年は、第一次大戦中に目の前で友人が吹き飛ばされるのを見てしまったことから、精神状態が不安定になっている。イギリスでは「Great War」といえば第一次大戦のことであって、第二次大戦ではない。一般市民をも巻き込んだ初めての戦争だったので、復員後も重い神経症に苦しむものが多かった。この作品の設定は第一次大戦の5年後(1923年)。参考:『ライアンの娘』
クラリッサはその晩のパーティーで完璧なホステス(=女主人)として賓客をもてなすために、準備に余念がない。メイドのルーシーが銀食器を磨いている間に、部屋に活ける花を用意したり忙しく立ちまわる。彼女の夫は有力な議員なので、パーティーには英国きっての大貴族マールボロ公爵夫妻や首相まで招待されていた。
クラリッサの娘エリザベスは、少々狂信的なカトリック信者Ms.キルマンに影響されて、教会の活動に携わっていた。一般的なイギリス人は比較的宗教心が薄く、英国ではカトリックが少し低く見られているため、クラリッサはそんな娘を見ていて心配でならない。キルマン夫人はパーティー好きなクラリッサに対して反感を抱いているようで、エリザベスにも教会の仕事を優先するように説く。ストイックな彼女はエリザベスとティールームに入っても、他のテーブルには三段トレイに盛られたお菓子が来ていても、紅茶だけで済ましているのか。
うるさ型のブルートン卿夫人に招待されたクラリッサの夫。ドアの脇には、靴の泥を落とすためのシュー・スクレイパーが見える。豪華なインテリアや食器にも注目。
娘時代のクラリッサが生きたヴィクトリア朝。"できちゃった結婚"をした女性のことが話題に上ったとき、もう我が家の敷居をまたがせないとみなで非難する。この時代は非常に厳格な道徳が重んじられた時代だったが、その反動で隠微な快楽に耽る者も多かった。男たちは「裏で娼婦を買っていながら」"できちゃった結婚"を激しく非難するという歪んだ時代でもあった。
色とりどりの花が咲き乱れる庭には噴水が配され、戸外でお茶の時間を楽しむ。若い頃のクラリッサはいつも白いドレスを身に纏い、親友のサリーと戯れていた。
この作品で脚本を担当したEileen Atkinsは、数々の栄誉ある賞に輝いた女優として知られており、近年はヴァージニア・ウルフ文学へのさまざまなアプローチを試みていた。
1989年にはVirginia Woolf原作の独り芝居"A Room of One's Own"に出演。1994年にはVita Sackville-WestとVirginia Woolfの書簡に基づいた舞台"Vita and Virginia"で、Virginia Woolfを演じた。ちなみにVita Sackville-Westを演じたのはVanessa Redgrave。
映画『ダロウェイ夫人』の脚本は、Atkinsの友人であるVanessa Redgraveのために書かれたもので、夫のBill Shepherdも製作総指揮をつとめている。
1882年1月25日ロンドンに生まれる。父はヴィクトリア朝の学者Sir Leslie Stephen、母はJulia Jackson Duckworth。1904年にブルームズベリー地区Gordon Square 46番地に居を構え、ここがのちにBloomsbury Groupとして知られる文人たちが初めて一堂に会した場所でもあった。(Bloomsbury Groupのメンバーには、作家のE. M. ForsterやLytton Strachey、経済学者John Maynard Keynesらがいた。)
1912年にLeonard Woolfと結婚。1915年に処女作"The Voyage Out"を、その後"Night and Day"(1919)、"Jacob's Room"(1922)、"Mrs. Dalloway"(1925)、"To the Lighthouse"(1927)、"Orlando"(1928)、"The Waves" (1931)、"The Years" (1937)と作品を発表した。評論"A Room of One's Own"(1929)、"Three Guineas"(1937)や、日記、書簡集なども1970年以降フェミニズムの立場からの研究が盛ん。シシングハーストを作ったヴィータ・サックヴィルウェストとの交友関係は有名。
1941年サセックスのウーズ川で入水自殺。
Regent's Park
マルベリー・ホテル
Jenkins Hotel(ピーターが宿泊)St. James Park
Duke of York Memorial(The Mallの脇にある)
Burlington Arcade(情報提供:by Eikoさん)
Vanessa Redgrave .... Clarissa Dalloway(52歳)
Michael Kitchen .... Peter Walsh
Rupert Graves .... Septimus Warren Smith (シェルショックに悩む青年)
Amelia Bullmore .... Rezia Warren Smith(セプティマスの妻)
Sarah Badel .... Lady Rosseter (親友Sally Seton)
John Standing .... Richard Dalloway (クラリッサの夫)
Katie Carr .... Elizabeth Dalloway (クラリッサの娘・17歳)
Oliver Ford Davies .... Hugh Whitbread (リチャードの友人)
Margaret Tyzack .... Lady Bruton (リチャードの友人・うるさ型のご婦人)
Robert Hardy .... Sir William Bradshaw (医師)回想場面
Natascha McElhone .... Clarissa
Alan Cox .... Peter(クラリッサに想いを寄せる青年)
Lena Headey .... Sally Seton(クラリッサの親友)
Robert Portal .... Richard Dalloway
Hal Cruttenden .... Hugh Whitbread
Official WebSite(First Look Pictures /ヘラルド)
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『ダロウェイ夫人』ヴァージニア ウルフ (著), 丹治 愛 (翻訳)
『ダロウェイ夫人』ヴァージニア ウルフ (著), 近藤 いね子 (翻訳)
(1997年 英=オランダ 97分)
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