タイトル*と
監督:カレル・ライス・・・『フランス軍中尉の女』 『裸足のイサドラ』
脚本・原作: アラン・シリトー
制作:Tony Richardson / Harry Saltzman
音楽:John Dankworthトニー・リチャードソン監督に見出された、チェコスロバキア出身の監督カレル・ライスの長編映画デビュー作。
舞台はイングランド中部の工業都市ノッティンガム。やり場のない怒りを抱える反抗的な若い労働者アーサーの仕事は騒がしい工場での単純労働。こんな職場でも出世意欲を隠さない同僚のジャックに冷ややかな視線を投げかけている彼は、ジャックの妻ブレンダと密かに情交を重ねていた。その一方でパブで出会った美少女ドーリンを恋人にしながらも、周囲に知られることを怖れてなかなかおおっぴらにデートも出来ない。ある日ついにブレンダがアーサーの子を身ごもっていることが発覚。夫のジャックにも知られてしまい・・・
イギリスの「怒れる若者たち(Angly young men)」を代表する作家アラン・シリトー作品を映画化した辛口の社会派ドラマ。
機械音がうるさく鳴り響くかなり騒がしい工場で、月曜から金曜まで働いて週休14ポンド程度。(ただ、1960年代の地方都市の工場でも週休二日が確立されているところが日本との差だろうか)
ティータイムになるとおばさんがまとめてお茶を入れて、配ってまわる。
労働者はみな自転車通勤だが、ジャックだけサイドカー付きバイクに乗っているところが目を引く。
いとこのバートは炭鉱労働者で、幼い頃からアーサーの遊び友達だったらしい。ふたりは河(運河?)でよく一緒に釣りをしているが、フライ・フィッシングではなく餌釣り(coarse fishing)のようだ。
パブで見かけた美少女DoreenにArthurは目を奪われる。家族と共に来ていた彼女がオーダーしていたのはクリスプス(ポテトチップ)。酒に強いアーサーがスタウト(アルコール度が強く苦いビール)を飲んでいたのに対し、彼女のほうはシャンディ(ビールをレモネードで割った口当たりの良い飲み物)を頼み、スタウトは苦手だというところが対照的か。
アーサーの不倫相手の夫、同僚のジャックは甘口のビールが好き。アーサーはそれを一口飲んで顔を顰めるところも、この二人の性格をあらわしている。
機会音が鳴り響く工場、地元の人々が集まるパブ、釣り糸を垂れる運河、おばさんたちが噂話をしている裏通り、家々の間にはためく洗濯物・・・これらの生活感溢れる風景は、すべて原作者のシリトーの故郷であり、この作品の舞台となったノッティンガムで撮影された。
妊娠してしまったブレンダのことで相談に行った時、エイダおばさんが「下手すりゃ監獄行きだ」と言ったのは、イギリスでは1967年まで堕胎行為は違法だったため。
この時代は民間療法的なもの(長時間熱い風呂に入るとか)に頼るか、モグリの医者に莫大な謝礼を払って処置してもらうしかなかった。
参考:『アルフィー』 Alfie (1966)、『秘密』Waterland(1992)
ノッティンガム生まれの小説家。
『怒りをこめてふりかえれ』のジョン・オズボーン、『急いで駆け降りよ』のジョン・ウェイン、『ラッキー・ジム』のキングスレー・エイミスらと共にイギリスの「怒れる若者たち」を代表する存在のひとり。『土曜の夜と日曜の朝』(1958)には、英国空軍入隊前に数年働いていた自転車工場での経験が下地になっているという。
他には1959年の作品『長距離走者の孤独(The Loneliness of the Long Distance Runner)』が1962年に映画化(監督トニー・リチャードソン、主演トム・コートネイ)、『誇り高き戦場(原題Counterpoint)』が1967年に映画化(監督ラルフ・ネルソン、主演チャールトン・ヘストン)。
ノッティンガム
Raleigh Bicycle Factory, Radford
1961年英アカデミー賞:主演女優賞(Rachel Roberts) 、作品賞(Karel Reisz)、新人賞(Most Promising Newcomer to Leading Film Roles: Albert Finney)
他、3部門ノミネート(その他)1999年度英国映画協会によるベスト100作品:14位にランクイン
Albert Finney .... Arthur Seaton
Shirley Ann Field .... Doreen (Arthurの恋人)
Rachel Roberts .... Brenda(Jackの妻・Arthurと浮気中)
Hylda Baker .... Ada (Arthurの叔母)
Norman Rossington .... Bert (Arthurのいとこ・Adaの息子)
Bryan Pringle .... Jack (Arthurの同僚)
Robert Cawdron .... Robboe (Arthurの上司)
Edna Morris .... Mrs Bull (Arthurの近所の噂好きな老婆同僚)
Elsie Wagstaff .... Mrs Seaton (Arthurの母)
Frank Pettitt .... Mr Seaton (Arthurの父)
Irene Richmond .... Doreenの母
Louise Dunn .... Betty (Doreenの友人・Bertが気がある)
(1960年 イギリス B&W 88分)
原作:
『土曜の夜と日曜の朝』アラン・シリトー著、永川玲二訳:新潮文庫
_Saturday Night and Sunday
Morning_by Alan Sillitoe
_Albert Finney in Character:
A Biography_by Quentin Falk
監督・脚本:Shane Meadows・・・当時25歳の新人監督
脚本:Paul Fraser
24時間×7日間=一週間。舞台は1980年代の寂れた労働者の町ノッティンガム。ここでは老いも若きも無気力にただ冴えない日々を送っているうちに一生を終わる。この現状を打破すべく、ダーシーは街で小競り合いを繰り返す不良少年たちナイティ一派と三兄弟や、ドラッグ中毒のファガシュらを集めて、ボクシング・クラブを開く。少年たちは、最初は単なる退屈しのぎにクラブに通っていたものの、しだいに練習を通じて瞳が輝き出していく。それを見守る満足そうなダーシー。
クラブのことは街でも評判になり、ダーシーの友人でギャングのロニーがスポンサーになってくれたおかげでクラブ経営も順調。ついにStaffordshireのボクシング・クラブと対抗試合をすることに。試合に備えて士気を上げるためにウェールズに合宿に出かける一同。そして皆の期待を一身に背負った試合の日を迎えたのだが・・・?
ほろ苦く厳しい人生をみつめた瑞々しい作品。抑制のきいたモノクローム映像が美しい。
ノッティンガム出身の作家アラン・シリトーによって描かれた労働者の町で、『土曜の夜と日曜の朝』や『長距離走者の孤独』の舞台となっている。
監督のShane Meadowsもノッティンガム出身で、自伝的物語となっているとか。
ダーシーは映画『ロッキー』の真似をして生卵を飲むが、イギリスで生卵を食べるのは非常に危険。作品中でも触れられているが、サルモネラ菌がついているものが多いからだ。食べる時は必ず火を通して。
大自然の中でハイキングしたり、魚捕りをしたり。ロケはイングランド中部の景勝地、ピーク・ディストリクトで行われた模様。
ナイティの親父はサッカーファン。応援しているチーム(Stockport County FC)の2部優勝記念マグカップを大切にしていた。
Stockport County FC - Official site
ノッティンガム:
St Margaret's Church
St. John's Amburance
Stans Hotel
Broadway Cinema
Oil Factoryピーク・ディストリクト・・・ウェールズ合宿の場面
ヴァン・モリソン、シャーラタンズ、ポール・ウェラーなど
"Wild Night" by Van Morrison
"North Country Boy" by The Charlatans
"Broken Stones"by Paul Weller
"Look At The Fool" by Tim Buckley
"Markey Dead" by Sun House
"Crazy" by Sun House
"Fallen Flower"by Sun House
ヴェネチア国際映画祭 国際評論家賞
ブリュッセル映画祭ベスト・ヨーロピアン・フィルム賞
Bob Hoskins .... Alan Darcy
Danny Nussbaum .... Tim
Mat Hand .... Fagash Fraser (ドラッグ中毒)
James Corden .... Tonka (太め・Ronnieの息子)
James Hooton .... Knighty
Justin Brady .... Gadget
Anthony Clarke .... Youngy
Jimmy Hynd .... Meggy
Darren O. Campbell .... Daz (3兄弟)
Johann Myers .... Benny (3兄弟)
Karl Collins .... Stuart (3兄弟)Jo Bell .... Jo (Darcyが想いを寄せている女性・雑貨屋店員)
Frank Harper .... Ronnie Marsh (Tonkaの父・Darcyの友人)
Gina Aris .... Sharon (Tonkaの父の彼女)
Bruce Jones .... Jeff(Timの暴力的な父・元ボクサー)
Annette Badland .... Pat (Timの母)
Collin Higgins .... Adrian(Knightyの父・サッカーファン)
Maureen O'Grady .... Knightyの母
Pamela Cundell .... Iris (Darcyの叔母)Timの父を演じたBruce Jonesは、人気TVドラマ"Coronation Street"出演者として有名
(1997年 イギリス 96分)
監督:サイモン・ウェスト
原案:Sara B. Cooper/Mike Werb/Michael Colleary
脚本:Patrick Massett/John Zinman
英国貴族として生まれながら二挺拳銃を使いこなし、日々屋敷内で過激なトレーニングに励む若きトレジャー・ハンター、レディ・ララ・クロフト。 5000年に一度しか起こらない惑星大直列まであと一週間と迫った時、彼女は秘密の隠し部屋で幼いころに行方不明になった父が隠した謎の時計を発見する。 それは時を自在に操る力を得るために必要な鍵で、秘密結社イルミナーティが血眼になって探しているものだった。 かくしてララ・クロフトとイルミナーティーのパウエルとの戦いが幕を開けたのだが・・・
イギリスを初めとして全世界で2,400万本を超える大ヒットとなった人気TVゲームを映画化したアクション・アドベンチャー。
ララ・クロフトのオフィシャル・サイトによると、彼女の経歴は以下のとおり:
1968年2月14日、ロンドン近郊ウィンブルドン生まれ。英国籍。身長5フィート9(175cm)、体重9ストーン4ポンド(約59kg)。
3歳から11歳まで個人教師につき(Private Tutoring)、11歳から16歳までウィンブルドン女子高校(Wimbledon High School for Girls)に在籍。その後18歳までスコットランド北部にある共学の名門寄宿学校Gordonstoun Boarding Schoolで学び、スコットランドの山々に親しむ。
卒業後21歳までスイスのフィニシングスクール(花嫁学校のようなもの)でレディとしての教育を受けるが、ヒマラヤでのスキー旅行の帰りに飛行機が墜落し、山中でサバイバル生活に目覚めてゆく。Gordonstoun Boarding Schoolはスコットランドに実在する有名な学校。
http://www.gordonstoun.org.uk
Gordonstoun School, ELGIN, Moray IV30 5RF
この映画の宣伝でタイアップしているランド・ローバー(イギリスの高級RV車)はもとより、ララの屋敷にはアストン・マーティンやMiniなど他にもたくさんの英国車が揃っている。
http://www.landrover.com/
http://www.landrover.co.jp/
ララの父がヒントとして書き残したのは、William Blake(1757-1827)の詩。ブレイクは英国文化史上、最も注目すべき芸術家の一人で、詩と絵画の両面で活躍した。幻視体験の影響で非常に精神的で神秘的な作風をもったものが多い。プロムス・ラスト・ナイトなどの愛国的な行事で好まれる「Jersalem」という曲も、ブレイクの詩(詩『ミルトン』の序)によるもの。
Mr Pimmsが自己紹介した後に「(自分の名前は)酒と同じです」とおどける場面があるが、「ピムズ」というのはイギリスのパブなどでよく見かけるお酒。 日本にも輸入されている。
[イギリス]
1611年に初代ソールズベリー伯ロバート・セシル(エリザベスの宰相として仕えたウィリアム・セシルの後継)によって建てられたジャコビアン様式の邸宅で、ソールズベリー侯爵家の所有するマナーハウス。庭園は17世紀のプラントハンター、ジョン・トラディスカントのデザインによるもの。この地所は中世にはイーリー修道院に属しており、エリザベス一世が子供時代を過ごしたハットフィールド宮殿の一部も残っている。
Pink Floydのアルバム「Animals」のジャケット写真に使われたことでも知られる火力発電所跡。
Dulwich College, Dulwich Common, London SE21 7 LD
www.dulwich.org.uk
ロンドン塔もちらっと映る
www.greenwichfoundation.org.uk
グリニッジにある王立海軍大学の一部で、この「ペインテッド・ホール」は
ジェームズ・ソーンヒルの手による絵画で美々しく飾られた、西欧で最も素晴らしいダイニングホールのひとつといわれている。ネルソン提督の亡骸が運び込まれてきたのもこの場所。
Iveagh伯爵(Guinness Brewery)所有のマナーハウスで、マイケル・ダグラスが経営しているとか。撮影に当たっては、近郊のBury St EdmondsにあるAngel Hotelがスタッフやキャストの宿泊地となった。
イタリア:ヴェネツィア
カンボジア:アンコールワット
アイスランド
テーマソングはU2。
www.u2.com
Angelina Jolie .... Lady Lara Croft
Jon Voight .... Lord Richard Croft (ララの父)
Noah Taylor .... Bryce (相棒の天才プログラマー)
Chris Barrie .... Hillary(クロフト家の執事)Iain Glen .... Manfred Powell (弁護士・イルミナーティ)
Daniel Craig .... Alex West (考古学者・ララの昔馴染み)
Julian Rhind-Tutt .... Mr Pimms (パウエルの助手)
Leslie Phillips .... Wilson (学者・ララの父の親友)執事を演じたクリス・バリーは、NHKで放映されていた「宇宙船レッドドワーフ号」のリマーとしておなじみ。
アンジェリーナ・ジョリーは実の父親のジョン・ボイトと父娘共演。
Julian Rhind-Tutt:「英国万歳!」の皇太子の弟や「ノッティングヒルの恋人」の記者役。
ゲーム「トゥームレイダー」関係オフィシャル
http://www.tombraider.com
http://www.laracroft.co.uk映画「トゥームレイダー」関係オフィシャル
http://www.tombraidermovie.com
http://tombraider.eigafan.com
http://www.tombraidermusic.com
(2001年 アメリカ 101分)
監督・脚本:Terence Davies
第二次大戦が終わって間もない1940年代から50年代のリバプールを舞台に、労働者階級の5人家族の歴史を描く。 乱暴者で頑固一徹な父への愛憎半ばする家族の回想「遠い声」と、次女の結婚・出産、息子の結婚までを描く「静かな暮し」の二部構成。現在の場面と回想シーンを不規則に挿入しながら、家族の複雑な感情の機微を浮き彫りにする。
物語は長女アイリーンの結婚式の場面から始まる。戦後間もないこともあって、ほとんど平服にベールを添えたようなシンプルな衣装。亡き父に代り弟に手を取られて式場に向かう。式はカトリックの儀式に乗っ取って行われる。
この一家の宗派は、イングランドでは少数派のカトリック。(母が懺悔のことを口にしたこと、結婚式などの儀式の様子からそれとわかる) 次女の赤ちゃんの洗礼の儀式にも注目。
参考:『司祭』Priest (1994)
・・・同じくリバプールを舞台にカトリックの問題を描いた映画
穏やかな笑顔でクリスマスの飾り付けをしていた父も、当日になるとかんしゃくを起こしてケーキもなにもめちゃくちゃにしてしまう。
リバプールも大戦中はひどい空襲の被害を受けていた。警報が鳴ると一家で指定の場所に避難。
イギリスの建物附属のガス暖房は、メーターにコインを投入して使う方式になっているものもあるため、こういった建物では冬は常にコインを用意しておく必要が。(アイリーンが母にコインをもらう場面が出てくる)
コイン式ガスメーターの出て来る映画:『トゥルー・ブルー』True Blue(1996)、『パーマーの危機脱出』 Funeral in Berlin (1966)など
ピート・ポスルスウェイト演じる専制的な父だけに限らず、他の男たちも多かれ少なかれ亭主関白タイプが多いようだ。これは戦後間もないという時代を反映しているのだろうか。
リバプール
Didcot Railway Centre, Oxfordshire
www.didcotrailwaycentre.org.uk
1940年代から50年代にかけてのポップスが多数使われており、陰鬱に陥りがちな画面に彩りを添えている。
「In the bleak midwinter」はクリスマスの時期に良く歌われる讃美歌
参考:『世にも憂鬱なハムレットたち』 In the Bleak Midwinter (1995)Hymn to the Virgin (Benjamin Britten)
In the bleak midwinter (Harold Darke)
Love is a many splendoured thing
Vaughan Williams Pastoral Symphony
The finger of suspicion
Dreamboat
I wanna be around
O Wally, Wally (Benjamin Britten & Peter Pears)
1988年カンヌ国際映画祭 FIPRESCI(国際映画批評家連盟)賞
1988 ロカルノ国際映画祭ゴールデンレパード賞
1988年トロント国際映画祭 FIPRESCI(国際映画批評家連盟)賞
1989年LA批評家協会賞 外国映画賞
(その他)1999年度英国映画協会によるベスト100作品:82位にランクイン
Pete Postlethwaite .... 父
Freda Dowie .... 母
Angela Walsh .... Eileen (長女)
Lorraine Ashbourne .... Maisie (次女)
Dean Williams .... Tony (長男)
Anne Dyson .... 祖母
Jean Boht .... Nell (伯母)
Carl Chase .... Ted (伯父)
Michael Starke .... Dave(アイリーンの夫)
Vincent Maguire .... George (メイジーの夫)
Antonia Mallen .... Rose(トニーの妻)
Debi Jones .... Micky(アイリーンの友人)
(イギリス 1988年 85分)
制作・監督・脚本:ケン・ラッセル
原作:ピート・タウンゼント
音楽:ピート・タウンゼント
撮影:ディック・ブッシュ、ロニー・テイラー
舞台は第二次大戦末期のイギリスから始まる。パイロットとして従軍したウォーカーは撃墜され行方不明。残された新妻のノラは1945年の終戦の日にひとりでトミーを産み落とし、サマー・キャンプ(Bernie's Holiday Camp)で知り合ったフランクと再婚する。しかしある夜、ひどい火傷を負って突然帰還したウォーカーの姿に動揺し、トミーの目の前でフランクは彼を撲殺。幼いトミーはその時のトラウマが元で、目が見えず、耳も聞こえず、口も利けずの三重苦になってしまった。
何とかしてトミーを元に戻そうと、両親は新興宗教に連れていったり、怪しげな専門家に連れていったりするが功を奏さない。ところがある日スクラップ工場に迷い込んだトミーがピンボールマシーンと出会ったことから、彼を取巻く環境が一変した。三重苦ながらも天才ピンボーラーとして巨万の富を得たトミーをやるせない思いで見つめる母。ある日奇跡的に彼の目・耳・口の感覚が戻り、救世主として祭り上げられてゆくのだが・・・
ザ・フーによる傑作ロック・オペラの映画化。ケン・ラッセルによる驚異的なヴィジュアルに注目。
アン・マーグレット(Official WebSite)、オリヴァー・リードという個性派役者たちで脇を固め、豪華なゲスト陣が華を添えている。
カルト教団の教祖にエリック・クラプトン、アシッド・クイーンにティナ・ターナー(デヴィッド・ボウイもオファーされていたとか)、トミーとピンボール対決するトンボ眼鏡のピンボール名人にエルトン・ジョン、精神科医にジャック・ニコルソン。そしてもちろんザ・フーのメンバーも全員出演。
トミーの父役を演じたロバート・パウエルは、ケン・ラッセル作品によく出演しており『マーラー』ではタイトルロールを演じた。
ケン・ラッセル監督も、"マリリン・モンロー教"に出席していた障害者のひとりとしてカメオ出演。
幼いトミーを戦没者慰霊祭に連れていったノラは、胸に赤いけしの花を付けている。第一次大戦の休戦記念日(Armistice Day)である11月11日には、赤いケシを胸につけて戦没者を悼む習慣がある。のちに第二次大戦も含めて1946年にRemembrance Dayと改称された。
楽しいはずのクリスマスも三重苦の少年トミーにはわからない。キリストやマリア、東方三博士の人形を手にするトミー。(この人形セットは、Mr ビーンなどにも登場している。欧米ではポピュラーなもの)
トミーの母親ノラがピンボール試合中継からチャンネルを変えたところ、映ったのはベイクド・ビーンズのコマーシャル。大豆をトマト味で煮た庶民が好むチープな食べ物を、晩餐会で恭しく食べているギャップが楽しい。イギリス人が好む二大食べ物はベイクド・ビーンズとチョコレートと言っても良いかもしれないが、ノラはこれらに・・・!!
今なお語り継がれる伝説のバンド、ザ・フー。メンバー構成は以下の通り。
Pete Townshend .... G/Vo/Syn
Keith Moon .... Ds
John Entwistle .... B/Horn
Roger Daltrey .... Vo.
アルバム「四重人格」をもとにした1979年の映画『さらば青春の光』は社会現象を巻き起こすほどのブームになった。
Cumbria(湖水地方)・・・冒頭のトミーの両親のデートの場面
Brighton, Sussex・・・遊園地の場面
Bluebell Railway
Portsmouth, Hampshire
Hayling Island, Hampshire
米アカデミー賞 2部門ノミネート(主演女優賞、音楽(編曲・歌曲)賞)
ゴールデン・グローブ 女優賞(コメディ/ミュージカル部門)受賞(アン=マーグレット )
Roger Daltrey .... Tommy Walker
Oliver Reed .... Frank Hobbs (Tommyの継父)
Ann-Margret .... Nora Walker Hobbs (Tommyの母)
Elton John .... Pinball Wizard(=ピンボールの魔術師)
Eric Clapton .... モンロー教の歌う教祖
Tina Turner .... Acid Queen
Paul Nicholas .... Kevin(Tommyを虐待するいとこ)
Keith Moon .... Ernie(Tommyのおじ・飲兵衛)
Jack Nicholson .... 精神科医
Robert Powell .... Group-Captain Walker(Tommyの父)
Pete Townshend
John Entwistle
(1975年 イギリス 111分)
Amazon.JAPAN
DVD
監督・脚本:ピーター・イエイツ 「ブリット」「大列車強盗団」
原作: ロナルド・ハーウッド(戯曲)
第二次世界大戦中のイングランドを舞台に、シェークスピア劇団の座長Sirボンゾとその付き人ノーマン(=The Dresser)の味わい深いかけあい、息も詰まるような愛憎と葛藤を描く。
誇り高くワンマンだがふとしたことで弱気になる座長が率いるシェイクスピア劇団。ブラッドフォードでの『リア王』公演の初日に、空襲のショックから座長が精神錯乱状態に陥ってしまう。いちかばちか公演を決行し、付き人のノーマンは、なんとか座長を舞台に立たせようとあの手この手でなだめすかす。その滑稽で哀しくてほろ苦い結末は・・・?
1980年3月の初演以来2年のロングランを記録したロナルド・ハーウッドの同名舞台劇の映画化。ふたりの名優、アルバート・フィニーとトム・コートネイの駆け引き、息の合った絶妙の取り合わせが見物。
バックに流れるBBCラジオでも、国王がチャーチルとともに空襲後のロンドンを視察したというニュースが流れていたように、この頃のイギリス全土は日々空襲の恐怖にさらされていた。Sirボンゾは巡業先の町で、空襲で家を焼かれた老人にそっと芝居の切符を握らせてあげる。
Sirが初舞台を踏んだプリマス(Plymouth, イングランド南部)のグランド劇場が爆撃されたというニュースを聞いてショックを受ける。彼が率いる劇団員たちも、若いのは戦争で死んでしまい、物資が不足しているのでコーンスターチをおしろいがわりに使っている。
戦争で若い役者たちがみないなくなってしまったので、一座に残っているのは老人(=Old men: Sirやソーントンなど)か、障害者(=cripped: オクセンビーなど)か、なよなよした男(=Nancy Boys:ノーマンやダヴェンポート)ばかり。そのダベンポートも逮捕され、一座はますます人手不足になって、裏方も大忙しに。
芝居の幕が下りると観客はみな起立して国歌"God Save the King"を歌うというのも、戦時下らしい。
『リア王』舞台の前に精紳不安定になっているSirボンゾは、医者に眠るよう勧められても「グラミズが眠りを殺した!」と、『マクベス』の台詞を口走る。台詞のおさらいをしていても、次々に他の芝居の台詞が口を衝いて出てきて困ってしまう。
『リア王』の翌日には『リチャード三世』が控えていて、水曜マチネにはまた『リア王』、夜には『ベニスの商人』・・・と、短期間にいくつもの演目をこなさなければならないのも大変だが。
出番前に『リア王』の台詞のおさらいをしているというのに、『テンペスト』やら『マクベス』やら、他の芝居の台詞ばかり出てきてしまうSir。うっかり「マクベスは・・・」と言ってしまい、ノーマンに"あの忌まわしいScottish Tragedyの名を口にするなんて縁起悪い"と楽屋から追い出され、外で三回まわって厄除けのおまじないをしてから戻る。
役者にとって「マクベス」という名を口にするのは、とても縁起の悪いことだと信じられているため、通常「あのスコットランドの芝居(Scottish Tragedy)」などと、ぼかした表現が用いられる。 ローワン・アトキンソン主演のTVシリーズ『ブラックアダー』でも、役者たちに「マクベス」と言って嫌がらせする場面が出てくる。 俳優たちはその都度、厄除けのおまじない(この場合は、歌いながら互いの手をぴしゃりとたたくおまじない)をする羽目に陥ったのだ。
Sirは自分が遅刻したのに「その汽車、止まれー!(Stop that train!)」と、無理矢理汽車に乗ってしまったワンマンな面を見せながらも、弱者に対しては心からの優しさを見せるベテラン俳優。
一方、ノーマンの方は作中でも「Nancy Boy(なよなよした男)」と言われているように、その言動はかなりカマっぽく見える。"Nice cup of tea~♪"と歌いながらお茶を入れてあげたり、錯乱しているSirの気持ちをあの手この手で盛り立てようとするとする。この全く対照的なふたりのかけあいが、この作品の最大の魅力のひとつといえるだろう。
ノーマンがたらいに沸かした湯を入れてSirの入浴を手伝っている場面。
Sir:(明朝の汽車は9時発だと聞かされて)「早いな、誰が言ったんだ」
ノーマン:(Sirの足の親指をつまみながら)「子豚ちゃんが言ったんですよー(Because little piggy said so)」・・・これはマザーグースの"This Little Piggy"にひっかけた言葉遊びなので、足の指をつまんでいるのだ。 "This Little Piggy"は赤ちゃんや小さい子をあやす時に歌われるもので、足の親指から小指まで順番につまんでゆき、最後に足の裏をくすぐる遊び歌。
>>参考:『グロテスク』 The Grotesque (1995)
字幕では「スパイごっこ」となっていたが、「I spy with my little eyes ...」というのもやはり子供の定番遊びで、いわば「探し物ごっこ」のようなもの。
たとえば「I spy with my little eyes ...something....red!」と言われたら、何か赤いものを探してタッチしなければならない。 ノーマンが言ったように「I spy with my little eyes ...something begin with....A」と、Aで始まる言葉当てにもよく使われる。
ヨーク(York Railway Station)
ブラッドフォード
ハリファクス
1983年アカデミー賞
ノミネート:作品賞、主演男優賞(A.フィニー、T.コートネイ)、監督賞(P.イエイツ)、脚色賞(R.ハーウッド)
1984年ベルリン国際映画祭...男優賞受賞(A.フィニー)
1983年ゴールデン・グローブ賞...ドラマ部門男優賞(T.コートネイ)
Albert Finney .... Sir ボンゾ(座長・シェイクスピア劇の名優)
Tom Courtenay .... Norman (付き人・"Nancy Boy"な喋り方をする)
Edward Fox .... Oxenby (反抗的な劇団員・戦争で負傷している)
Zena Walker .... Her Ladyship (座長の妻)
Eileen Atkins .... Madge (20年来の舞台監督)
Michael Gough .... Frank Carrington
Cathryn Harrison .... Irene (Sirボンゾのファン)
Betty Marsden .... Violet Manning
Sheila Reid .... Lydia Gibson
Lockwood West .... Geoffrey Thornton (劇団員・リア王では道化役)
(1983年 イギリス 117分)
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