監督:Jack Clayton
脚本:Neil Paterson
原作:John Braine
1950年代、イングランド北部の町Warnley。 近くにある冴えない工業都市ダフトン出身のジョーは、市庁舎で働くためにこのWarnleyにやってきたが、同僚に誘われて参加したアマチュア劇団のメンバーの一人、町一番の資産家ブラウン氏の娘スーザンに興味を持つ。 野心家で上昇志向が強いジョーは、スーザンをものにすれば成りあがれると近づくが、彼女の両親は身分違いだとふたりを引き離そうとする。 同時にジョーは同じ劇団員の一回り以上も年上の不幸な人妻アリスにも惹かれ、関係を持つように。やがて愛と野心との狭間で揺れ動くジョーのもとに恐ろしい悲報が・・・
同僚のチャールズ、故郷のおじ夫婦、上司たち・・・ジョーの周囲にいる人々は、こぞって「身分違いの恋愛は悲劇の元」と諭す。
姓からも"お里が知れる"ようで、ジョーの「ランプトン」という姓を聞いたスーザンの母は、「感心しない名前ね」と暗に身分違いであることをほのめかしている。Topというのは、Warnleyにある高級住宅地のこと。ブラウン氏の邸宅もこの地域にある。
アリスの悲劇を知ったジョーがやけになって場末のバーで酔いつぶれる場面で、いい身なりをしたジョーは「ここはお前の来るような所じゃない(Stick your own class)」とからまれる。
現在のダブルデッカー(二階建てバス)はワンマンバスなので出入り口は前方に一箇所しかないが、昔のバスには車掌がいて料金を徴収していたので、後方にも出入り口があり、バス停でなくても(バスが停止しなくても)自由に飛び降りることができた。 ジョーもスーザンがランジェリーショップにいるのをみつけて慌てて後方から飛び降りていた。
この物語となったのは、第二次大戦が終わってまだ間もない頃。 ジョーの両親は空襲で死亡(家に爆弾が直撃)しており、久しぶりに故郷に戻って実家があった場所を訪ねると、そこはまだ瓦礫のまま。 ジョーは空軍に所属し捕虜収容所(POW=Prison of War)にいた経験もあるが、資産家の息子ジャックも同じく空軍で彼より上の階級にいたため、ことあるごとに「軍曹」と呼ばれ馬鹿にされる。
ジョーが着任したとき、同僚となるテディがドッグレースに賭けるぞ、と飛び込んできた場面があったが、のちにジョーととテディの三人で実際にドッグ・レース場に行く場面がある。ドッグ・レースはイギリスで特に労働者階級に人気のある賭け事。
ジョーの故郷であるダフトンという町は、Warnleyに比べて冴えない、労働者階級の住む、希望のない町として描かれている。「日曜のご馳走(Sunday Treat)はフィッシュ&チップス、子供たちは前の日の残りのサンドウィッチで満足だ」「ダフトンにわざわざ来る人なんていない。ただ通過するだけだ」「運河はあるけれどWarnleyと違って誰も泳がない」と。
おじ夫婦の家に行ったジョーは、久しぶりに見る故郷の様子に違和感を感じ得ない。 路地には家から家に洗濯ヒモを渡して洗濯物が干されているし、通りで遊んでいる子供たちもどことなしか薄汚れている。
故郷に帰ったジョーは、おばに紅茶を入れてもらう。 「スプーンが立つほど濃い」という紅茶を入れるには、ポットにティー・コージーをかぶせて。
劇団員たちと飲みに繰り出したり、アリスと飲みに出かけたり・・・と、パブが出てくる場面がたくさんある。
スーザンの父、町の有力者で資産家のブラウン氏も実は一代で財をなした成上がりだった。無一文から会社を起こし、ウォーンリー一の企業に育て上げたのだ。
ブラウン氏に保守党クラブでの昼食に招かれたジョーは「死んだ親父が知ったら驚くだろう」と言うが、ブラウン氏も「私の父もだ」と答える。 おそらくブラウン氏も上流階級が出入りするクラブになんてとても縁がない階級の出だったことだろう。
この時代の列車は蒸気機関車。ジョーがWarnleyにやってくる場面、アリスと小旅行に出かける場面に鉄道や駅が出てくる。
Bradford Town Hall, West Yorkshire
Halifax, West Yorkshire
Bingley, West Yorkshire
Keighley, West Yorkshire
カンヌ国際映画祭:女優賞受賞(シモーヌ・シニョレ)
米アカデミー賞:主演女優賞(シモーヌ・シニョレ)、脚色賞(ニール・パターソン)、4部門ノミネート(監督賞、作品賞、主演男優賞、助演女優賞)
米ゴールデン・グローブ:サミュエル・ゴールドウィン賞
(その他)1999年度英国映画協会によるベスト100作品:32位にランクイン
Laurence Harvey .... Joe Lampton
Simone Signoret .... Alice Aisgill(劇団の仲間・フランス人・)
Heather Sears .... Susan Brown (資産家の娘)Donald Wolfit .... Mr Brown(スーザンの父)
Ambrosine Phillpotts .... Mrs Brown (スーザンの母)
Donald Houston .... Charles Soames(ジョーの同僚)
Richard Pasco .... Teddy(ジョーの同僚)
Hermione Baddeley .... Elspeth(アリスの親友・教師)
Allan Cuthbertson .... George Aisgill (アリスの夫)
Raymond Huntley .... Mr Hoylake (ジョーの上司)
John Westbrook .... Jack Wales(資産家の息子・スーザンに言い寄っている)
Mary Peach .... June Samson(市役所の事務員・チャールズが思いを寄せている)
Wilfrid Lawson .... ジョーのおじ
Beatrice Varley .... ジョーのおば
Delena Kidd .... Eva(劇団の仲間)
Ian Hendry .... Cyril(劇団の仲間・Evaの夫)
April Olrich .... Mavis(場末のバーで出会った女の子)
Prunella Scales .... 市役所の事務員
(1959年 イギリス 117分)
監督:Maria Giese
脚本:James Daly
舞台はイングランド北部、労働者の町シェフィールド、1995/1996年のシーズン。ジミーはずば抜けたフットボール(=サッカー)の才能を持ちながらも、プロ選手になる夢を諦め、工場に勤めを選んではや10年。 そんな惰性的な生活を変えるきっかけになったのは、彼の前に現れた知的で美しい女性アニーとの恋だった。そしてアマチュア・チームでプレイしていたジミーの才能に目をつけたケン・ジャクソンによって地元のセミ・プロのチームハラムFCに引き抜かれる。さらにはハラムでの活躍が認められ、なんと子供の頃から憧れていたシェフィールド・ユナイテッドの入団試験を受ける機会に恵まれた。しかし大事なプロ・テストの前にパブで羽目をはずしすぎたジミーは・・・プロのフットボール選手を夢見る男の挫折と復活を描いたヒューマン・ドラマ。
子供たちは暇さえあれば校庭でフットボール、労働者たちもゴール・ネットさえ張っていない粗末なグラウンドでプレイ・・・と、ジミーの周囲の人々はみなフットボールに夢中。地元のパブでも客たちはTVでシェフィールドF.Cの試合中継を見ながら盛り上がっている。
ジミーの弟ラスも、たいへんなフットボール・マニアで、古いプログラムのコレクションを宝物にしており、部屋には数々のポスターや切り抜き、ユニフォームなどが飾られている。
ちなみに「When Saturday Comes」というイギリスのフットボール雑誌もあるらしい。
http://www.wsc.co.uk/
パブの客たちがTVを見ながらさかんに声援を送っていたのは、そしてジミーが憧れてやまなかったのは、地元チームのシェフィールド・ユナイテッド。イギリスでは、地元を基盤とするチームは地域の誇りとして熱烈に支持される。 有名なマンチェスター・ユナイテッドやリーズ・ユナイテッドとの試合の場面も。
Sheffield United FC Leeds United FC Manchester United |
Bramall Lane(Sheffield United FC) |
産業革命を支えた工業の町、シェフィールド。学校を卒業するにあたって、進路指導の先生に提示されたのは二つの道しかなかった。すなわち、炭鉱か工場か。この地域のワーキングクラスの男たちにとっては、このような道を選ぶのが自明の理とされており、プロのフットボール選手になりたいなんて夢物語。「お前の一生はここで終わるんだ」「お前がプロ選手なんてなれるわけがない」このような考えしかできない大人たちのもとで育ったジミーが、大きなチャンスを前にして今一歩足を踏み出せなかったのも、無理はない。
炭鉱の方が工場より待遇がいいようだが、落盤事故などの危険も多く長く働いていると肺をやられてしまうというデメリットもあった。ジミーの父も弟も、友人たちもみな炭鉱夫。
「酒」がこの作品に不可欠な役割を果たしているだけに、パブの場面も非常に多い。
進路指導に不満で学校を飛び出して(未成年なのに)入ったパブ、そして大切な面談の日に学校に来ないで飲んだくれていた父を見つけた憤り。
アマチュア・チームのフットボールの試合が終わってパブで打ち上げ。
パブのTVを見ながら地元チームの応援で盛り上がる客たち(ちょうど居酒屋のTVで巨人戦を見て騒ぐおじさんたちのように)
友達の誕生日を祝うのもパブ。仲間で集まるときはたいていパブ。
友達と飲んだり、家族と飲んだり、フットボールのチームメイトと飲んだり・・・と、ビールが登場する場面が多いが、彼らが飲んでいるオレンジ色の缶は地元シェフィールドの会社「Stone's Cannon Brewery」の「Stone's Bitter」。 ジミーの工場はこのビールの樽(鉄製?)を作って詰める会社のようだ。
父を亡くしたアニーは、母とともに叔父を頼ってアイルランドからシェフィールドにやってきた。 彼女が勤めはじめたビール工場で、従業員たちは彼女がアイルランド出身であることを知り「ダブリン娘は・・・」と歌いだす。デートの帰り、ジミーのリクエストでアニーがアイルランド語をしゃべって見せる場面も。
アイルランド人らしく、彼女の信仰はカトリック。教会に告悔(懺悔)しに行く場面もある。 カトリックでは堕胎は罪とみなされているので、妊娠がわかったときの苦悩も大きかったことだろう。
飲んだくれの父親は、生活費まで持ち出して競馬につぎ込んで家族を困らせている。彼が通っているような賭け屋では、競馬だけでなくありとあらゆるものがギャンブルの対象となっている。 フットボールの試合もそのひとつ。壁のボードには、プレミアリーグ、ディヴィジョン1などの文字も見える。
ビール工場では、休憩時間になると紅茶とビスケットを出される。
キッチンで鍋からおかずをつまみ食いしようとするジミーに、「"tea"まで待ちなさい」と母がたしなめる場面があるが、この場合の「tea」は「夕食」の意味。 (字幕では「お茶」となっていたが)労働者階級は夕食を"tea"と表現することが多い。
ちなみに「chipsとコーラでデート?」というアニーの台詞も、当然「chips=フライドポテト」のこと。(字幕の"ポテトチップ"は誤り)
ジミーの母と姉がTVにかじりついて、ダイアナ妃離婚のニュースに見入っている場面が。この作品の設定は1995/1996年のシーズンで、ダイアナ妃とチャールズ皇太子が離婚に同意したのは1996年2月(正式離婚は8月)。
ジェフ・ベック、ジョー・エリオット、ニューオーダー、トニー・ハドリー(元スパンダー・バレエ)ら豪華アーチストがサントラに参加
CD, UK 1996, Polygram TV; 532 307-2
・・・シェフィールド・ユナイテッドFCのスタジアム。FAカップの準決勝が行われた場所。写真は上に↑
Bramall Lane, Sheffield, S2 4SU
Sheffield |
Balti King |
Sean Bean .... Jimmy Muir
Craig Kelly .... Russell Muir (弟)
John McEnery .... Joe Muir(父)
Ann Bell .... Sarah Muir (母)
Melanie Hill .... Mary Muir(姉)Emily Lloyd .... Annie Doberty(Jimmyの恋人・アイルランド人)
Pete Postlethwaite .... Ken Jackson (Annieのおじ・Hallam FCの監督)
Philippa Howell .... Mrs Doherty (Annieの母)Chris Walker .... Mac (ジミーの友人)
John Higgins .... Rob (ジミーの友人)
Tim Gallagher .... Steve (ジミーの友人)
Peter Gunn .... Tommy (ジミーの友人)
Nick Waring .... Gary (ジミーの友人)
Bill Stewart .... Bullneck(工場の仲間)
Douglas McFerran .... Norman, the Foreman (工場の上司)
主演のショーン・ビーンもシェフィールド出身で、工場に勤めた経験がある。姉役のメラニー・ヒルは当時の細君。(RADA時代に知り合う。1997年離婚)
クレイグ・ケリー・・・『モダン・ラブ(Queer as Folk)』、
エミリー・ロイド・・・『あなたがいたら/少女リンダ』、『ハマースミスの6日間 』『リバー・ランズ・スルー・イット』
劇場未公開・ビデオ発売
(1996年 イギリス 98分)
監督・脚本:Gareth Rhys Jones
仕事の成績は悪いものの、かわいい彼女フィオナや友人アレックスとの付き合いで、まあまあ幸せな生活を送っていたヴァージル。ところが中古車屋リアの店で大枚はたいて買ったばかりの高級車ジャガーが6kmしか走らないうちに故障してしまい、店主に文句を付けに行った時からすべての歯車が狂いだした。 悪徳中古車屋リアは代金も返さず知らん顔。 腹に据えかねたヴァージルが店の営業妨害をして数日後、彼の車のトランクから娼婦の死体が発見された。出てきた状況証拠は不利なものばかり。絶望して街を彷徨っていた時に車泥棒のティファニーにはねられ、そのまま彼女の家に連れて行かれ介抱される。 今やお尋ね者となったヴァージル。自分をハメた真犯人はいったい誰なのか・・・?
ヴァージルの友人アレックスの家は吹き抜けで広々とした豪華なもの。 ヴァージルとフィオナが同棲しているささやかな家とは大違い。 ヴァージルはやらないが、フィオナやアレックスは、ヘロインを鼻から吸引してハイになっている。
ヴァージル、ドリトル、はみなチェルシーFCのサポーター。中古車屋の倅までも。 すったもんだいろいろあったものの、試合中継が始まるとみなTVにかじりついて声援を送る。ティファニーの家は、ビール工場の二階に。
ヴァージル役のHans Mathesonは、『スティル・クレイジー』『チューブ・テイルズ』に出演した注目の若手俳優。
フィオナ役のベス・ウィンスレットは女優ケイト・ウィンスレットの妹。
ヴァージルに向かって「あなたは(私と違って)長生きするんだから」と言っていた不治の病に犯された女性ティファニー役を演じたシャルロット・コールマン。彼女が2001年11月14日に33歳という若さで実際に急逝してしまった事実を重ねるとあまりにも切ない。
ロンドン・イーストエンド
Hans Matheson .... Virgil Guppy
Charlotte Coleman .... Tiffany Shades(車泥棒)
Peter Ferdinando .... Alex Gordon(ヴァージルの友人・カリスマ的ビジネスマン)
Beth Winslet .... Fiona Money(ヴァージルの彼女)
Simon Gregor .... Legal(ドリトルのベビーシッター)
Jordan Maxwell .... Dolittle Shades (ティファニーの息子)
Lynda Bellingham .... Poppy Fields (中年の娼婦)
Clive Russell .... Billy Hunch(刑事)
Grahame Fox .... Danny Sparks (刑事)
Michael Attwell .... David Leer(悪徳中古車屋)
Peter Moreton .... Buddy Lear(悪徳中古車屋・息子)
Velibor Topic .... Rudi Scott(謎のスキンヘッド男)
Jeremy Clyde .... ヴァージルの上司
Frank Mills .... Sydney Greengrass(ヴァージルの近所に住む老人)
Rachel Colover .... Pamela Anwar(アレックスの秘書)
Tania Luternauer .... Jo Jo Jones(車を売った女性・仏教徒)
Artemis Manias Arnold .... Sally(殺された娼婦)
オフィシャルサイト
http://www.guerilla-films.com/bw/
(1999年 イギリス 93分)
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