タイトル*
監督:ジョン・シュレンジャー・・・本作で米アカデミー賞ノミネート
脚本:フレデリック・ラファエル・・・本作で米アカデミー賞受賞
撮影: ケネス・ヒギンズ
音楽: ジョン・ダンクワース
衣装デザイン:ジュリー・ハリス・・・本作で米アカデミー賞受賞
可憐な美貌ゆえ、誰からも「ダーリン」と呼ばれ愛されるダイアナ。流行の最先端を行く彼女はTV出演を機にジャーナリストのロバートと知り合う。ダイアナもロバートも互いに既婚者だったが、それぞれの配偶者を捨てロンドンで同棲生活を始める。 しかし美しいダイアナを周囲の男性は放っておかない。 多忙なロバートがいない寂しさからか、プレイボーイのマイルズと浮気したのを皮切りに、彼女は次々と男性遍歴を重ね、男たちのコネでモデルから女優へとキャリア・アップ、ついにはイタリアの公爵夫人の座を射止めてしまうのだが、ロバートへの想いはやみがたく・・・
ダイアナはパンツ・スーツをはいて流行の髪形で闊歩するモダン・ガール。1960年代のイギリスでこのようなファッションを選ぶのは、よほど流行の先端を意識した女性であることの証。スウィンギング・ロンドンと呼ばれた黄金の60年代ファッションが見もの。
グラス社のチャリティ・パーティでダイアナのことを指して「あのクランペットは誰?」という台詞が。「crumpet」というのはパンケーキのような食べ物のこと(レシピ)だが、俗語で「セクシーな女」という意味がある。
ふたりが借りたフラットのカーテンはウィリアム・モリスの柳柄。クリスマスになると、届いたクリスマスカードを飾って楽しむ。
市民にインタビューする映像で、「ここ数年でホモが増えた」と嘆く老人のコメントが流れる。
グラス社のチャリティー・パーティーの客の一人で、その後もたびたび登場するグラウジュ卿もみるからにゲイっぽい雰囲気を漂わせている。イギリスで同性愛を禁じる法律が廃止になったのは1967年のことで、それまではかなりタブー視されていたので、この映画の制作年代を考えると相当に勇気のある描写だったはず。
監督のジョン・シュレンジャーもゲイ。
また、堕胎が解禁されたのも同じく1967年のこと。ダイアナは普通に病院で手術を受けていたようだったが、この時代には公に手術が出来なかったので闇医者を頼る女性が多かった。
参考:『アルフィー』 Alfie (1966)
『土曜の夜と日曜の朝』 Saturday Night and Sunday Morning (1960)
マイルズと逢引きをしていたダイアナは、駐車時間超過で罰金を取られることに。 イギリスの料金メーターはあらかじめ必要な時間を見積もってコインを入れなければならず、予定時間を過ぎると高い罰金(Penalty)を払わされることに。もちろん時間内に早く帰ってきてもお釣りは返金してもらえない。Traffic Wardenと呼ばれる交通監視員が歩合制で精力的に見回っているので、気をつけなければいけないとか。
ロンドンの地下鉄は地下深くを走っている路線が多いので、エスカレーターも長ーくなる。長いエスカレーターの脇の壁には広告がたくさん貼られているのも、ロンドンを旅する人には見慣れた光景。 ダイアナとロバートはこの長いエスカレーターで喧嘩する。
スリルを求めてか、ダイアナが食料品をごっそり万引きしたのは、ピカデリーにある高級デパートフォートナム&メイソンの有名な(日本人観光客が必ず一度は訪れるという)食品フロア。紅茶やジャム、瓶詰め、冷凍食品などが並んでいるのが見える。
トラファルガー・スクエア(ロンドン)
フォートナム&メイソン(ロンドン)
ピカデリー・サーカス(ロンドン)
ヒースロー空港
ブリストル,Avonその他(パリ、ローマ)
米アカデミー賞:主演女優賞、脚本賞、衣装デザイン賞受賞
2部門ノミネート(監督賞、作品賞)ゴールデン・グローブ:英語外国語賞受賞
NY批評家協会賞:作品賞、女優賞、監督賞受賞
1999年度英国映画協会によるベスト100作品:83位にランクイン
Julie Christie .... Diana Scott
Dirk Bogarde .... Robert Gold (TVジャーナリスト)
Laurence Harvey .... Miles Brand (裕福なプレイボーイ)
Roland Curram .... Malcolm (カメラマン・ゲイ)
Alex Scott .... Sean Martin (映画監督)Jose Luis de Villalonga .... Cesare (イタリア貴族ロミタ公爵)
Carlo Palmucci .... Curzio(ロミタ公爵の息子)Helen Lindsay .... Felicity Prosser-Jones(ダイアナの姉)
Basil Henson .... Alec Prosser-Jones(ダイアナの姉の夫)
Tyler Butterworth .... William Prosser-Jones (ダイアナの甥)
Richard Bidlake .... Rupert Crabtree (ダイアナの姉の家の客人)
T.R. Bowen .... Tony Bridges (Dianaの最初の夫)
Pauline Yates .... Estelle Gold (Robertの妻)
Anne Firbank .... Sybil (Milesの妻)
Hugo Dyson .... Matthew Southgate (老作家)
Jean Claudio .... Raoul Maxim(映画監督)
Brian Wilde .... Willett (下院議員)
David Harrison .... Charles Glass (グラス社社長)
Peter Bayliss .... Lord Grant(ゲイ?ダイアナの知人)
(1965年 イギリス 123分)
監督:ルイス・ギルバート
脚本・原作:ウィリー・ラッセル(戯曲)
子供たちもすでに巣立ち、夫とふたりで平々凡々な毎日を過ごす中年の主婦シャーリー。若い頃はそれなりに夢も希望もあったのに、いつの間にか全ては日々の生活に埋もれてしまっていた。そんなある日親友にギリシャ旅行に誘われ、夫や娘の猛反対を押し切って生まれて初めての海外旅行をする。 眩しい地中海の太陽のもと、失われた自分自身を取り戻していくが・・・
『リタと大学教授』 Educating Rita (1983) の名コンビ、ルイス・ギルバート&ウィリー・ラッセルによる、大ヒット戯曲を原作にしたヒューマン・ドラマ。 舞台でもシャーリーを演じたポーリーン・コリンズは、この役でトニー賞を受賞している。
映画のロケには一部ロンドンが使われているが、原作戯曲ではシャーリー・ヴァレンタインの家はリバプールあたりにあるらしい。「Where's me steak!(俺のステーキはどこだ!)」と、 標準語で「my」となるべきところを「me」を使うあたりが、イングランド北部っぽい表現。
また、夫がシャーリーを迎えに空港で待っていたときも、友人のジェーンと同じ便でマンチェスターのダギー夫婦も帰国していたので、設定はイングランド北部ということなのだろう。
せっかくギリシャまで遊びに来たというのに、他のツアー参加客たちは異国情緒を楽しもうとせずに、「ディスコもない、バーもない」と自国にいるときと同じような快適性・利便性を求める。
「ギリシャはギリシャ的すぎてなじめない。スペインならいいけど」という台詞があるように、スペインがイギリス人にとってお気に入りの海外旅行先というのも、マヨルカ島などの有名観光地には英国風パブやらなにやら、イギリス人のための施設が揃っているからだそうだ。
マンチェスターから来たという俗物的なダギー夫妻も、そのようにギリシャを見下す観光客の仲間で、出された料理がイカだったと知った時、ショックで卒倒する。 (形を見れば一目瞭然のイカリングフライなのに) #このように保守的な英国人はイカ・タコの類を食べないが、私がスコットランドのシーフード・レストランに入った時にはたっぷり出てきたので、地域性にも拠るかもしれない。
ちなみにこの時のダギー夫妻は「マイケル・ケインも持ってるジャグジー(発音はジャクージ)」を自宅にもつけたと自慢している。
フィッシュ&チップスのみならず、イギリス人「ソーセージ&チップス」「チキン&チップス」など、チップス(日本でいう"フライドポテト")を付け合せにした軽食が大好き。 「チップス&エッグズ」は、たっぷりの油で揚げるように焼いた目玉焼き(英語でfried eggという)とフライドポテトのセット。
シャーリーの夫も普段は「チップス&エッグズ」が大好きだが、期待していたステーキが出てこなかったので激昂する。それまで迷っていたギリシャ旅行に行く踏ん切りがついたのも、そのことがきっかけだったのだが。
シャーリーが手伝いをしていたギリシャのレストランにやってきた、イギリス人の老夫婦。メニューを見てもなじめない料理ばかりで困っていたので、シャーリーが特別に彼らのためにエッグ&チップスをこしらえ、感謝される場面も。
「俺はいつも6時には夕食をとるんだ!(I'm always having a tea at six!」夕食の時間が遅れて怒りまくっている夫のジョーの台詞。 イギリス人は、特にワーキングクラスは、「tea」を「お茶」でなく「食事」の意味で使うことが多い。
ギリシャに出かけるのはラブ・アフェアを求めてのことだろうと周囲に勘ぐられたシャーリーは、やけになって運転手にこう言う:
「ギリシャにはセックスしに行くのよ。朝食にセックス、昼食にセックス・・・(I'm goin' to Greece for the sex. Sex for breakfast, sex for dinner, sex for tea, and sex for supper.)」
日本では「ディナー」というと「夕食」のイメージが強いが、イギリスではこのように「昼食」の意味で使うことが多い。そのかわり夕食は「supper」となる。(これに対する運転手の答えで、呼びかけに「love」という言葉を使うのもイギリスらしい。)
シャーリーの自宅の食卓には、定番のHPソースが。キッチンには、現在ではアンティークとなってしまったホウロウのブレッド缶が。 夕食の支度に使っているのは古風な丸いカッティング・ボード。置いてある買い物袋は大手スーパーSainsbury'sのもの。
シャーリーたちのように地方に住むワーキング・クラスの人々は、海外旅行どころか自分の街からさえ出たことがないという人間が少なくない。『ガールズ・ナイト』Girls' Night (1998) のヒロインも、『リトル・ダンサー』Billy Elliot (2000) のお父さんもそう。
ジェーンが当たった懸賞に便乗して、生まれて初めての海外旅行を決意したシャーリーは、緊張した面持ちでパスポートを作る。旅行のチケットを受け取ったのは、大手旅行会社Thomas Cook。
ジェーンが男性不信の女権主義者(雑誌"Cosmopolitan"を読んでいるというのがいかにも)になったのは、離婚の時のトラウマが原因らしい。夫がミルクマン(牛乳配達員)と寝ている現場を見つけてしまったというのだ。 ミルクマンはポストマン(郵便配達員)と同様、身近で、非常に信頼のおける存在と人々から愛されている職業。男性と浮気されたということに加えて、相手の職業が与えたショックも大きかったのだろうか。
高校時代のシャーリーは劣等生で、対照的にお上品な発音でしゃべる成績優秀な美少女マージョリーのことが気に障って仕方がなかった。 発音はその人の教育の程度やバックグラウンドを象徴する。
学校の先生もシャーリーをできない子と決めてかかっている。みなが答えられなかった問題にシャーリー一人が正解したときも、ズルをしたと決め付け、他の生徒たちに賛美歌「Jersalem」を歌わせて反省を促す。「Jersalem」は非常に愛国的な歌で、プロムス・ラスト・ナイトで歌われる定番でもある。
シャーリーの息子ブライアンは、自称・詩人(British's first ever street poet)で、独立して"ベイルートのような貧民街"に住んでいる。 周りではjoy rider(面白半分に自動車を盗んで乗り回す者)たちが走り回っているというすさんだ環境。 リバプール近郊のスラム街という設定だろうか。
娘のミランドラは同年代の女友達シャロンとフラット・シェアしている。
このように、イギリスの若者は成人したらいつまでも親元にいないで独立するのが普通。
Twickenham, England(Shirley Valentineの自宅)
Marylebone Station, London(Janeと旅行用の3分写真を撮った場所)
Littlewoods department store, Oxford Circus, Oxford Street, London
Marlborough Hotel, Bloomsbury, London(マージョリーの泊まっていたホテル)
Liverpool, Merseyside
ギリシャ、ミコノス島
英アカデミー賞:主演女優賞受賞、2部門ノミネート(脚色賞、作品賞)
米アカデミー賞:2部門ノミネート(主演女優賞、主題歌賞)
米ゴールデン・グローブ賞:3部門ノミネート
Pauline Collins .... Shirley Valentine-Bradshaw (42歳の主婦)
Bernard Hill .... Joe (シャーリーの夫)
Tracie Bennett .... Millandra (シャーリーの娘)
Gareth Jefferson .... Brian (シャーリーの息子・自称ストリート詩人)Tom Conti .... Costas (ギリシャ人)
Alison Steadman .... Jane (シャーリーの友人・女権論者)
Julia McKenzie .... Gillian (向かいの住人・poshな菜食主義者)Joanna Lumley .... Marjorie (女学校時代のクラスメイト・優等生だった)
Sylvia Syms .... 女学校の校長先生
Gillian Kearney .... 女学校時代のShirley
Catharine Duncan .... 女学校時代のMarjorieGeorge Costigan .... Dougie (マンチェスターからギリシャに来た観光客)
Anna Keaveney .... Jeanette (Dougieの妻)
(1989年 イギリス 109分)
監督:Bharat Nalluri
脚本:Caspar Berry
イングランド北東部ニューカッスルにある取り壊し寸前の高層ビルArmstrong House。廃墟同然のこのビルにはもう10家族くらいしか残っておらず、不良少年グループが残った住民たちを恐怖に陥れていた。元刑事の心理捜査顧問ロブは、幼い息子を連れて飛び降り自殺しようとするシングルマザーのクリシーを思いとどまらせようと説得。高所で目が眩んだロブの代わりに仲間のマイクが無事クリシー母子を救出した。
クリシーのことが気になって仕方がないロブは翌日クリシーを訪ねるが、彼女は頑なに心を開こうとしない。外に出ようと二人が老人パットとともに乗り込んだエレベーターは故障し、宙吊りになってしまう。 やがて不良グループのアジトになっていたエレベーターの管理室では、リーダーのジャッコらに怒りをぶつけたケビンのせいで火災が発生。エレベーターが制御不能に陥ってしまう。閉じ込められた三人は必死に脱出を図るが・・・
- エレベーターは英語で「Lift」、米語で「elevator」。
- 舞台となったビルは落書きだらけで荒んでおり、いかにも低所得者層向けの住居という雰囲気になっている。
- 喘息と言う持病のあるロブは吸入薬の入った器具が手放せない。彼の息子も喘息で幼いうちに死んでおり、それが妻が出て行った原因だった。
- 例によってアイルランド系女性を演じていると思われるスーザン・リンチ。 クリシーの口癖は「F*ck off!」などという お上品とは程遠い言葉だが、ロブが「Jesus !」と言う度にそれを止めるように注意する。 信心深いカトリックなら、神の名をみだりに口にすることをはばかるからだ。
設定はニューカッスルだが、実際のロケはリバプールで行われた。
リバプールで三番目に高かった高さ66メートル、22階建てのビル。既に1999年に解体されている。
http://www.skyscrapers.com/re/en/wm/bu/150438/
Paul McGann .... Rob(心理捜査官)
Susan Lynch .... Chrissy (26歳のシングルマザー)
Adam Johnston .... Jake(Chrissyの息子)
Denise Bryson .... Jan (Chrissyの隣人の女性)
Tom Georgeson .... Jimmy (Janの夫)
Birdy Sweeney .... Pat (Jimmyの父・エレベーターに閉じ込められる老人)
David Horsefield .... Kevin(JimmyとJanの息子)
David Roper .... Mike (Robの友人・刑事)
Stephen Graham .... Jacko (不良少年のボス)
www.geocities.com/Hollywood/Set/3432/downtime.html
(ポール・マッガンのファンサイト内)ポール・マッギャン ポール・マクガン
(1997年 イギリス 90分)
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