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日本未公開のIoan Gruffudd(ヨアン・グリフィズ)出演作品


Solomon and Gaenor (1999)

監督・脚本:Paul Morrisson

Story

舞台は1911年の南ウェールズ。ユダヤ人青年ソロモンは行商人としてウェールズの炭鉱町を回っているうちに、敬虔なキリスト教徒の娘ゲイノールと出会い恋に落ちる。しかしユダヤ人に対する社会的偏見が強い次代のこと、ソロモンは出自を隠し両親はイングランド人だと偽ったまま交際を続ける。やがてゲイノールはソロモンの子を身ごもるが、彼が自分を家族に会わせたがらないことから"遊びだったのではないか"と不信感を募らせてゆくが・・・。

ウェールズ版『ロミオとジュリエット』にもたとえられる悲劇の恋人たちを描いた佳作。1999年度米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート

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南ウェールズの炭鉱町

『わが谷は緑なりき』 How Green Was My Valley (1941) と同時代(20世紀初頭)の、同じく南ウェールズの炭鉱町が舞台。 本作のロケ地も『わが谷は・・・』の舞台となったロンダ渓谷。労使間の対立が激しくなっていた時代で、賃下げやそれに対抗してストライキも頻繁に行われていた。この作品中でも炭坑のストライキが行われ、賃金の入らなくなった炭鉱町ではソロモンが持ってくる布地も思うように売れなくなり苦労する。

ゲイノールの父も、兄も炭鉱夫。 兄のCradはゴツゴツした自分の手とソロモンの手を見比べる。

ゲイノールには昔炭鉱夫の恋人がいて婚約までしていたのだが、彼が炭坑の事故で身体に障害を負ったために無理やり引き離されたという過去を持っている。 炭坑夫は危険な職業で、落盤事故に見舞われることも少なくなかった。

ユダヤ人への迫害

『日の名残り』The Remains Of The Day(1993)にみられるように、20世紀初頭は特に反ユダヤ主義(anti-semitism)が台頭した時代。

「Solomon Levinsky」というのはいかにもユダヤ人らしい名前なので、彼はとっさに「Sam Livingstone」というイギリス人らしい名を名乗る。ソロモン一家は東欧(リトアニア)から亡命してきたユダヤ人で、しばしば「ここはロシアではない」と口にする。 ロシアでのユダヤ人迫害は苛烈を極めたからだ。彼らの職業である質屋というのも、ユダヤ人に多く見られるもの。『がんばれ、リアム』 Liam (2000) でも質屋はユダヤ人が営んでいた。

不況の波はこの炭鉱町にも押し寄せ、社会の底辺にいる貧しい坑夫たちは「自分たちの富を不当に収奪している」と怒りをユダヤ人商人へと向けるようになり、ソロモン一家も襲撃を受ける。ユダヤ人がスケープゴートとして貧しい労働者たちに襲撃されるというのは、これまた『がんばれ、リアム』 Liam (2000) で描かれている通り。

監督のポール・モリソン自身もユダヤ人家庭に生まれ、ロンドン北部のユダヤ人が多いエリアで育ったとか。

言葉

ウェールズ人が話すのはウェールズ語。 ゲイノールが面倒を見ている日曜学校もウェールズ語が教えられ、教会での会話もウェールズ語。 そして、ソロモンを始めとするユダヤ人の言葉はイディッシュ語。ソロモンの母は英語が不自由なよう。 ウェールズ人とユダヤ人がが話をする時は互いの言葉では通じないので英語を使うことなる。

ウェールズ語(Welsh):ウェールズで話されているブリタニック系ケルト語。 一時期はウェールズ語を使える人口も激減したが、ウェールズのナショナリズムの台頭によって言語回復運動が起きた。 現在も、ウェールズ地方を旅行すると交通標識などの案内板がすべて英語とウェールズ語の二ヶ国語表記で書かれているのにお気づきになるだろう。 俳優のリス・イーヴァンズの第一言語もウェールズ語。
ウェールズ語を学びたい方に:Teach Yourself Welsh シリーズ

イディッシュ語(Yiddish): 主に中欧・東欧系のユダヤ人が用いてきた言語。 中部ドイツ語方言を元にヘブライ語やスラブ圏の言語が混じって形成された。 (実際にイディッシュ語を聞いたことがあるが、ドイツ語と似た語彙が多いのに驚かされた)ヨアン・グリフィズはこの映画を撮影するにあたってイディッシュ語の猛特訓をしたとか。

教育

ゲイノールの父は、下の娘がグラマー・スクールに通っていることを誇りにしている。 この時代に中等教育を受けるのはまだあまり一般的ではなかったらしい。『わが谷は緑なりき』 How Green Was My Valley (1941)でも主人公の少年は谷で唯一の"国民学校に進んだ神童"だった。

パブのある風景

ゲイノールの兄クラッドは、仲間の炭鉱ふたちとパブで飲んでいて、通りがかったソロモンを引き入れて酒を勧める。 ソロモンは家族が自分を待っているかと思うと気が気ではない。

 

ロケ地

Cardiff, South Glamorgan, Wales

Clydach Vale, Rhondda, Wales

Llwynypia, Rhondda, Wales

Awards

米アカデミー賞外国語映画賞ノミネート
BAFTAウェールズ賞:作品賞、衣装賞受賞

キャスト

Ioan Gruffudd .... Solomon Levinsky
Nia Roberts .... Gaenor Rees
William Thomas .... Idris Rees (Gaenorの父)
Sue Jones-Davies .... Gwen (Gaenorの母)
Mark Lewis Jones .... Crad Rees (Gaenorの兄・炭鉱夫)
Bethan Ellis Owen .... Bronwen(Gaenorの妹)
Adam Jenkins .... Thomas (Gaenorの弟)
David Horovitch .... Isaac(Solomonの父)
Maureen Lipman .... Rezl (Solomonの母)
Steffan Rhodri .... Noah Jones(牧師)
Emyr Wyn .... Reverend Roberts(牧師)

Gaenorの父を演じたWilliam Thomasは『ツイン・タウン』Twin Town (1997)のカートライト氏

Maureen Lipmanは『リタと大学教授』 Educating Rita (1983) では"マーラーがなかったら死んじゃう"と語る、リタのフラットメイトのトリッシュ役。Lipmanは自身ユダヤ人だが、"自分はよくこのようなユダヤ人の母親役を与えられることが多い"とコメントしている。

参考資料とソフト

Official Sites
www.s4c.co.uk/solomonagaenor/
www.spe.sony.com/classics/solomonandgaenor/

www.jewishfilm.com

US盤DVD(リージョン1):仕様:英語字幕あり
Amazon.com

VHS
Amazon.co.jp/Amazon.com

 


Poldark (1996) (TV)

監督:Richard Laxton
原作:Winston Graham (Poldarkシリーズの小説"The Stranger from the Sea")

Storyと見どころ

1810年、イングランド南西部コーンウォール半島の資産家Poldark一家。 家長のRossは国会議員としてロンドンにおり、夫の留守を気丈に守る妻のDemelzaと、長男Jeremy(=ヨアン)、娘のClowanceは、一家が経営する鉱山の管理などをしている。 ある日、ジェレミーは難破船から流れ着いたスティーブンという男を助け、家に連れ帰る。 しだいにスティーブンとの距離が近くなってゆくClowanceだったが、ロンドンの舞踏会で会った貴族のLord Edward Fitzmauriceとも親しくなる。 ジェレミーは近在の令嬢Cubyに惹かれ、父Rossのライバルである議員George Warlegganは未亡人レディ・ハリエットに恋をする。 対仏戦争や摂政皇太子(のちのジョージ四世)なども登場するという、いささか盛り込みすぎのきらいもあるのは、これがもともと70年代に大ヒットしたBBCの大人気TVシリーズのリメイクだから。 原作や元々のテレビシリーズの熱心なファンには、"物語をはしょりすぎ"と辛口の批評が多いようだ。

コーンウォール独特の変化に富む風景の美しさ、そしてコスチューム・プレイとしてリージェンシー時代の衣装も素敵。 女性が身に着けているのは、ジェーン・オースティンのドラマによく登場するような、ハイウェストのドレス。同じくオースティン作品にでてくるようなダンスの場面も。

目玉はやはりヨアンの出番が比較的多いこと。 そしてブレイク前のHans Matheson(『スティル・クレイジー』 Still Crazy (1998) 『チューブ・テイルズ』 Tube Tales (1999)『逃亡者2001』 Bodywork (1999) )も友人役で登場。

キャスト

John Bowe .... Ross Poldark (父・国会議員)
Mel Martin .... Demelza(母)
Ioan Gruffudd .... Jeremy Poldark (長男)
Kelly Reilly .... Clowance Poldark (長女)

Nicholas Gleaves .... Stephen Cravenson (難破船から流れ着いた男)
Michael Attwell .... George Warleggan (国会議員)
Sarah Carpenter .... Lady Harriet(Warlegganが思いを寄せる未亡人)
Hans Matheson .... Ben Carter (Jeremyの友人)
Amanda Ryan .... Cuby Trevanion(ジェレミーが惹かれる令嬢)
Nicholas Rowe .... Lord Edward Fitzmaurice(Clowanceと親しくなる青年貴族)
James Saxon .... 摂政皇太子(のちのジョージ四世)

 

参考資料とソフト

http://us.imdb.com/Title?0117353

US盤DVD(リージョン1):仕様:英語字幕無し
Amazon.co.jp/Amazon.com

輸入VHS
Amazon.co.jp/Amazon.com

(1996年 イギリス 105分)


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