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タイトル*う


『ヴァーチャル・セクシュアリティ』 Virtual Sexuality (1999)

監督:Nick Hurran・・・『ガールズ・ナイト』
脚本:Nick Fisher
原作:Chloe Rayban (小説)

コピー:「イイ男がいない!?なら作っちゃえ!」

 

Story

恋に恋するお年頃の女子高生、17歳のジャスティンはヴァージンを捧げる相手を募集中。お目当ての色男アレックスとのデートをセッティングしてもらったけど見事空振り。仕方がないのでアレックスの友達、オタクのチャズと一緒にハイテク・フェアへ。

そんな彼女がふらふらと引き寄せられていったのは、自分の顔を思い通りのルックスに画像変換して楽しめる、ヴァーチャル・リアリティ・マシン「ナルシス」。鼻の形などをいじって遊んでいるうちに、ふと理想の男性の顔を描いてみたくなったジャスティン。出来上がりにうっとりしているところに、突然会場で大爆発が起き大混乱に。

逃げ出したジャスティンはいつのまにか自分がコンピューターで描いたハンサム・ガイの姿になっていることに気付いてびっくり仰天。なんとかチャズに協力を求めてこのとんでもない状況を打破しようと奮闘するが・・・。キュートでポップなラブ・コメディ。

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オタクのチャズ

趣味はネットサーフィン、好きなアーティストはMorrissey・・・とくると、"いかにも"な内向的おたく少年。

*Morrisseyは1980年代にSmithsのヴォーカルとしてカリスマ的人気を誇ったアーティスト。"The Queen is Dead"や"Meat is murder(食肉は殺人だ)"など過激な歌詞のものから、"Heaven knows I'm miserable now"など内向的でコンプレックスを抱えたような歌などで、一世を風靡した。

チャズの両親は変わり者で、庭にはぶっとんだセンスの装飾品が置かれている。

「ゲイはサッカーを見ない」

ナヨナヨしたジェイクに"Do you support Arsenals ?"(サッカーチーム"アーセナル"のファン?)という質問をする。ゲイはサッカーを見ないものだと思っているので、アーセナルが好きと聞いて安心するのだ。ラグビーやクリケットが上流階級の好むスポーツであるのに対し、サッカーは労働者階級のもの。当然サッカーファンはマッチョ思想も強い傾向にあリ、ゲイを毛嫌いする人も多い。パブリックスクールで学友との同性愛的関係を経験したり、見聞きすることも多い上流階級は、そういうことに対して比較的寛容。

教習車はmini

ジャスティンが通っている教習所では、教習車としてローバーminiを使用している。

チップス

ジャスティンとフランがわら半紙に包んだチップス(ジャガイモのフライ)を食べている場面が。

 

ロケ地:ロンドン

アールズ・コート駅・・・ジャスティンがアレックスと待ち合わせした駅。
Earls Court Exhibition Building, SW5
The Electric Cinema(Notting Hill
近く)
Harrods
Tower Bridge
Shad Themes, SE1(Tower Bridge
近く)
Piccadily Circus, W1
Zealand Road, E2
All Saints Road

キャスト

Laura Fraser .... Justine
Rupert Penry-Jones .... Jake (Justineが作り上げた理想の男性)
Luke de Lacey .... Chas (Justineの幼なじみ・オタク)
Kieran O'Brien .... Alex (Justineの憧れ・女たらし)
Marcelle Duprey .... Fran (Justineの友人)
Laura Aikman .... Lucy (Justineの妹)
Natasha Bell .... Hoover (フェロモンむんむんの"男殺し")
Steve John Shepherd .... Jason
Laura MacAulay .... Monica ("ナルシス"開発者)

Rupert Penry-Jonesは1970年ロンドン生まれ。
『ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ』(ジャッキー姉妹の弟役)、『スティル・クレイジー』、タラ・フィッツジェラルド&ロブソン・グリーンと共演の『プリンスは大学生』などに出演。

Kieran O'Brien・・・『心理探偵フィッツ』でフィッツの息子役を。

外部リンク(ソフトと参考資料)

Offical WebSite

Video

(1999年 イギリス 92分)


『ウィズネイルと僕』Withnail and I(1986)

データはこちらに移動しました


『ヴィトゲンシュタイン』Wittgenstein(1993)

監督・脚本:デレク・ジャーマン
制作:Tariq Ali
脚本:Ken Butler / Terry Eagleton
オリジナル音楽:Jan Latham-Koenig
音楽:Maurice Ravel
撮影:James Welland
編集:Budge Tremlett
衣装デザイン:Sandy Powell

ケンブリッジを舞台に哲学者ヴィトゲンシュタイン、経済学者ケインズなどがからんで…普通こういう映画を作ると伝記的になってしまうものなのだが、緑色の火星人との対話を通してこの哲学者の思想そのものも織り込んだ興味深い作りになっている。

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ルードヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン

Ludwig Josef Johann Wittgenstein(1889-1951)

1889 4月26日、オーストリア・ウィーンの裕福な実業家の家に生まれる。8人兄弟の末っ子で、14歳まで家庭で教育を受ける。 (両親には音楽の素養があり、家庭はいつも音楽に囲まれていたと映画でも語られている。)
1908 イギリスに渡りマンチェスター大学に入り、航空工学を研究。のちに数学の基礎研究に転向
1911 バートランド・ラッセルの著作に感銘を受け、ケンブリッジ大学に移りラッセルの下で学ぶ
1912 ケンブリッジの使徒会員となる。これはケインズの強い推薦があって可能となった。
  ケンブリッジを離れ、ノルウェーへ
1914 第一次世界大戦が勃発すると、オーストリア軍に従軍、1918年捕虜になり北イタリアの収容所に送られる。1919年釈放
1920 一時オーストリアに戻り小学校の教師を勤めるが1925年に挫折。庭師など様々な職を点々とする
1921 『論理哲学論考』出版
1929 ケンブリッジに戻りトリニティ・カレッジのフェローに。
1939 ケンブリッジで哲学教授となる。
第二次大戦が勃発すると、一時ロンドンのGuy's Hospitalで働く
1947 ケンブリッジを辞し、アイルランド西海岸に隠棲
1951 4月29日、ケンブリッジで亡くなる
1953 (死後)『哲学探究』出版

 

ブルームズベリー・グループ (Bloomsbury Group)

バートランド・ラッセル、ケインズ、レディ・オットリーン・モレルについて、詳しくはこちらにまとめました

>>ブルームズベリー・グループ (Bloomsbury Group)

その他

レディ・オットリーンが読み上げたヴィトゲンシュタインを批判する詩というのは、ヴァネッサ・ベルの息子で使徒会員でもあったジュリアン・ベルによるもの。

「ケンブリッジの優等生の中にはスパイになったものもいる」という台詞があるが、これはケンブリッジの卒業生で使徒会員でもあったガイ・バージェスらによる、ダブルスパイ事件のことを指す。

 

キャスト

Karl Johnson .... Ludwig Wittgenstein (大人のヴィトゲンシュタイン)
Michael Gough .... Bertrand Russell (哲学者)
Tilda Swinton .... Lady Ottoline Morrell (ラッセルの愛人・ブルームズベリーグループの擁護者)
John Quentin .... Maynard Keynes (経済学者)

Clancy Chassay .... 子供時代のWittgenstein
Jill Balcon .... Leopoldine Wittgenstein (母)
Sally Dexter .... Hermine Wittgenstein (一番上の姉)
Gina Marsh .... Gretyl Wittgenstein
Vanya Del Borgo .... Helene Wittgenstein
Ben Scantlebury .... Hans Wittgenstein
Howard Sooley .... Kurt Wittgenstein
David Radzinowicz .... Rudolf Wittgenstein
Jan Latham-Koenig .... Paul Wittgenstein (ピアニスト・戦争で片腕をなくす)

Nabil Shaban .... MrGreen(火星人)
Kevin Collins .... Johnny(ケンブリッジの学生・Ludwigの恋人に)
Lynn Seymour .... Lydia Lopokova(ロシア人バレリーナ・ケインズの妻に)

Jil Balconはダニエル・デイ・ルイスの母。

外部リンク(ソフトと参考資料)

imdb.com/Title?0108583

St Andrews Universiy

Wittgenstein by Brian W. Carver
http://home.earthlink.net/~bwcarver/ludwig/index.html

The Wittgenstein Archives (the University of Bergen)
http://www.hit.uib.no/wab/

国内盤DVD

(1993年 英=日 73分)


『ウィンター・ゲスト』 The Winter Guest(1997)

俳優Alan Rickmanの監督デビュー作

Story

スコットランドの小さな海辺の町を舞台に、それぞれの孤独を抱える母と娘の関係を中心に、4組の人々の微妙な心のひだと、それぞれに交錯する冬の一日を巧みに切り取った人間ドラマ。

FrancesとElspeth
最愛の夫に先立たれた写真家フランシスは、夫のポートレートに囲まれながら失意の日々を送るなか、オーストラリアへの移住を考えていた。彼女を心配し何かと世話を焼きたがる母エルスペスの訪問にも心が晴れず、つい口論してしまう母娘関係の複雑な愛憎模様。やがてふたりは海岸に出かけ互いの想いをぶつけ合う・・・

AlexとNita
Francesの息子Alexに密かに想いを寄せていた少女Nitaは雪玉をぶつけて彼の注意を引こうとする。初めは反発しながらもAlexは彼女を家に呼び・・・思春期の初めての性へのおののきと胸の高鳴りの描写が瑞々しい。

LilyとChloe
よろよろとFrancesのもとへ向かうElspethを見てもうすぐ死にそうだとささやくふたりの老婦人。新聞のおくやみ欄をチェックしては連れ立って葬式に出かけるのが趣味。老いについて、死についての考えが頭をかすめる・・・

SamとTom
学校をさぼって浜辺で戯れるふたりの少年。洞窟を覗いたり、お腹が空いたらMars Bar(チョコレート・バー)を半分こしたり。海岸に腰を下ろして少年と談笑するElspethにファインダーを向けるFrances。

Check

一面に雪が降り積もった街並み、凍った海面、白いベッド、壁、カーテン、窓・・・「白」が効果的に使われた画面が印象的。

Francesのバスルーム:床は板張りで、給湯方式は混合水栓ではない(熱湯と冷水が別々の蛇口から出てくる)イギリス的バスルーム。

LilyとChloeのお茶の風景:お葬式の時間を待つ間、ティールームでケーキを食べながらおしゃべりをして過ごす。近くのテーブルに運ばれてきた3段がさねのアフタヌーン・ティー・セットのケーキに目を奪われ、ミルフィーユを新たに注文して半分ずつ食べる。ずいぶん大きなサイズのミルフィーユなので、ふたりで分けても充分な大きさ。

ロケ地:スコットランド

Pittenweem (町の場面)
Elie (海岸の場面)

参考:Scotland the Movie

キャスト

Emma Thompson .... Frances
Phyllida Law .... Elspeth
Gary Hollywood .... Alex
Arlene Cockburn .... Nita
Sheila Reid .... Lily
Sandra Voe .... Chloe
Douglas Murphy .... Sam
Sean Biggerstaff .... Tom

Emma Thompson(Frances)とPhyllida Law(Elspeth)の実の親子ならではの息の合った演技が、この作品に深みを与えている。よく見ると顔の骨格がそっくり。

Nita役のArlene Cockburnは、『アシッド・ハウス』 The Acid House (1998)のユエン・ブレナーの恋人役、ピーター・ミュラン主演『仮面令嬢』のメイド役なども。

Tom役のSean Biggerstaffは、ハリーポッターシリーズでクィディッチのキャプテン、オリバー・ウッド少年役で出演。

Alex役のGary Hollywoodは、『刑事タガート』のエピソード「ジンジャーブレッド」に、父親が殺害されるのを目撃したSimonという少年役で出演。(情報提供:myukさん)

外部リンク(ソフトと参考資料)

DVD

(1997年 イギリス 110分)


『ウェルカム・トゥ・サラエボ』Welcome To Sarajevo(1997)

監督:マイケル・ウィンターボトム
原作:Michael Nicholson「Natasha's Story」

Story

イギリス人ジャーナリストマイケルは、ボスニア戦争初期のサラエボで取材活動をしていた。毎日のように繰り返される一般市民を巻き込んだ惨劇。取材を続けるうちにマイケルは前線に取り残された孤児院が危険にさらされていることを知り、取材を通して彼らの救出を訴え続けた。彼の努力の成果か、アメリカ人救助隊員ニーナの協力の下に孤児たちを国外に脱出させられることになった。ところが孤児のひとりEmiraは、赤子や幼児と違って引受人がいないと国外に連れ出せない年齢になっていた。マイケルはEmiraを妻子の住むロンドンに連れ帰ろうと決心するが・・・
痛々しいほどにリアルな、それでいてセンチメンタリズムに陥らずに描かれたボスニア戦争の一面。実話に基づいた作品。

 

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気になる台詞:「ビートルズはイングランドのものじゃない。」

アメリカ人ジャーナリストフリンが英国人のマイケルにこういう。
「英国が生み出したい良い物はたった2つだ。ひとつはアメリカ、もうひとつはビートルズだ。」
するとマイケルは「ビートルズはイングランドのものじゃない。あいつらはリバプール出身だから。」
(The Beatles aren't English. They're from Liverpool.)
リバプールはアイルランド移民が多く住むことで有名な街(住民の3〜4割はアイルランド系)。リンゴ・スター以外のビートルズの面々もアイルランド系だとか。

主人公のマイケルもアイルランド系のようだ。 ホテルのパブでアメリカ人たちに、アイルランド人だからといってアイリッシュ・ウィスキーの"ブッシュミル"を勧められる。

Bushmills Wiskey: 1608年創業。北アイルランド、ジャイアンツ・コーズウェイ近くにある工場は、世界最古のウィスキー工場として有名。

マイケルの仲間

マイケルのサラエボでの取材活動は、イギリスのテレビ局ITVの仕事。女性プロデューサーのJane Carsonの指示のもとに、カメラマンのGreggを連れて取材に行く。運転手には現地人のRistoを雇った。

リストの仲間たち

運転手採用の面接に赴くRistoに、仲間がパリのマークス&スペンサーで買ったジャケットを貸してくれる。 ホテルでフリンに生卵をもらったRistoは大事に持って帰り、仲間たちと卵焼きを作って食べる。

サラエボとロンドン

内戦で荒廃したサラエボとは対照的に、マイケルの妻子の待つロンドン郊外の家は、静かで緑に囲まれたところ。 庭では子供達がクリケットに興じている。

音楽

サウンドトラックも話題に。UK Musicが存分に楽しめる。
参加アーティスト:BlurThe Stone RosesHouse Of LoveHappy MondaysTeenage FanclubMassive Attack他。
曲目など詳しくはこちら→Soundtrack

ロケ地

London
Sarajevo, Bosnia-Herzegovina
Skopje, Bitola, Macedonia
Trogir, Croatia

キャスト

Stephen Dillane .... Michael Henderson
Kerry Fox .... Jane Carson(ITVプロデューサー)
James Nesbitt .... Gregg (カメラマン)
Goran Visnjic .... Risto (ドライバー)
Woody Harrelson .... Flynn(アメリカ人ジャーナリスト)
Marisa Tomei .... Nina(アメリカ人救助隊員)
Gordana Gadzic .... Mrs Savic(孤児院の院長)
Emira Nusevic .... Emira(孤児)
Vesna Orel .... Munira(Emiraの母)
Emily Lloyd .... Annie McGee
Igor Dzambazov .... Jacket
Juliet Aubrey .... Helen Henderson(マイケルの妻)
Drazen Sivak .... Zeljko (ホリディ・イン・ホテル従業員)
Davor Janjic .... Dragan

外部リンク(ソフトと参考資料)

国内盤DVD

輸入版VHS(字幕なし)

Soundtrack(東芝EMI)
Paperback

原作:『ウェルカム・トゥ・サラエボ』マイケル・ニコルソン著/小林令子・訳/青山出版社

(1997年 英=米 98分)


『ウェールズの山』 The Englishman Who Went Up a Hill But Came Down a Mountain (1995)

監督・脚本:Christopher Monger

Story

第一次大戦末期の1917年、戦争で疲弊したウェールズの村にイングランドからふたりの地形調査員がやって来た。 "ウェールズで最初の山"Ffynnon Garwが、古来よりイングランド人の侵攻からウェールズを守ってくれた村人たちの誇り。 ところが測量の結果、標高1000フィート(=305m)に足りないFfynnon Garwは、「山」じゃなくて「丘」になってしまう! さあどうする??

 

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ウェールズという国

イングランド王エドワード一世(在位1272-1307)は、1282年にウェールズの王族を弑しイングランドに併合した。ウェールズ人を懐柔するために、息子のエドワード二世を「プリンス・オブ・ウェールズ」とし、以降イギリスの皇太子はカーナフォン城(Caernarfon Castle)で「プリンス・オブ・ウェールズ」の称号を与えられることになる。

冒頭、窓から顔を出したモーガンがしゃべっていたのがウェールズ語。現代ではだいぶ英語に押され気味だが、1913年にウェールズ語での教育が再開されたため、北部ウェールズを中心にウェールズ語を話す人々は少なくない。『ツイン・タウン』Twin Town (1997)Rhys Ifans (リス・イヴァンズ / リース・エヴァンズ)の第一言語もウェールズ語。

イングランドは1536年にウェールズでの公用語を英語と定め、伝統的なウェールズの氏姓制度を廃止して新たにイングランド式姓を押し付けたため、ウェールズ人の名字はバリエーションが少なくなった。この作品の冒頭で、「ウェールズ人の名字は、ウィリアムズ、ジョーンズ、エヴァンズのように数が限られているので」といっていたのは、ここに原因がある。

水神にもたとえられるドラゴンを国のシンボルとしているだけあって、ウェールズの気候は湿潤で水が豊か。 旗竿が「乾燥して折れた」と聞かされた時、「ウェールズで?」といぶかしんだのも、こういったイメージがあるため。

戦争か、炭坑か

この作品は第一次大戦中の話なので、若い男たちはみな兵士として戦争に行っているか、もしくは戦争に必要な物資補給のため炭坑で働いているかのどちらかなので、村には女子供と年寄りしか残っていない。若い男といえばジョニーやアンソンのような、シェルショック(戦争神経症)で兵士として使いものにならない者だけ。

ウェールズの産業としては昔から石炭採掘が有名で、アンソンたちも最初は石炭を探しに来たのかと聞かれた。英国のコメディ番組「モンティ・パイソン」でも、しばしばウェールズの炭坑を題材にしたスケッチ(コント)が作られた。 当時の炭坑は安全面での配慮が不十分で、作業中に命を落とすものも少なくなかった、苛酷な労働の代名詞でもあった。

シェルショック(Shell Shock, 戦争神経症)

「The Great War」と呼ばれた第一次世界大戦(1914-1918)は、一般市民をも巻き込んだ初めての戦争だったので、復員後も重い神経症に苦しむ者が多かった。フランス戦線でひどいシェルショックになったジョニーは、雷の閃光でパニック状態となり、ひきつけを起こしてしまう。兵士として適齢期のアンソンが戦争に行かずに測量技師をしているのも、1914年に派遣されたベルダンでシェルショックになってしまったせい。

シェルショックになったのは、主にフランスでの塹壕戦(百万人もの英国兵が犠牲になった)。 ジョニーもフランスで塹壕掘りをした経験を語っている。

参考:
『ライアンの娘』Ryan's Daughter(1970)
『ダロウェイ夫人』Mrs Dalloway (1997)

パブ

モーガンが経営するパブは村人たちの溜まり場だが、牧師だけは"悪の巣窟"と足を踏み入れない。モーガンが胴元となって、山の高さを予想する賭け大会まで開かれていた。

おそらく村で唯一のパブと思われるこの店は、宿屋も兼ねており、イングランドから来た二人の測量技師もここに逗留することとなる。 みなが飲んでいるのは、黒っぽい、ビターと呼ばれるビールの一種。モーガンがハンドポンプでサーブする。

日曜は安息日

映画『炎のランナー』Chariots of Fire(1981)でも日曜は競技に出場できないと困惑したように、敬虔なクリスチャンにとって日曜は「安息日」として労働が忌まれる日。 ここの鉄道も日曜は動かない。 現代のイギリスでは規制緩和で日曜営業する商店も増えてきたが、何年か前までは日曜となると買い物できる場所としてはマーケットか、(キリスト教徒でない)インド系移民経営の商店くらいしかなかった。 また公共の交通機関も、日曜にはぐっと本数が減り、ところによっては運休になる路線もある。

日曜日に村人たちが働くには、牧師のお墨付きが必要だったので、日頃牧師と犬猿の仲であるモーガンも村のためにと、頭を下げることになったのだ。

短い夏至の夜

アンソンとガラードが村にやってきたのは、6月18日。つまり夏至間近で一年のうち最も日が長い時期。緯度が高いイギリスでは、この時期に日が昇るのは午前5時頃、夜は10時くらいまで暗くならない。ゆえに村人たちが土運びに使える時間は、他の季節とは比べものにならないほど長く取ることができた。また、夜も非常に短かったので、夜明けを待つのもそう苦痛にはならなかった。

モデルになった山:Garth Mount(Garth Hill/Gwaelod-y-garth)

塚の上には測量が行われたことを示す標識もあります。公共交通機関ではカーディフから列車でTaff's Wellが最寄り駅になります。西の斜面から登るのが楽でしょう。(情報提供:Roaneさん)
吉賀先生のサイトYoshiga's Homepageに詳しい登頂記等が掲載されていると教えていただきました。

その他

パブの主人、赤毛のモーガンは「Morgan the Goat(好色モーガン)」と呼ばれているが、「Goat(ヤギ)」は繁殖力が旺盛なため、好色というイメージがある。

ウェールズの国民的スポーツといえば、ラグビー。土止めに芝生が必要になった時、近くにあったラグビー上の芝生が流用された。

 

ロケ地

Mynydd-y-Gym・・・Ffynnon Garw山として。北ウェールズPowysのLlanrhaeadr-ym-Mochnantにある。

Hampton Loade village・・・セヴァーン渓谷にある村。

キャスト

Hugh Grant .... Reginald Anson(イングランドから来た測量技師)
Ian McNeice .... George Garrad(イングランドから来た測量技師)

Colm Meaney .... Morgan the Goat (パブの主人)
Tara Fitzgerald .... Betty (カーディフ在住のメイド)
Kenneth Griffith .... Rev. Robert Jones(牧師)
Ian Hart .... Johnny Shellshocked (戦争神経症の青年)
Lisa Palfrey .... Blod Jones(ジョニーの姉)

Tudor Vaughan .... Thomas Twp ("アホのトーマス"双子)
Hugh Vaughan .... Thomas Twp Too ("アホのトーマス"双子)
Robert Pugh .... Williams the Petroleum(自動車整備工)
Robert Blythe .... Ivor the Grocer
Garfield Morgan .... Davies the School (教師)
Dafydd Wyn Roberts .... Tommy Twostrokes(バイク乗り)
Howell Evans .... Thomas the Trains(駅員)

外部リンク(ソフトと参考資料)

DVD

(1995年 イギリス 99分)


『浮気なシナリオ』 A Chorus of Disapproval(1990)

監督:Michael Winner
原作:Alan Ayckbourn(戯曲)
脚本:Michael Winner

Story

イングランド北部ののどかな港町スカーボロに転勤してきた男やもめのガイ。見知らぬ町での淋しさを紛らわすために、地元のアマチュア劇団の『三文オペラ(The Beggar's Opera)』に参加することに。劇団を取り仕切るウェールズ男ダフィドは、やたらと怒鳴りちらす短気な男で、周囲との摩擦も絶えない。

そんななかでガイの勤務する会社が工場を拡張するとの噂をめぐって、隣接する土地の売り手ジャービスと買い手イアン、弁護士ダフィドが三者三様の思惑を巡らす。ダフィドの妻や色っぽい人妻フェイの誘惑に翻弄されているうちに、気がつくといつのまにかガイは主役に抜擢されていた・・・?

個性的な登場人物が入り乱れて展開するコメディ。
イギリス演劇界を代表する戯曲家のひとりエイクボーンの作品を映画化。

 

Check!

ガイはリーズ出身。一人暮らしなので、ゲストハウス"Duke of York"の海の見える部屋に居を構える。

ウェールズへのこだわり

ダフィドは、オーディションに現れたガイにしきりと「ウェールズ人だろう?」と聞くが、ガイがウェールズ語で歌えないことを知ると失望する。
ダフィドの家には暖炉の上にウェールズの国旗が掲げてあるし、ふたりの娘の名前もウェールズ風。妻のハンナはミドルセックス出身なので、少々疎外感を味わっている。(ダフィド役を演じるアンソニー・ホプキンスもウェールズ出身である)

ダフィドは演劇好きらしく、壁には「王様と私」や「アニー」などのミュージカルのポスターでいっぱい。

スコットランド人か?

パブで片手に預かっていたダフィドのビールを、もう片手に自分のジン・トニックを持っていたガイは、「スコットランド人か?」とからかわれる。"グラスを両手に持って交互に飲むのはスコットランド人だけだ"と、酒好きといわれるスコットランド人を揶揄している。

「シャンティー一杯で3時間も粘って!」

パブ経営者の娘ブリジットは、気に食わないリンダにこんな言葉を投げつける。(*字幕ではレモネードと訳されてるが)
シャンティーは、ビールをレモネードで割った口当たりの良いアルコール飲料。

お手製ジャムをどうぞ

イアン&フェイ夫妻の家に招かれたガイは女友達を連れてくるように念を押されていたが、現れたのはイアンの期待と180度違う老婆のヒルダ。気の良い彼女はお土産に、お手製のジンジャー(しょうが)&ルバーブのジャムを携えていた。ジンジャー・ジャムはイギリスで人気がある。

修羅場のティールーム

ガイといい仲になっているハンナが、ティールームで綺麗に盛りつけられたケーキの皿を挟んで密会しているところに、妖艶な人妻フェイが登場。ガイを挟んで女ふたりが火花を散らす。

ロケ地

Scarborough, North Yorkshire, England

キャスト

Jeremy Irons .... Guy Jones
Anthony Hopkins .... Dafydd Ap Llewellyn(事務弁護士/劇団の主催者)
Prunella Scales .... Hannah Ap Llewellyn(Dafyddの妻/ガイと・・・?)

Richard Briers .... Ted Washbrook()
Barbara Ferris .... Enid Washbrook(Tedの妻)
Patsy Kensit .... Linda Washbrook(Tedの娘)
Gareth Hunt .... Ian Hubbard(不動産屋経営)
Jenny Seagrove .... Fay Hubbard (Ianの妻/ガイと・・・?)
Lionel Jeffries .... Jarvis Huntley-Pike(市会議員)
Sylvia Syms .... Rebecca Huntley-Pike(Jarvisの妻)

Alexandra Pigg .... Bridget Baines (パブの主人の娘/舞台監督)

Pete Lee-Wilson .... Crispin Usher (Lindaの恋人だったがBridgetと・・・?)
David King .... Mr Ames(Dafyddの助手)
Audrey Trotter .... Mrs Bawden(ガイの大家)

Anne Priestley .... Hilda Shaw (ガイの友人の老婆)

外部リンク(ソフトと参考資料)

原作本
Alan Ayckbourn : Plays : A Chorus of Disapproval,
a Small Family Business, Henceforward...,
Man of the Moment (Contemporary Classics)

(1990年 米=英 99分)


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