タイトル*さ
監督:Gavin Millar
脚本:Bryan Elsley
原作:イアン・バンクス 『共鳴』 (_Complicity_ by Iain Banks)
このところ仕事に行き詰まりを感じていた新聞記者キャメロン・コリー。ある匿名の情報提供者から継続的にかかってくる電話から、どこかでなにかとてつもない陰謀が巡らされているのではないかと感じた彼は独自に取材を進めていた。前大臣、通産省の役人、軍医・・・情報屋に告げられた名前はことごとく不審な死を遂げていたのだ。
ところが記事にしたり取材していた人間が次々に残虐に殺されだしたことから、コリーは警察から連続殺人犯の疑いをかけられる。さらには悪名高い武器商人が虐殺されていた現場に出くわしてしまい、親友アンディは焼死体で発見される。
自分の行動を把握している身近な人間にハメられたのではないか。幼なじみのアンディ&クレア兄妹、不倫関係にあるイヴォンヌとその夫ウィリアム。彼らとの関係を回想するうちに、意外な真犯人の姿が浮かび上がってきたのだが・・・全英ベストセラーの映画化。スコットランドを舞台にしたサスペンス。原題の"Complicity"は"共謀"という意味。
コリーが勤めているエディンバラの新聞社"カレドニアン"。この紙名はいかにもスコットランド的。"Caledonia"という言葉は、スコットランドの古名。(ちなみにイングランドの古名は"Albion")
アンディの開業祝パーティーに集まった客がキルトを着用して踊っていたり、葬式の場面でバグパイプの演奏があったりする。
主人公がフランクとともに取材に行った伝統あるウィスキー蒸留所は、おりしも社長の意向で日本人に売却されるところだった。この蒸留所は実際にスコットランド最古のウィスキー蒸留所といわれるGlenturret Distilleryで撮影された。
Glenturret Distillery(WebSite)
Crieff, Perthshire PH7 4HA
アンディの別荘があるという設定のStromeferryは、ハイランド地方にある。 Stromeferry, Highland |
Stromferry |
- Stromferry no ferryについて・1
- 映画の中に出てきた"Stromferry no ferry"という台詞の通り、ストロームフェリーという名前はついていても、ここからフェリーは出ていないそうです。その先にたいへん小さなフェリー乗り場はありますが(大きな真四角の板にエンジンがついてるだけ、といったフェリーで、乗っている時間はわずか5,6分)、向こうからこちらに来る車がないかぎり、いつまでもいつまでも待っていなければならないという変なフェリーでした。(情報提供:pokichiさん)
- Stromferry no ferryについて・2
- 実際にStromeferryに行くと、道路に「Stromeferry(no ferry)」という看板が立っていた。 フェリーがあると人が勘違いしないための看板だろうけれど・・・(Cheeky)
Edinburgh, Forth bridge ・・・オープニング・クレジット Inverkeithing St Serfs Church, Dunning・・・オープニング・クレジット Inchmickery・・・ラストシーン Glenturret Distillery, Nr Crieff・・・取材に来たウィスキー蒸留所。 Glen Coe Rannoch Moor・・・車が故障してしまう場面 |
Rannoch Moor |
Jonny Lee Miller .... Cameron Colley
Paul Higgins .... Andy(Cameronの幼なじみ・元軍人)
Rachael Stirling .... Clare(Andyの妹)
Keeley Hawes .... Yvonne(Cameronの幼なじみで彼と不倫中)
Jason Hetherington .... William(Yvonneの夫・青年実業家)Brian Cox .... Inspector McDunn
Samuel West .... Neil(情報局顧問・Cameronの友人)
Paul Young .... Frank(Cameronの同僚・一緒にウィスキーを取材)
Valerie Edmond .... ジョシー(の上司・元恋人?)
Bill Paterson .... ウィスキー蒸留所オーナー
Alex Norton
(2000年 イギリス 99分)
原作:
『共鳴』 イアン・バンクス著
Amazon.UK
_Complicity_ by Iain Banks
_Complicity_ by Iain Banks
監督・脚本:Julian Simpson
失業中のミュージシャンJ(ジャスパー)は、ワインバーで知り合った謎めいた美女サラを自分の部屋に誘うが、気がつくと彼女はベッドで殺されていた。 警察はJを容疑者として追うが、この事件の裏には秘密組織が動いており、とてつもない陰謀が張り巡らされていたのだった。 秘密を知った人間が次々に消され、すべてはJに容疑がかけられていくのだが・・・ロンドンのイーストエンドを舞台にしたクライム・サスペンス。
Jが誘い込まれたピープ・ショウ(のぞき小屋)や、ミニ・キャブ屋があるあたりの場末の雰囲気が、"いかにも"というかんじ。
Jの部屋にやってきたサラの住まいはハムステッドにあるという。ハムステッドはロンドンでも有数の高級住宅街なので、Jはサラには夫か彼氏がいるのではないかと勘ぐる。
イーストエンドを中心にロンドン各地で撮影
Camden
Hackney
Islington
Southwalk
Tower Hamlets
WestminsterWaterlow Park, London N6
・・・JがHumeと話していた公園。Highgateにある
Steven Mackintosh .... Jasper Rawlins (失業中のミュージシャン)
Natasha Little .... Sarah Maitland (謎の女性)
Yvan Attal .... Mason(殺し屋)
Bernard Hill .... Detective-Inspector Walker(事件の担当警部補)
Eddie Izzard .... Peter Hume (鑑識医)
Holly Aird .... Detective-Sgt. Rebecca White (女性巡査部長)
Andrew Tiernan .... Harris (若手刑事)
Georgia Mackenzie .... Maggie (若手女性刑事)Jana Carpenter .... Grace (エキセントリックなアメリカ人女性)
Justin Shevlin .... The Barker
Barry Stearn .... Noble ("シャクルトン")
Norman Lovett .... Clive
Abigail Blackmore .... 赤い髪のバーメイド
Matthew Blackmore .... Guy (バーテン)
Daniel Brocklebank .... Jonny (若い男娼)スティーブン・マッキントッシュ、バーナード・ヒル、エディ・イザード、アンドリュー・ティアナン、そしてフランスからイヴァン・アタルと、いずれ劣らぬ個性ある実力派俳優が勢ぞろいした豪華キャスト。(しかしその面子を今ひとつ活かし切れていないような・・・)
国内盤DVD
(2000年 イギリス 100分)
監督・脚本:Chris Jones
金髪で白い服を着た女性ばかりを狙う、通称"ホワイト・エンジェル事件"と呼ばれる連続殺人事件が巷を騒がせていた。目撃者の証言によるとホワイト・エンジェル事件の犯人は女性とのこと。 サイコホラー作家のエレン・カーターの夫が失踪した事件に疑問を抱いていた担当のテイラー警部は、ひそかにエレンの周囲を探る。
そんなエレンのもとに、下宿人募集(ハウスシェア)の広告を見て歯科医レスリーが部屋を借りたいとやってきた。 人当たりのいい中年男レスリーに同じく間借りしているエレンの友人ミックも好感を抱くが、やがて彼はエレンが数年前夫を殺していたという事実を探り出し、彼女を脅迫する。「僕の半生を書いてくれ」と。 そう、レスリーこそが噂の連続殺人犯だったのだが・・・最後にどんでん返しが待っている戦慄のサスペンス。
エレンはレスリーに毎日少しずつ毒を投与しようと、砂糖壺の中に砒素を混ぜておく。 イギリス人にとって毎日のティータイムはなくてはならないものなので、この方法なら確実に飲ませられる。 砂糖もたっぷり入れる人が多い。
ハウスシェアの広告を見てエレンの家を訪ねたレスリー。 車のトランクには、スーパーWaitroseのビニール袋が。 「ウェイトローズ」TescoやSafewayに比べると、比較的poshな高級感あふれるスーパー。 こんな小物使いや歯科医という職業で、レスリーの社会的身分が安定していることを表しているのかもしれない。
ロンドン
グロスターシャー
Harriet Robinson .... Ellen Carter (作家)
Peter Firth .... Leslie Steckler (歯科医)
Don Henderson .... Inspector Taylor (事件の担当刑事)
Anne-Catherine Arton .... Mik (エレンの下宿人)
Harry Miller .... Alan Smith (エレンに銃を渡す)
Caroline Staunton .... Angela Steckler (レスリーの妻)
(1993年 イギリス 96分)
監督・脚本:ジム・シェリダン
原作戯曲:John B. Keane
1930年代のアイルランド西部海岸地方。痩せた荒地を我が子のように慈しみ、長い年月をかけて肥沃な耕作地に変えてきた小作人のブル。この土地を愛するあまり、迷い込んできたロバを殺してしまうほど強い執着を抱いていたが、ある時地主の未亡人が土地を競売にかけると宣言。ブルの土地への執着を知っている村人たちは誰も手を出そうとしなかったが、ブルが仲間のバードと謀って安く競り落とそうとしたその瞬間、よそ者のアメリカ人がやってきて競売に参加。 その日の競りはお流れになったが、長年耕作してきた土地をたった一人の息子に継がせたいというブルの妄執は、やがて思いがけない悲劇を生むことに・・・
John B. Keaneによる舞台劇を、『マイ・レフト・フット』My Left Foot (1989), 『父の祈りを』In the Name of Father (1993)のジム・シェリダンが映画化。
アイルランドの切手にもなった |
特集: 『ザ・フィールド』のアイルランドコネマラ地方を訪ねて |
冒頭でブルと息子のタイグが海岸で海草を山ほど集め、担いで岩山を登っていく場面があるが、アイルランドでは海草を使って岩だらけの荒地を耕作地にすることがよく行われているらしい。(参考:「街道をゆく・アイルランド編」NHK放映) 大きな岩を砕き、その上に海草を敷き詰めて長い年月をかけて、土を作り出していくのだとか。
19世紀末のアイルランドではジャガイモの立枯れ病による大飢饉がおこり、3年で当時のアイルランドの人口が激減したという。この頃食えなくなった農民たちはアメリカやイギリスに次々と移民していった。詳しくは後述。
村人たちがたむろするパブにやってきた未亡人は、自分の土地を競売にかける手続きをパブの主人に依頼。 ただ酒食を提供する場としてだけではなく、村人たちのコミュニティセンターとしての役割も果たしていることがわかる。
イギリス人に対して
・・・パブで「よそ者が土地を買いに来るかもな」と言われたブルは、英国人入植者のことを念頭においてこのように激昂する:「飢饉の頃我々から穀物を奪った奴らか? やつらのせいで大勢が世界中に離散させられたんだ」未亡人に対して
・・・この未亡人も土地を売ったらその金で故郷に帰ると言っていることから、元来この村の者ではないことがわかる。流れ者に対して
・・・馬車で村の広場に集まってきた流れ者たちの集団に、「土地に執着しない女を信用しちゃいかん」とブルは不快感を隠さない。詳しくは後述。神父に対して
・・・新任のドラン神父もこの村のものではない。バードいわく「この国を裏切ったのは神父どもだ」。ブルいわく「飢饉の時も神の家は人々を拒絶した。飢えで死んだ神父はいないからな。」アメリカ人に対して
・・・「一度自分の国を捨てたくせに!」大飢饉のときに国を捨ててアメリカに移民していった者の子孫として、ヤンキーと呼び蔑んでいる。詳しくは後述。
ブルの村には、ちょうどティンカーと呼ばれる流れ者たちが一時的に滞在していた。 馬車に乗って村から村へと移動する彼らは、社会のはみ出し者的存在で、村人に施しを乞うたりもしている。ティンカーたちに対する不快感を隠そうともしない父親の思惑をよそに、息子のタイグは美しく奔放なティンカーの娘が気になって仕方がない。彼らのような土地に執着を持たない非定住民の価値観は、ブルとは相反するもの。「土地に執着しない女を信用しちゃいかん」と釘を刺す場面も。
『白馬の伝説』Into the West (1993) の主人公一家も流れ者(トラベラーズ)。
ブルが妻子を連れて亡くなった息子シェイミーの墓参りに来たとき、墓石を一つ一つ眺めているアメリカ人を発見。一緒に来ていたバードが「ルーツを探してるんだな」と言うが、移民したアイルランド系アメリカ人が自分のルーツを探しに帰ってくることは珍しくなかった。のちに教会の過去帳を紐解いて自分の先祖の名前を調べる場面も出てくる。神父はジャガイモ飢饉の時には3年で150万人もの人が飢え死にしたので、もしかしたら記録に残っていないかもしれないとアドバイスするが。
19世紀末のジャガイモの凶作に端を発した大飢饉で約200万人ものアイルランド人がアメリカやイギリスに移住した。彼らはカトリックで産児制限を良しとしなかったので、現在アメリカには約4,000万人ものアイルランド系移民の子孫がいる。ちなみにアイルランド共和国の総人口は約350万人。
飢饉以降も貧しいアイルランドの人々は、アメリカやイギリスへ移住していく道を選んだ。 跡継ぎとなる長男以外は土地を相続できないことが多かったので、その弟や妹は新天地を求めて外国に移住するしかなかった。 ブルの村でもアメリカ・イギリスに移民する人々を励ます壮行会が催され、フィドルなどを用いた伝統的なアイルランド音楽に合わせて、アイリッシュ・ダンスを踊って楽しむ夕べが催された。
参考:
『恋はワンダフル!?』The MatchMaker (1997) は、アイルランド系有権者の票を集めることを狙った大統領候補が、自分のルーツを探させようと秘書をアイルランドに派遣する物語。
『静かなる男』The Quiet Man (1952) はアイルランド系アメリカ人のボクサーが、自分のルーツのある村にやってくる物語。
土地を買い取る資金作りのために、ブルは近くの島民に泥炭(ピート)を燃料として売ることを思いつく。 この映画の舞台となったコネマラ地方は、実際に泥炭の一大産地で、そこかしこに泥炭を切り出して乾燥させているところが見られる。
泥炭を買いに来た島民たちがしゃべっている言葉はアイルランド語だったが、息子のタイグには理解できない。「学校で習っただろう」というブル。アイルランドでは長年のイギリスによる支配により、アイルランド語を話すことを禁じられていたため、英語しか話せない住民も多かった。 アイルランドが独立国としてのアイデンティティを固めようとし始めたこの時代、失われた母国語を取り戻そうと学校でアイルランド語の授業が復活した。 『アンジェラの灰』 Angela's Ashes (1999) でもアイルランドの言葉を学校で教える場面が。
カトリック信者であるアイルランド人にとって、教会は生活の中心。それだけに、ブルの犯した罪について口をつぐむ村人たちに対して、ドラン神父が「正義が行われるまで教会を閉ざし、懺悔も行わない」と宣言した意味は非常に重い。
また、自殺したものに対しては教会葬を行ってはいけないという掟があるため、自殺者の亡骸は墓地の外に葬らなければならず、神父(または牧師)による葬儀もしてもらえない。シェイミーの墓が墓地からぽつんと外れた海べりに立っていたのも、この理由による。
参考:_On Location_ by Brian
Pendreigh |
Gaynor's Pub, Leenane |
米アカデミー賞、主演男優賞ノミネート(リチャード・ハリス)
Richard Harris .... 'Bull' McCabe
Sean Bean .... Tadgh McCabe (ブルの息子)
Brenda Fricker .... Maggie McCabe (ブルの妻)John Hurt .... The 'Bird' O'Donnell (ブルの風変わりな仲間)
Frances Tomelty .... 未亡人(ブルの土地の持ち主)
Tom Berenger .... Peter(アメリカ人)Ruth McCabe .... ケイティ(流れ者の女性)
Jer O'Leary .... ケイティの父親John Cowley .... Flanagan (パブの主人)
Noel O'Donovan .... Tomas (パブの常連客)Sean McGinley .... Chris Doran(新任の神父)
Malachy McCourt .... 巡査Eamon Keane .... Dan Paddy Andy
Sara Jane Scaife .... McRoarty GirlPeadar Lamb .... Paddy Joe O'Reilly
開発にやってきたヤンキー(アメリカ人)は、『山猫は眠らない』のトム・ベレンジャー。
巡査役Malachy McCourtは『アンジェラの灰』のフランク・マコートの弟
(1990年 英=米 107分)
日本版ビデオ廃番
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